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追加調査

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 方向性さえ定まれば、パスカルたち親衛隊の動きは早い。ウィローへの報告から三日でそれらしき情報を手に入れてきた。
 報告書を手渡しながらパスカルがウィローに説明する。

「隊長の推測に従い、荷物運び業者、それもバレンドット国内で動いていた業者をしらみつぶしに調査しました。当然ながら、ほぼ全ての業者は相手も知らず、受け取った荷物を次の業者に引き継いでいるだけでした。その調査の中で、気なる業者が一つありまして。前回調査を行った時点では存在していたはずなのに、この短期間で廃業している業者を見つけました」
「廃業?」

 ウィローが聞き返すとパスカルは小さく頷いて話を続けた。

「ええ、他の業者が言うには創業してから長く、売上もそれほど悪くなかったはずなのですが、突然です」
「そこの長が亡くなったというわけでもないのか?」
「はい。むしろ長を父親から引き継いだばかりの若い男がいたそうで、廃業の理由は一切不明とのことです」
「そうなると、その業者がかなり怪しいな」

 報告書の文章と照らし合わせながらウィローが呟く。
 その言葉を待っていたかのようにパスカルは軽く微笑んだ。

「隊長ならそう言うと思って、既にそちらの調査を行っています。もう少し時間を頂ければ全てわかるはずです」
「そうか」

 前回の報告の時、推測で動かず大した成果をあげられなかったことを踏まえたのだろうか。
 ともかく部下の成長を感じたウィローは思わず口角を上げる。だが、隊長として手放しで褒めるわけにはいかなかった。

「既に動いているのなら何も言わないが、何かあった時のために報告だけは忘れるなよ。何かあってからでは守ってやれないからな」
「はい、承知いたしました」
「それと、その業者の調査には細心の注意を払え。相手は大量の武器と攻城兵器を所持している可能性が高いのだろう。相手を見ようとして近づきすぎると、相手からも見える。生きて帰り報告するまでが任務だ」

 最後にそう伝えてパスカルを送り出したウィロー。自分で口にしたはずの言葉だったが、どこか自分らしくないと感じていた。
 親衛隊員の戦力を一番知っているのはウィローだ。それなのにどうして彼らの身を案じるようなことを言ったのだろう。
 その疑問は最悪の形で解答された。
 二度目の報告の翌朝。兵舎の近くを流れる大きな川に遺体が浮いていたのである。発見したのはパスカルだった。
 パスカルは自分が汚れるのも濡れるのも厭わず川に飛び込むと、遺体を抱きかかえて兵舎へと運ぶ。
 首筋に残る切り傷、身体中のアザ、ボロボロの衣服。それは変わり果てた部下の姿だった。
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