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純正な涙に触れる
踏みつけられる心臓
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月曜日。
バレンタインデー。
チョコレートを渡して気持ちを伝える事ばかりに気を取られ、いつ何処で渡すかを全く考えてなかった。
そして今、気づいたら放課後である。
他の生徒達は昼休みなどを利用してイベントを楽しんでいたのに俺はというと。
日中は上の空で過ごし、放課後になってやっと渡しに行くぞと歩き出したら、あれ?朝日さん何処?状態だ。
「あほ過ぎる…。」
チョコの入った紙袋を見つめて呟く。
会う約束を取り付ける事さえ忘れていた。
寮の管理人室に行ってみたが、珍しく居なかった。
学校の用務員室にも来てみたが、誰も居ない。
もしかしたら第二図書室かもしれない。
だが用務員室は学校の敷地の一番端にあるため、ここから第二図書室まで行くのには時間がかかる。
この学校は無駄に広い。
「…電話しよ。」
携帯に電話をかける。
このまま今日会えない事は避けたい。
「はい。」
「あ、陽太です。」
「うん。どうした?」
声が聞こえただけで、もう手汗。
ドキドキする。
朝日さんを探し回って学校と寮をウロウロ歩いたせいで、より心拍数が上がっている。
「あの、今何処ですか?」
「今?美術教務室で萱島と話してる。もうそろそろ寮に戻ろうと思ってたところ。」
そこだったか。
良かった電話して聞いてみて。
方向転換し、来た道を電話しながら歩いて戻る。
朝日さんが寮に戻って来たときに管理人室で渡そう。
「あ、じゃあ、あとで管理人室に伺いますね。今日渡しっ…うわっ!えっ!?」
今日渡したいものがあるって言いたかったのに。
廊下を歩いていたら突然空き教室のドアが開いて、中に居た人に腕を取られ教室に引きずり込まれた。
「いった…っなにっ、」
引っ張られた勢いで床に転がる。
ガチャンと教室の鍵が閉められた音がした。
持っていた携帯は引っ張られた勢いで廊下に落とした。
これは、あまり良くない状況だ。
胸ポケットに入れていた萱島先生がくれた防犯ブザーを押す。
大きな音が鳴り響くが、ブザーはすぐに奪われて踏み潰され壊れてしまった。
ブザー音が消えた教室は妙に静かで不気味だ。
「無駄だよ。放課後ここを通る生徒なんて君くらいだ。」
そうだ。
この場所は、殆ど人が通らない。
急いで逃げようとしたけど、起き上がる前に身体を押し倒され、手首を押さえつけられる。
誰なんだ。
こんな頭のイカれた事をするのは。
確認した顔には見覚えがあった。
「あの時の…」
野球部オレオレ詐欺の坊主の人。
「この前掴んだ時も思ったんだ。細い手首だなあって。俺の手首とは大違い。」
あの時と同じようにギリギリと手首を圧迫される。
ただ痛いだけの理不尽な一方的な痛み。
「あの時、邪魔が入ったからさ。そのあと、ずっと話す機会を伺ってたんだ。初詣にも一緒に行ったよね。」
「…もしかして、あの箱のおみくじ…」
「そう!せっかく引いたのに勿体ないからさ。戻してあげたんだ。風邪も引いてたみたいだし、お見舞いの品だよ。」
こいつだ。
叶羽ちゃんを巻き込んだやつ。
「気に入ってくれた?」
「気に入るわけないだろ。ふざけんな。」
「…おかしいな。それに、あの管理人に頭触られて嫌がってただろ?俺が鉢植えを割って気を反らして助けてやったんだ。割ったあと急いで隠れたりして大変だったよ。嬉しかった?」
「別に嫌がってないし、鉢植え割るとか意味分かんない。全然嬉しくない。」
「嘘ばっかり。…まあ、いいや。ところでさ、あのチョコレート、俺のでしょ?ありがとう。」
教室の床に転がっている紙袋。
派手に落としたから、中のチョコレートが箱から飛び出てしまっている。
悲しくて心臓が踏み潰されるようだった。
「お前のじゃない。」
「え?」
「あれは、お前にあげるものじゃない。」
否定する言葉を発する度に、より手首がキツく握られる。
抵抗するけど、びくともしない。
「…俺の方が君の事が好きなのに。俺の堕天使なのに…なんでだよ、俺の事、好きだろ?俺の方が好きだろ?」
「嫌い。大嫌い。」
そう言ったら、思いきり頬を平手で打たれた。
痛みよりも怒りの方が勝っているため、そこまで痛くない。
睨み付ける。
絶対に屈しない。
「残念だなあ、その目。…わかった。じゃあ、俺の事、もっと好きになって。」
バレンタインデー。
チョコレートを渡して気持ちを伝える事ばかりに気を取られ、いつ何処で渡すかを全く考えてなかった。
そして今、気づいたら放課後である。
他の生徒達は昼休みなどを利用してイベントを楽しんでいたのに俺はというと。
日中は上の空で過ごし、放課後になってやっと渡しに行くぞと歩き出したら、あれ?朝日さん何処?状態だ。
「あほ過ぎる…。」
チョコの入った紙袋を見つめて呟く。
会う約束を取り付ける事さえ忘れていた。
寮の管理人室に行ってみたが、珍しく居なかった。
学校の用務員室にも来てみたが、誰も居ない。
もしかしたら第二図書室かもしれない。
だが用務員室は学校の敷地の一番端にあるため、ここから第二図書室まで行くのには時間がかかる。
この学校は無駄に広い。
「…電話しよ。」
携帯に電話をかける。
このまま今日会えない事は避けたい。
「はい。」
「あ、陽太です。」
「うん。どうした?」
声が聞こえただけで、もう手汗。
ドキドキする。
朝日さんを探し回って学校と寮をウロウロ歩いたせいで、より心拍数が上がっている。
「あの、今何処ですか?」
「今?美術教務室で萱島と話してる。もうそろそろ寮に戻ろうと思ってたところ。」
そこだったか。
良かった電話して聞いてみて。
方向転換し、来た道を電話しながら歩いて戻る。
朝日さんが寮に戻って来たときに管理人室で渡そう。
「あ、じゃあ、あとで管理人室に伺いますね。今日渡しっ…うわっ!えっ!?」
今日渡したいものがあるって言いたかったのに。
廊下を歩いていたら突然空き教室のドアが開いて、中に居た人に腕を取られ教室に引きずり込まれた。
「いった…っなにっ、」
引っ張られた勢いで床に転がる。
ガチャンと教室の鍵が閉められた音がした。
持っていた携帯は引っ張られた勢いで廊下に落とした。
これは、あまり良くない状況だ。
胸ポケットに入れていた萱島先生がくれた防犯ブザーを押す。
大きな音が鳴り響くが、ブザーはすぐに奪われて踏み潰され壊れてしまった。
ブザー音が消えた教室は妙に静かで不気味だ。
「無駄だよ。放課後ここを通る生徒なんて君くらいだ。」
そうだ。
この場所は、殆ど人が通らない。
急いで逃げようとしたけど、起き上がる前に身体を押し倒され、手首を押さえつけられる。
誰なんだ。
こんな頭のイカれた事をするのは。
確認した顔には見覚えがあった。
「あの時の…」
野球部オレオレ詐欺の坊主の人。
「この前掴んだ時も思ったんだ。細い手首だなあって。俺の手首とは大違い。」
あの時と同じようにギリギリと手首を圧迫される。
ただ痛いだけの理不尽な一方的な痛み。
「あの時、邪魔が入ったからさ。そのあと、ずっと話す機会を伺ってたんだ。初詣にも一緒に行ったよね。」
「…もしかして、あの箱のおみくじ…」
「そう!せっかく引いたのに勿体ないからさ。戻してあげたんだ。風邪も引いてたみたいだし、お見舞いの品だよ。」
こいつだ。
叶羽ちゃんを巻き込んだやつ。
「気に入ってくれた?」
「気に入るわけないだろ。ふざけんな。」
「…おかしいな。それに、あの管理人に頭触られて嫌がってただろ?俺が鉢植えを割って気を反らして助けてやったんだ。割ったあと急いで隠れたりして大変だったよ。嬉しかった?」
「別に嫌がってないし、鉢植え割るとか意味分かんない。全然嬉しくない。」
「嘘ばっかり。…まあ、いいや。ところでさ、あのチョコレート、俺のでしょ?ありがとう。」
教室の床に転がっている紙袋。
派手に落としたから、中のチョコレートが箱から飛び出てしまっている。
悲しくて心臓が踏み潰されるようだった。
「お前のじゃない。」
「え?」
「あれは、お前にあげるものじゃない。」
否定する言葉を発する度に、より手首がキツく握られる。
抵抗するけど、びくともしない。
「…俺の方が君の事が好きなのに。俺の堕天使なのに…なんでだよ、俺の事、好きだろ?俺の方が好きだろ?」
「嫌い。大嫌い。」
そう言ったら、思いきり頬を平手で打たれた。
痛みよりも怒りの方が勝っているため、そこまで痛くない。
睨み付ける。
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