細胞がはじけた時が噛み頃です。

三角

文字の大きさ
上 下
30 / 84
純正な涙に触れる

怒りのお守り

しおりを挟む
目が覚めた叶羽に温かい白湯を飲んでもらいつつ、倒れてからの事を朝日が説明してくれた。
俺はホッとして泣きすぎ、呼吸が乱れて暫く話せなかった。


「陽太ありがとう。朝日さんも、助かりました。ありがとうございます。」
「いや、俺は特に何も。無事で良かった。…とりあえず俺も各所に報告しないといけないだろうから行くけど…陽太大丈夫か?」
「大丈夫。もう泣かない。」


頭ポンポンされる。
また何か投函された時や何かあったら、開けずに、何もせずに、すぐに誰か大人を呼ぶようにと忠告して、部屋を出ていった。


「陽太、ほんと迷惑かけたな。ごめんな。」


俺の天使が酷く落ち込んでる。


「謝ることないよ。悪いのは犯人だから。俺こそ巻き込んでごめんね。」
「たまたま俺が部屋に居ただけだ。陽太は悪くない。」
「うん。叶羽ちゃん大好き。」
「俺も。」
「はにかみ天使ちゃん可愛すぎる…」


やっぱり天使には笑っていて欲しい。
その日は1つのベッドで一緒に寝た。
お互い狭い狭いと文句を言いながらも、やっぱり別々で寝ようと言い出すことは無かった。








翌朝には二人とも元気になったので、通常通り登校している。
叶羽は保健室に行ったあと、授業は受けずに、そのまま部室に籠っているようだ。
彼は特待生のため、ある程度の授業が免除されている。

俺は普通に授業を受けた。
ビクビク怯えて隠れるのは、なんとなく悔しいからだ。
嫌がらせの犯人には本当に腹が立っているので、また嫌がらせされそうだから怖いなどという感情は生まれない。
ビクビクして生活するなんて、絶対嫌だ。


「柚木陽太、佐野叶羽。美術教務室、萱島の所までこい。」


昼休みに校内放送で萱島先生から呼び出された。
先生の所に行くと、先に叶羽が居る。


「馬鹿どもが揃ったな。お前ら、何か思い当たる事無いか?」


なんか先生凄い怒ってる。
叶羽と目が合ったが、心当たりは無いようだ。


「お前ら…、俺に何の報告も無しか?馬鹿なのか?」


あ、忘れてた。
昨日萱島先生から何度か電話来てたんだった。


「忘れてたって顔だなあオイ。昨日鬼束から聞いて、どんだけ俺が驚いたと思ってんだ馬鹿。どんだけ俺が心配したと思ってんだ馬鹿。電話の一本くらい入れろ馬鹿。今日も、のこのこ学校来やがって馬鹿。少しは警戒心持て馬鹿。」
「すいません。」
「ごめんなさい。」


めっちゃ怒ってる。
でも、心配してくれてるんだなあと思うと顔がニヤける。

「ニヤニヤすんじゃねぇ馬鹿。俺は怒ってんだよ。」

バレた。
キリッと顔を引き締める。
ひとしきり怒って収まったのか、それともただ呆れられたのか、はぁ~、と大きめな溜め息。

「…で?叶羽は鬼束の所に行ったんだろ。体調は?どうだった?」
「なにも。大丈夫でした。」
「陽太は?あれから何も嫌がらせ無いのか。」
「大丈夫です。今のところは何も。」
「そうか。まあ、二人とも大丈夫なら、良かった。」
「先生、ありがと。」
「うるせぇ!俺は怒ってんだ。気安く話しかけんじゃねぇ馬鹿野郎。」


プリプリ怒っている先生は、俺達に小さめの丸いキーホルダーをくれた。
プラスチックで出来てるツルンとしたフォルム。
丸いボタンが付いている。


「ボタンを押すとブザーが鳴る。ボタンが押されたら同時に、俺の携帯にブザーが鳴った場所が分かる通知が来るようになってる。防犯に持っとけ。」
「分かりました。」
「うん。先生ありがとう。ニヤニヤしてごめんね。しっかり持っときます。」


色々な人に心配してもらえて、とても有り難い事だなあと感謝し、小さくてツルンとしたお守りを大事に内胸のポケットに閉まった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

処理中です...