細胞がはじけた時が噛み頃です。

三角

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純正な涙に触れる

寒い教室

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バリバリっと鈍い音がして、ブレザーの下に着込んでいたカーディガンのボタンとシャツのボタンが全部取れた。
どんだけ馬鹿力なんだよ…
脱げたところから冷たい空気が入ってきて寒いのと、物凄い馬鹿力にゾッとして鳥肌が立つ。
手首は自由になったが痺れて上手く力が入らない。
無理矢理、上半身の服を脱がされる。
抵抗したらシャツが破れた。
最悪だ。
あの学校指定のシャツ高いのに。


「…何だこれ。」


俺の腕の傷を見て驚いている。
気持ち悪いとか思って解放してくれないだろうか。


「あいつに、あの管理人にやられたんだな。かわいそうに…」
「違う。」
「口止めされてるんだ。大丈夫、助けてあげるから。」
「だから違うんだってば…」
「他のところは真っ白で綺麗だね。」


全然違う。
話が通じない。
俺の事、見てるようで全然見てない。
存在しているようで存在していない。
気持ち悪い。
この感じ。
あの頃と同じだ。
俺は居るのに存在していない。
気持ち悪い。
あの頃には、もう戻りたくない。


ジロジロ見られるだけだったが、いよいよ手が伸びてきた。
ブザーを鳴らしたから場所の通知が萱島先生に行って、きっと俺を探してくれているはずだ。
きっと大丈夫だという安心感が俺を冷静にしてくれる。
でも、さすがに触られるのは嫌だな。
ギュっと目を閉じ覚悟したときだった。


ガンガンガンッ


教室のドアが蹴られる音がして、派手にガシャンと倒れた。
萱島先生と朝日さんだ。


「お前、自分が何したか分かってんだろうなぁ!?」
「うっ!」


萱島先生が俺に覆い被さっていた坊主の人の肩を蹴って退かしてくれる。
うわ…先生、眉間に皺寄せて凄い怒ってる。


「陽太、大丈夫か?」
「あ…大丈夫…」


朝日さんが身体を起こすのを手伝ってくれて、破れた服を軽く羽織らせてくれる。


「生徒に暴力…いいんですか?訴えますよ…」


蹴り飛ばされた坊主の人が肩を押さえながら立ち上がった。
この期に及んで、まだ足掻のか。


「うるせぇなあ…訴える?じゃあ、ネットにお前の事ばら蒔くぞ。俺の人生狂わせるつもりなら、俺はお前の人生を狂わせるからな。容赦しねぇ。」


先生の本気を感じ取ったんだろう、坊主の人は大人しくなった。


「俺はコイツを風紀室に連れていく。陽太、大丈夫だな?」
「はい、大丈夫です。ホントにありがとう先生。」
「落ち着いたら後で俺の所来い。朝日、あとは頼んだ。」


そう言って坊主の人を半ば引きずるようにして萱島先生が出ていった。
朝日さんと俺だけになる。


「肘擦りむいてるな…。歩けるか?」
「大丈夫です。でも服が破けてて…」
「これ着てろ。」


朝日さんが着てた厚手のパーカーを脱いで着せてくれる。
凄く暖かいけど、シャツ1枚になってしまった朝日さんに申し訳ない。


「すみません…。」
「とりあえず寮に戻ろう。ここは寒い。」
「はい。」


紙袋や廊下に落ちていた携帯を回収して寮に戻る。
ゆっくりゆっくり歩いた。
何も話さなかったけど、それで良かった。
口を開いたら泣きそうだ。
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