あの夜をもう一度~不器用なイケメンの重すぎる拗らせ愛~

sae

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本編

8話・墓穴(燈子)

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 お昼休み、更衣室横の休憩室でお弁当を開けだしたら声をかけられた。

「一緒していいですか?」
「あ、どうぞ」
 同じ開発部の菱田さんだ。テーブルに広げたクロスを少し整えて彼女の場所も確保すると頭を下げてきた。


「ごめんなさい、なんか今日混んでますね」
 いつもはテーブルが空いてるくらいなのに今日は事業部の女性陣がテーブルを占領しているのか。

「いいえ、どうぞ」
 ありがとうございます~とフワリと笑う顔がとても可愛らしい。

 私よりもずっと若い彼女はいつも身なりも整って爪先までキレイだ。メイクも丁寧で唇が毎日ツヤツヤしている。それだけで女性感が強いのに、制服を着ていてもわかる豊満な胸。同性なのにいつも視線が行ってしまう。


(同じ抱くならこんな女の子がいいよね……)


 僻みでもなく純粋に思う。私は本当に普通の面白みもない人間なのだ。心も身体も、なんなら普通以下。男の人を悦ばせる術なんかひとつも持っていない。


「いただきまーす」
 広げた菱田さんのお弁当はカラフルでとても美味しそうだった。

「……美味しそう」
 思わずつぶやくと「今日はたまたま色味がいいだけでいつもはもっと茶色いですよ」そう笑った。

「でも茶色いお弁当って美味しいですよね」
「ですよねぇ!わかります」
 しょっちゅう話すわけではないけれど会えば軽く会話くらいはする関係。菱田さんは愛想もよくて人付き合いもとてもうまそうなのに距離をあまり詰めてこないから付き合いやすかった。


「そういえば、こないだ大丈夫でした?」
「こないだ?」
「飲み会、私ちょうど席を立ってたんですけど、戻ってきたら美山さん、杉野さんにお酒あおられてたでしょ?」
「あぁ……なんかうまく断れなくて」
「でも良かった、高宮さん助けてくれて、ね?」
 見られていた。

「迷惑を……かけてしまいました」
 思い出して項垂れた。その姿に菱田さんが首を傾げた。

「迷惑?」
「……その、私のせいで、高宮さんに」
「いやぁ、迷惑をかけたのは杉野さんであって悪いのは美山さんじゃないでしょ。今どきあんなのありえませんしパワハラとセクハラですよ。無意識なのが一番罪」


(意外……可愛い顔して案外辛辣にハッキリ言うんだな)


「高宮さんも迷惑なんて思ってないと思いますよ」


(迷惑をかけたのはそれだけじゃないんだ……)


 心の中でそうつぶやく。


「申し訳ないことを、しました」
 そうぼやくと菱田さんはキョトンとした顔をして聞いてくる。


「高宮さんとお付き合いあるんですか?」
「おっーー!ありません!全然、そんな関わることなんかありません!私はなにもっ――」
「……」
 菱田さんは私の言葉に何も言わずにニコリと微笑んでまたお弁当を食べ始めた。


(なんか、誤解を招くような言い方をしてしまったかもしれない。しかも無駄に必死に……)


 微妙な空気になって二人でお弁当を黙ってつつき合っていた。



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