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第4話_ヤマト国王家への拝謁-4

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イツキ王子は、ハヅキ国王をそのまま少年に若返らせたようにうりふたつで、父と同じ灰茶色の髪をショートボブに切り揃えていた。

王族が宮中で纏う、ゆったりとした準正装に身を包み、小柄な体躯ながら背筋を伸ばす綺麗な立ち姿は、未来の国を背負う立派な少年王然としていた。
しかしながら、困り眉の下のつぶらな黒茶の瞳から参じた面々を上目遣いに見上げる表情や振る舞いには、やや内向的で未熟な部分が表れているようだった。

ソウヤは興味深げに王子殿下を観察していたが、ふとその胸元に視線を奪われる。
白と緑を基調とする着衣の中心で、赤黒くほのかに発光する鉱物のような塊。
小さな体に不相応な大きさのガラス玉に収まり、金の鎖で首から下がるそれは王子の装いからは浮いていて、異質で禍々しい気配さえ放っていた。

陛下は、大人たちの視線を浴びて緊張の面持ちで立つ王子を見やる。

「イツキ、お前の新しい護衛が来てくれたよ」
「!」

父王からそう声を掛けられ、イツキ王子は目を丸くし、きょろきょろと部屋の中を見回す。

見当がついていない王子の様子を見、陛下は手のひらでソウヤを指し示す。
視線を導かれた王子はきょとんとした面持ちで、ソウヤを眺めた。

「…えぇっ!?」

王の間へ入って来て初めてあげた声が思いの外大きく発されてしまい、イツキ王子ははっとして口を押さえ、肩をすぼめて恐縮した。
当惑の表情で訴えかけてくる彼へ、陛下は変わらず微笑を返していた。

「こちらにいる、『ミヤジマ技研』のミヤジマ殿のアンドロイドだよ」

にっと笑いながら軽く会釈するミヤジマ博士と陛下を交互に見、王子は再びソウヤへと視線を送る。
まだ半信半疑な面持ちでいる息子の腕をさすり、陛下はソウヤを手招きする。
ソウヤは一礼してから歩み寄ってイツキ王子の前に跪き、その手を取った。

「お目文字賜り光栄です、殿下。誠心誠意、この身に代えましてもあなた様をお守り致します」

頭を下げながらそう挨拶を述べると、王子の手から微量の振動を感じた。

「…?」

顔をあげると、イツキ王子は黙ったまま少し眉を寄せ、取られた手をぱっと引っ込めた。
その仕草を受け、ソウヤは白い顔を青ざめさせた。

……早速嫌われてしまった…?
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