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純正な涙に触れる
涙を拭う温もり
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おみくじ?
ゴミをビニール袋越しに観察していた朝日が気付いた。
ゴミはグシャグシャに丸められた紙なのだが、よくよく見ると、おみくじらしい。
「ほんとだ…」
汚れていて分かりにくいが確かにおみくじだ。
そして俺は気がついた。
血の気が引くとはこの事か。
『凶』と書いてある。
「狙われたの俺だ…。」
「え?」
「これ、俺が初詣の時に引いて木に括った凶のおみくじだ…」
文面も同じ。
木に括ってきた筈なのに。
ここにある。
ゾッとした。
なんでここにあるんだろう。
木に括った物を取った?
もし取ったんだったら、初詣の時何処かから見られてたのか?
つけられてた?
それとも、たまたま同じもの?
それを何で俺の部屋に…
なんで俺じゃなくて叶羽ちゃんがこんな目に。
「陽太、大丈夫か?」
「俺が…巻き込んだんだ…」
狙いが俺なのであれば、たまたま部屋に居合わせただけで。
こんな目に合わせてしまった。
巻き込んでしまった。
風邪なんて引いたから。
俺のせいだ。
俺が巻き込んだんだ。
「さっきだって、焦って何も出来なかった。」
悔しい。
理不尽な嫌がらせにも腹は立つ。
それはもう、腸が千切れそうになるくらいに、凄く腹が立つ。
けどそれ以上に、何も出来なかった自分が悔しい。
「陽太、血が出る。佐野が起きた時心配するぞ。」
「あ…」
無意識に唇を噛んでいた。
唇を噛むのをやめたら、涙が出てきてしまった。
せっかく我慢していたのに。
ゆっくりゆっくり、流れる。
目を擦っても止まらない。
「そんなに乱暴に擦ったら腫れる。」
溢れる涙を朝日さんが、一粒一粒、丁寧に拭ってくれる。
「陽太。突然人が倒れたら誰でも焦る。幸い佐野は無事だし、次同じような事があったら対処出来るように勉強すればいい。」
「うん…」
「陽太のせいじゃ無い。」
「…。」
でも、巻き込んだのは俺だ。
「陽太。俺を見ろ。」
朝日さんに見つめられる。
「陽太のせいじゃない。」
真剣な顔。
射ぬくような目。
俺のせいじゃない…?
「…でも、」
「佐野が、お前のせいだって責めるか?」
叶羽ちゃんが?
そんな事言わない。
たまたま部屋に居ただけだって。
気にすんなって笑う。
涙が止まらない。
「言わないだろ。」
「う、ん。」
「ほら、お前のせいじゃない。」
「ん。ん。」
頷く。
頷くたびに、涙が出る。
頬に流れる涙を、ずっと拭ってくれる。
頬に当たる掌の暖かさが、積もった悔しさを溶かしてくれた。
冷静になると、この状況が恥ずかしくなってきた。
涙は止まり、ひくひくと荒々しい呼吸のみになったのに、何故かまだ頬を撫でられる。
ずっと見られてる。
駄目だ耐えられない。
恥ずかしくて目がウロウロ動くのが自分でも分かった。
ふっと笑われる。
朝日さんの息が顔に当たり、くすぐったかった。
鼻水が出そうで、ずびっと啜った時。
「ぅ…」
ベッドに寝ていた叶羽が動いた。
急いで駆け寄る。
「叶羽ちゃん!…起きた?」
ゆっくり目が開く。
叶羽はこちらを見て、少しホッとしたような顔をした。
「陽太…」
「大丈夫?気持ち悪くない?」
「わりと平気。…俺、倒れたんだっけ。」
「うん、びっくりした。」
「ごめんな。」
「おれ、俺の方こそ、ごめっ」
「なんで陽太が謝るんだよ。泣くなよ。ははっ…鼻水出てるぞ。」
叶羽が笑った。
良かった。
「よかったっ…よかったぁ…」
ゴミをビニール袋越しに観察していた朝日が気付いた。
ゴミはグシャグシャに丸められた紙なのだが、よくよく見ると、おみくじらしい。
「ほんとだ…」
汚れていて分かりにくいが確かにおみくじだ。
そして俺は気がついた。
血の気が引くとはこの事か。
『凶』と書いてある。
「狙われたの俺だ…。」
「え?」
「これ、俺が初詣の時に引いて木に括った凶のおみくじだ…」
文面も同じ。
木に括ってきた筈なのに。
ここにある。
ゾッとした。
なんでここにあるんだろう。
木に括った物を取った?
もし取ったんだったら、初詣の時何処かから見られてたのか?
つけられてた?
それとも、たまたま同じもの?
それを何で俺の部屋に…
なんで俺じゃなくて叶羽ちゃんがこんな目に。
「陽太、大丈夫か?」
「俺が…巻き込んだんだ…」
狙いが俺なのであれば、たまたま部屋に居合わせただけで。
こんな目に合わせてしまった。
巻き込んでしまった。
風邪なんて引いたから。
俺のせいだ。
俺が巻き込んだんだ。
「さっきだって、焦って何も出来なかった。」
悔しい。
理不尽な嫌がらせにも腹は立つ。
それはもう、腸が千切れそうになるくらいに、凄く腹が立つ。
けどそれ以上に、何も出来なかった自分が悔しい。
「陽太、血が出る。佐野が起きた時心配するぞ。」
「あ…」
無意識に唇を噛んでいた。
唇を噛むのをやめたら、涙が出てきてしまった。
せっかく我慢していたのに。
ゆっくりゆっくり、流れる。
目を擦っても止まらない。
「そんなに乱暴に擦ったら腫れる。」
溢れる涙を朝日さんが、一粒一粒、丁寧に拭ってくれる。
「陽太。突然人が倒れたら誰でも焦る。幸い佐野は無事だし、次同じような事があったら対処出来るように勉強すればいい。」
「うん…」
「陽太のせいじゃ無い。」
「…。」
でも、巻き込んだのは俺だ。
「陽太。俺を見ろ。」
朝日さんに見つめられる。
「陽太のせいじゃない。」
真剣な顔。
射ぬくような目。
俺のせいじゃない…?
「…でも、」
「佐野が、お前のせいだって責めるか?」
叶羽ちゃんが?
そんな事言わない。
たまたま部屋に居ただけだって。
気にすんなって笑う。
涙が止まらない。
「言わないだろ。」
「う、ん。」
「ほら、お前のせいじゃない。」
「ん。ん。」
頷く。
頷くたびに、涙が出る。
頬に流れる涙を、ずっと拭ってくれる。
頬に当たる掌の暖かさが、積もった悔しさを溶かしてくれた。
冷静になると、この状況が恥ずかしくなってきた。
涙は止まり、ひくひくと荒々しい呼吸のみになったのに、何故かまだ頬を撫でられる。
ずっと見られてる。
駄目だ耐えられない。
恥ずかしくて目がウロウロ動くのが自分でも分かった。
ふっと笑われる。
朝日さんの息が顔に当たり、くすぐったかった。
鼻水が出そうで、ずびっと啜った時。
「ぅ…」
ベッドに寝ていた叶羽が動いた。
急いで駆け寄る。
「叶羽ちゃん!…起きた?」
ゆっくり目が開く。
叶羽はこちらを見て、少しホッとしたような顔をした。
「陽太…」
「大丈夫?気持ち悪くない?」
「わりと平気。…俺、倒れたんだっけ。」
「うん、びっくりした。」
「ごめんな。」
「おれ、俺の方こそ、ごめっ」
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叶羽が笑った。
良かった。
「よかったっ…よかったぁ…」
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