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野菜を買いに。

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今日の授業は水玉と火の玉を出す練習をして終わった。
火の玉を出すのは少し加減が難しくて、火力が強過ぎる物にならないよう気を付けないといけない。
火事などに発展しかねないからだ。


授業が終わって帰ってきた。
家で復習をしてみる。
魔法で台所の釜戸の火をつけてみよう。


「ファイア」


ポンッと掌に火の玉が出来る。
注意して、そっと優しく釜戸の燃料に火の玉を移動させる。


「出来た!」


釜戸に火がついている。
メラメラと燃える炎を見ていたら涙が出てきた。
神様に会えて良かったなあ。
僕が魔法を使えるなんて。
本当に信じられない。


屋敷時代は、自力で木を擦って摩擦で火を起こしていた。
朝昼夕とご飯の準備の度に1日3回。
手の皮が剥けることもあった。
今思えば。
家族は魔法が使えたはずだから、僕が火起こししなくても簡単に魔法で火をつける事が出来たはずなんだ。


「やっぱり、嫌われていたんだなあ。」


火を見ていたら色んな事を思い出してしまった。


「しんみりしてても、しょうがないよね。」


せっかく釜戸に火をつけたので料理してみようかな。
屋敷では、火は僕がつけるけど、ご飯はお手伝いさんが作っていた。
皿洗いや台所の掃除などをやりながら、横目で作っている様子を見ていたので、作れそうな料理が幾つかある。

あ、でも食材が無いや。
窓から外を見ると、まだ夕方前のため明るい。

「一旦火を消して、食材買いに行こう。」




露店の八百屋さんに来てみた。
大きなテントの下に野菜が沢山並べてある。
新鮮で美味しそう。
どれにしようか迷うなあ。


「…うーん。」


とまとが美味しそうだなあ。
ちょうど夕陽が当たってて、とまとの色が凄く綺麗に映えている。
僕にも夕陽が当たってて眩しい。


…ん?
夕陽が当たってて眩しい?


「あ…」


まずい。
太陽が落ちてきて日差しに角度がついちゃってる。
テントの下に居ても日に当たってた。
気がつかなかったなあ…
でもまあ昼間じゃないし、夕方だし、あんまり強い日差しじゃないから大丈夫だよね、多分。
とりあえず野菜買って直ぐに帰ろう。


「…あれ?この前爺ちゃんの荷物運んでくれた人じゃん。」
「ああ!髪結いのお店の人!あのときは、ありがとうございました。」


隣で野菜を見ていた人に話しかけられた。
この前、髪を整えてくれた人だ!
僕の事を覚えててくれたんだなあ。


「俺キリーヌって名前。」
「あ、僕はニーニャです。」
「その後、髪はどんなよ?」
「とりあえず石鹸で洗うのは止めました。」


髪の毛のチェックをされる。
毛先まで見られるのは、なんだか恥ずかしいな。


「…うーん…なんか、また痛んでる気がするな。」
「そうですか?」
「今日この後時間あるなら、もっかい洗ってやるよ?最近新しく洗剤仕入れたんで試してみたいんだよな。」
「え、良いんですか?是非!」


あの時、髪を洗って貰ったら凄くサラサラになったし気持ち良かったんだよなあ。
新しい洗剤で洗ってくれるなんて、なんてお得なんだ。


「洗剤が俺の家にあるから、俺ん家で洗って良い?」
「はい!」


野菜を買うのは明日でもいいか。
キリーヌさんの後を着いていった。
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