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純正な涙に触れる
甘い思い
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スーパーでの買い物は眠そうな犬飼がフラフラと好き勝手行動するため、子供と買い物している気分になった。
その様子が面白かったので、お菓子コーナーで嬉しそうに駄菓子を買い集める姿をスマホで撮ったら物凄く怒られた。
材料を買いそろえ、犬飼の部屋に叶羽も合流し皆で作り始める。
レシピに載っていた初心者でも作りやすいと書いてあった生チョコを作るのだけれど。
犬飼のチョコを切る手つきや材料を測る様子が、おぼつかないためハラハラする。
「ちょ!ええ!?犬飼君何してんの!?」
「溶かしてんだよ。」
「レシピちゃんと見た!?」
言い争ってる間も、チョコが入ったボウルにチョロチョロとお湯が注がれていく。
待って待って、手を止めて!
「お湯で湯煎するって。え、違ぇの?」
「犬飼、お湯入ったらチョコレート生命ほぼ終了だから止めとけ。」
叶羽が注意する。
「マジかよ!うっわ、分離してんじゃん!」
チョコレートにお湯を入れるという、まるで漫画のような暴挙。
読書家なのに、なんでちゃんとレシピ読めないんだろう。
不思議でならない。
入ったお湯を必死にスプーンで掻き出している犬飼。
溶けたチョコとお湯が分離してボウルの中は酷い事になっている。
それは、もう無理じゃないかな…
突っ込み所が多くて追い付かない。
途中から手伝いに来てくれた叶羽は、興味深そうに犬飼を見ている。
「あんまり知らなかったけど、犬飼って面白いな。」
コソッと俺に耳打ちしてくる叶羽は、なんだか楽しそう。
誘って良かったと安堵した。
この前の事件の後から人を避けるように部屋に籠りがちになっていたから、今日はどうだろうと心配だった。
この様子だと大丈夫そうだ。
犬飼の裏表の無い明るさに感謝しよう。
「出来たね~」
「上出来じゃね?」
「ちゃんと生チョコっぽいな。」
冷蔵庫から取り出し、石畳のように切り分けた生チョコ。
甘過ぎる物が苦手なお婆ちゃんの口に合うように、ビターチョコを使って砂糖も控えた。
ココアパウダーも振りかけて見映えも良い。
少々トラブルはあったものの美味しそうに出来たと思う。
これで婆ちゃんに送れると嬉しそうな犬飼。
綺麗にラッピングした箱に入れて、さっそく配送の準備をしている。
叶羽は渡す人が居ないらしく自分で食べるそうだ。
そして俺は。
「はぁ、もう緊張してきた。」
箱に入った生チョコ。
ラッピングして丁寧に紙袋に入れた。
渡す事を想像すると、もうすでに緊張してる。
「もう渡すしかねぇな。」
「頑張れ。」
犬飼がニヤリと笑い、叶羽が頷く。
俺は友人は少ないと思っていたけれど、こんなに頼りになる友達が二人もいるなら十分だ。
なんだか大丈夫な気がしてきた。
俺なんかに好きって言われても迷惑かなとか、気持ちを伝えて嫌そうにされたらどうしようとか、一方的に好きって言うことに何か意味があるのかなとか、むしろ気持ちの押し付けで自己満足で利己的な事なんじゃないかとか。
本当は色々考えて怖かったけど。
それでも、やっぱり。
甘い思いは溢れてしまう。
好きだよって。
好きって感情が知れて嬉しいって。
ありがとうって。
伝えたい。
「頑張る。」
その様子が面白かったので、お菓子コーナーで嬉しそうに駄菓子を買い集める姿をスマホで撮ったら物凄く怒られた。
材料を買いそろえ、犬飼の部屋に叶羽も合流し皆で作り始める。
レシピに載っていた初心者でも作りやすいと書いてあった生チョコを作るのだけれど。
犬飼のチョコを切る手つきや材料を測る様子が、おぼつかないためハラハラする。
「ちょ!ええ!?犬飼君何してんの!?」
「溶かしてんだよ。」
「レシピちゃんと見た!?」
言い争ってる間も、チョコが入ったボウルにチョロチョロとお湯が注がれていく。
待って待って、手を止めて!
「お湯で湯煎するって。え、違ぇの?」
「犬飼、お湯入ったらチョコレート生命ほぼ終了だから止めとけ。」
叶羽が注意する。
「マジかよ!うっわ、分離してんじゃん!」
チョコレートにお湯を入れるという、まるで漫画のような暴挙。
読書家なのに、なんでちゃんとレシピ読めないんだろう。
不思議でならない。
入ったお湯を必死にスプーンで掻き出している犬飼。
溶けたチョコとお湯が分離してボウルの中は酷い事になっている。
それは、もう無理じゃないかな…
突っ込み所が多くて追い付かない。
途中から手伝いに来てくれた叶羽は、興味深そうに犬飼を見ている。
「あんまり知らなかったけど、犬飼って面白いな。」
コソッと俺に耳打ちしてくる叶羽は、なんだか楽しそう。
誘って良かったと安堵した。
この前の事件の後から人を避けるように部屋に籠りがちになっていたから、今日はどうだろうと心配だった。
この様子だと大丈夫そうだ。
犬飼の裏表の無い明るさに感謝しよう。
「出来たね~」
「上出来じゃね?」
「ちゃんと生チョコっぽいな。」
冷蔵庫から取り出し、石畳のように切り分けた生チョコ。
甘過ぎる物が苦手なお婆ちゃんの口に合うように、ビターチョコを使って砂糖も控えた。
ココアパウダーも振りかけて見映えも良い。
少々トラブルはあったものの美味しそうに出来たと思う。
これで婆ちゃんに送れると嬉しそうな犬飼。
綺麗にラッピングした箱に入れて、さっそく配送の準備をしている。
叶羽は渡す人が居ないらしく自分で食べるそうだ。
そして俺は。
「はぁ、もう緊張してきた。」
箱に入った生チョコ。
ラッピングして丁寧に紙袋に入れた。
渡す事を想像すると、もうすでに緊張してる。
「もう渡すしかねぇな。」
「頑張れ。」
犬飼がニヤリと笑い、叶羽が頷く。
俺は友人は少ないと思っていたけれど、こんなに頼りになる友達が二人もいるなら十分だ。
なんだか大丈夫な気がしてきた。
俺なんかに好きって言われても迷惑かなとか、気持ちを伝えて嫌そうにされたらどうしようとか、一方的に好きって言うことに何か意味があるのかなとか、むしろ気持ちの押し付けで自己満足で利己的な事なんじゃないかとか。
本当は色々考えて怖かったけど。
それでも、やっぱり。
甘い思いは溢れてしまう。
好きだよって。
好きって感情が知れて嬉しいって。
ありがとうって。
伝えたい。
「頑張る。」
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