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心酔と依存

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 レオポルトはそう言ってからウィローたちを眺める。
 彼らは心からヴェルフェールを信頼しているはずだ。自分たちの立場を捨てて、森の中で暮らし尽くすほどなのだから疑っているわけもない。
 もちろん、ヴェルフェールだけに尽くしているのではなく、バレンドットを救うという目的のもとの結束と信頼だが、その危険性を聞き入れることはないだろう。
 話すだけ無駄というものだ。
 
「現時点で親衛隊たちにこの話をする意味はないだろうな。どうしたものか」

 レオポルトが小声でそう呟く。倉野はレオポルトの言う、どうしたものか、の意味が分からず首を傾げた。

「何をですか?」

 倉野に訊ねられたレオポルトは再び、周囲に聞こえないように耳打ちする。

「少なくともウィローはヴェルフェールという元帥を心酔している。いや、国を出た時点では信頼程度の話だっただろう。しかし、今は違う。ウィローにとってバレンドットと自分を繋ぐものはヴェルフェールしかいない。心酔することでしか自分を保てないのだろう」
「心酔、ですか。確かに彼の言葉からはそのように感じましたね。心酔だったり、依存だったり」
「依存か。その方が言葉としては正しいのかもしれんな。ヴェルフェールの指示に従い、役に立つことだけがウィローの正義になっている」

 そう話すレオポルトの表情はどこか険しい。それは自分の理想が崩れたことに対する苛立ちなのだろうか。
 
「歯がゆいな。状況的にはウィローたちを仲間に引き込む好機だった。そうすれば情報だけでは得られない繋がりを手にすることができたのだが、ヴェルフェールが信用できない以上、ウィローたちに全てを話すわけにはいかない」

 レオポルトは呟く。
 倉野たちとウィローたちの目的は概ね一致していた。どちらともバレンドット内で起きようとしている反乱を止めたい。
 手を組むことはできるが、こちらの全てを明かすわけにはいかない状況になってしまった。
 そんなレオポルトの気持ちを理解した倉野は頷いてから口を開いた。

「そうですね。とりあえず、こちらの目的を話せるだけ話しましょう。もしもヴェルフェールがゼット商会と繋がっているのであれば、ノエルさんがデュワールに連れて行かれたことは知っているはずです。僕たちがどう動くのか詳しいことまでは話せませんが、ある程度情報を話して味方だと思ってもらえれば、協力してもらえるでしょうし」

 倉野がそう話すとレオポルトは納得したらしくレインを手招く。
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