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第4話_ヤマト国王家への拝謁-5
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ショックを隠し切れないソウヤを置き、王の間の話は先へ進む。
イツキ王子がソファへ座ると、トクラ幕僚長とミヤジマ博士も続いて着席した。
「陛下、再三になりますが…明日の御公務、やはりお取り止めはなさらないおつもりですか?」
「うん。古くより厚く親交のあるカリメ王室からの御来賓なのに、私がお迎えしない道理はないだろう?」
念を押すような問い掛けへ深く頷く陛下に、トクラ氏はやや表情を曇らせながらも頷き返した。
「確かに、此度は王太子殿下の訪国でございましたね。…承知しました、警備は通例以上に厳重配備と致しましょう」
「面倒をかけてすまない」
「いえ、陛下の御安全と国の安寧、どちらも御護りすることが我々の使命です」
そう応えると、トクラ幕僚長はミヤジマ博士へ視線をやる。
「明日のカリメ国王太子殿下の訪国は、エアポートでの歓待セレモニーに続き、迎賓館にて陛下との会談ならびに会食が予定されている。会談以外の御行程には、王子殿下にも御出席頂く予定だ。…早速だが、新しい護衛機には殿下の身辺警護を任せる」
ソウヤへも見上げつつそう申し渡すと、トクラ氏は博士へメモリーチップを手渡した。
「エアポートまでの道程と迎賓館の見取り図、そしてそれぞれの警備システムポイントが収められている。護衛機へインストールしておくように」
「承知しました。…ところで、このような話を今ここでなさっても大丈夫なんですか?」
話し進めるトクラ氏へ、ミヤジマ博士は王の間扉の方を見ながら注意を送る。
「! …ああ」
扉手前には、イツキ王子が入室してきた時に帯同していた壮年の男が立っていた。
入室後そこから一歩も動かずに畏まっている彼へ、トクラ氏も目をやり、気付いてすぐに博士へと戻す。
「彼は王子殿下の専属教師だ。陛下の代から務めている男でね、王族方や宮中の者にとっては縁の深い人物だから、案ずることは無い」
「王室教師でしたか。すると、今後の護衛は彼の周囲も併せて行うことに?」
「いや、公務に帯同することは無いゆえ、不要だ。殿下の御就学中は必要になる場面も出てくるかもしれないが、殿下と別の時には彼専用の護衛機を付けてある。基本的に勘定に入れなくていい」
「…そうですか」
「ユン にございます。お見知りおきを」
王室教師・ユン氏は、一歩前へ出て深く会釈した。
博士は白髪混じりのその頭頂部を眺めながら、トクラ氏へ聞く。
「"ユン"…華国人ですか?」
「元はそうだが、親の代で帰化していて、国籍はヤマトだ。ここへ根ざしてもう長い」
「…なるほど」
博士の視線を受けたユン氏は頭を上げると、皺の寄る顔に笑みを浮かべてみせた。
今更ながら簡単に顔合わせを済ませると、トクラ氏は今一度ソウヤを見やった。
「着任後早速の任務だが、王家に仕える護衛機であれば、通常任務のひとつに過ぎないレベルだ。着実に遂行するように」
「承知致しました」
トクラ幕僚長の釘を刺すような指令を受け、ソウヤは背筋を伸ばして応えた。
イツキ王子がソファへ座ると、トクラ幕僚長とミヤジマ博士も続いて着席した。
「陛下、再三になりますが…明日の御公務、やはりお取り止めはなさらないおつもりですか?」
「うん。古くより厚く親交のあるカリメ王室からの御来賓なのに、私がお迎えしない道理はないだろう?」
念を押すような問い掛けへ深く頷く陛下に、トクラ氏はやや表情を曇らせながらも頷き返した。
「確かに、此度は王太子殿下の訪国でございましたね。…承知しました、警備は通例以上に厳重配備と致しましょう」
「面倒をかけてすまない」
「いえ、陛下の御安全と国の安寧、どちらも御護りすることが我々の使命です」
そう応えると、トクラ幕僚長はミヤジマ博士へ視線をやる。
「明日のカリメ国王太子殿下の訪国は、エアポートでの歓待セレモニーに続き、迎賓館にて陛下との会談ならびに会食が予定されている。会談以外の御行程には、王子殿下にも御出席頂く予定だ。…早速だが、新しい護衛機には殿下の身辺警護を任せる」
ソウヤへも見上げつつそう申し渡すと、トクラ氏は博士へメモリーチップを手渡した。
「エアポートまでの道程と迎賓館の見取り図、そしてそれぞれの警備システムポイントが収められている。護衛機へインストールしておくように」
「承知しました。…ところで、このような話を今ここでなさっても大丈夫なんですか?」
話し進めるトクラ氏へ、ミヤジマ博士は王の間扉の方を見ながら注意を送る。
「! …ああ」
扉手前には、イツキ王子が入室してきた時に帯同していた壮年の男が立っていた。
入室後そこから一歩も動かずに畏まっている彼へ、トクラ氏も目をやり、気付いてすぐに博士へと戻す。
「彼は王子殿下の専属教師だ。陛下の代から務めている男でね、王族方や宮中の者にとっては縁の深い人物だから、案ずることは無い」
「王室教師でしたか。すると、今後の護衛は彼の周囲も併せて行うことに?」
「いや、公務に帯同することは無いゆえ、不要だ。殿下の御就学中は必要になる場面も出てくるかもしれないが、殿下と別の時には彼専用の護衛機を付けてある。基本的に勘定に入れなくていい」
「…そうですか」
「ユン にございます。お見知りおきを」
王室教師・ユン氏は、一歩前へ出て深く会釈した。
博士は白髪混じりのその頭頂部を眺めながら、トクラ氏へ聞く。
「"ユン"…華国人ですか?」
「元はそうだが、親の代で帰化していて、国籍はヤマトだ。ここへ根ざしてもう長い」
「…なるほど」
博士の視線を受けたユン氏は頭を上げると、皺の寄る顔に笑みを浮かべてみせた。
今更ながら簡単に顔合わせを済ませると、トクラ氏は今一度ソウヤを見やった。
「着任後早速の任務だが、王家に仕える護衛機であれば、通常任務のひとつに過ぎないレベルだ。着実に遂行するように」
「承知致しました」
トクラ幕僚長の釘を刺すような指令を受け、ソウヤは背筋を伸ばして応えた。
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