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唐揚げの響き

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 そう話すアメリアに、冨岡は不思議そうな表情を向けた。その表情に擬音をつけるとするなら、キョトンだろうか。

「そりゃそうですよ。もう家族みたいなものじゃないですか。それに俺はフィーネちゃんに命を救われていますからね。返しきれない恩がある、心配するのは当然ですよ」
「ふふっ、フィーネ自身はしたいことをしたいようにしただけだと思いますよ。でも、トミオカさんがそう考えてくれることは、フィーネにとって最大の幸福でしょう」
「そうですかね?」
「そうですよ」

 目を引くほど綺麗な唇が嬉しそうに形を変える。
 どうやらアメリアは相当ご機嫌らしい。
 二人でそんな話をしていると、フィーネは待ちきれないといった様子でスプーンを握りしめていた。
 それに気づいた冨岡は自分の分のグラタンも取り分けて、手を合わせる。

「じゃあ、食べましょうか。二人とも火傷しないように気をつけてくださいね。いただきます!」
「いっただっきまーす!」
「いただきます」

 アメリアもフィーネも冨岡の動きを真似て手を合わせた。食事の度に冨岡がそうするので、それがマナーなのだと既に受け入れている。
 最初に動いたのはフィーネだった。先ほど、冨岡に止められた時からずっとグラタンが気になっており、スプーンで掬った分に強めの息を吹きかけてから頬張る。
 それでもグラタンのしぶとい熱は取りきれなかったらしく、慌ただしく吐息を漏らした。

「あふっ、あふっ、ふーふー」
「ほら、熱いって言ったじゃないか。これ飲んで」

 軽く笑いながら冨岡がお茶を勧める。しかし、フィーネは首を横に振ってからなんとかグラタンを飲み込んだ。
 どうやらグラタンの味をお茶で薄めたくなかったらしい。

「んー! おいっしい! なにこれなにこれ! トロトロしてて、モキュモキュしてて、サクサクで、甘くてしょっぱくて」

 体全体で美味しさを表現しながら、口の中で得た情報を順番に説明するフィーネ。
 あまりにも嬉しそうなので、冨岡も釣られて笑う。

「ははっ、モキュモキュはマカロニのことかな? 甘いのは多分玉ねぎだね。気に入ってくれたみたいでよかったよ」
「すんごく美味しい! フィーネこれ好きなやつ。今日からこれがフィーネの大好物だよ」

 言いながらフィーネはもう一口、また一口と勢いよく食べていく。小さな体で変わらない吸引力を思わせる速度。よほどグラタンが気に入ったのだろう。
 フィーネを眺めながら、アメリアは唐揚げに手を伸ばした。

「せっかくですから、私はこちらから。油で揚げていましたよね。なんて豪華な料理法なのでしょう」

 苦戦しながら唐揚げをスプーンで掬おうとするアメリア。金魚掬いのようだ、と笑いそうになりながら、冨岡はフォークを手渡す。

「アメリアさん、これを使ってください。ちなみにこの料理の名前は唐揚げですよ」
「ありがとうございます。カラアゲですか。可愛らしい響きですね」
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