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REFRAIN
REFRAIN7
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瀾は、シャンパンを舐める程度に口に含むと、そのチェリーの風味に思わず柔らかな表情で言葉をついた。
「美味しい…」
そんな瀾の表情は、堅かった乙の瞳を微かに癒してゆく。
「野中…グラスをここに置いて覗いて見ろ…」
「…え…?」
言葉の意味も解らず、戸惑いながら乙の言う通り、グラスを縁に置くと少ししゃがみグラスを見た。
月の真珠がルビー色の中に収まり、海と月達の間をシャンパンの粒は柔らかい光を放ち、小さな星となってグラスから空へ放たれてゆき、それは幻想的に映る。
「ぁ…夕方の海に星が踊っているみたい…」
ウットリとシャンパングラスを見つめる瀾。
肩肘を付き、寄り掛りながら瀾を見つめ、シャンパンを口にしている乙。
ほんの微かな時間、乙の中で温かく感じた一時だった。
そんな時、瀾は少し俯き口を開く。
「あの…」
「…?」
「月影先輩は…輝李さんと仲がお悪いんですか…」
「…え…」
唐突な質問…。
また、緊迫した空気が二人を包んでいく。
「…ごめんなさい…
何か意味が有るわけじゃなくて…
少し気になったもので…」
「…別に…仲が悪いわけじゃない…
ただ今は…考え方の不一致があるだけだ…」
今の乙には、そういうのが精一杯だった。
自分が招いた罪が今の状況をつくっている。
あのまま、輝李を愛していられていれば…。
いや、彼女達が自分と出会わなければ…。
重苦しい空気が二人を包む。
そんな沈黙を破ったのも、やはり瀾だった。
「ご…ごめんなさい。
な、何だか私のせいで雰囲気を壊してしまって。
せっかく先輩が話し掛けて下さったのに…」
それだけ言うと、瀾はグラスのシャンパンを一気に空ける。
「お、おい!!」
唐突な瀾の行動は乙を動揺させ、思わず声をあげる。
しかし、乙はフッと一瞬辛そうな瞳を見せた。
この空気の中、そんなに飲めもしない瀾が、気を遣った事くらいは充分解っていた。
そんな無茶をさせるほど、気のきかない自分を乙は責めた。
メイド時代も瀾は、乙に気を遣うことの出来る少女だった。
ズキン…
またしても乙の胸に痛みが走る。
いつからこんなに不器用になってしまったのだろうか。
いつもなら、こんな事に患わせられる事もなく、スマートに進められる事も、まるで子供のように上手くいかない。
アルコールが体に走り、フゥっと息を吐くと、瀾は顔を桜色に染め空気を変えた。
「そ、そう言えば輝李さんは、部屋に籠もって何をしてるんでしょうね。
お、お勉強かな?
私が居たら邪魔になるから…」
無理に笑う瀾は、少し痛々しかった。
乙は、フッと辛そうに目を逸らすと仕方ないとばかりに口をついた。
「…パーティーだよ…」
「パー…ティー?
ダンスパーティーは、明日だと聞いていますけど…」
「…そっちじゃない」
「??」
キョトンとする相変わらずの瀾に乙は、溜め息をついてそちらを見るとその言葉をついた。
「…セ●クスだ」
「ッ!!!!」
「いくら純粋でも、その言葉の意味くらいは解るだろ…
わざわざ鍵をかけて、野中を追い出した理由なんて他に何があると思う…?」
「…ぁ…///」
瀾は、桜色の顔を更に赤くして俯くと途端に黙ってしまった。
久方ぶりに見る赤面した瀾は、以前と色褪せる事もなく、初々しさを漂わせていた。
小さな沈黙が流れる中、乙はスッと瀾の手を掬った。
「!!」
「俺達もするか…パーティー…」
「わ、私…そんなつもりじゃ…//」
瀾は顔を真っ赤にして一歩後退り、瞳をそらした。
「美味しい…」
そんな瀾の表情は、堅かった乙の瞳を微かに癒してゆく。
「野中…グラスをここに置いて覗いて見ろ…」
「…え…?」
言葉の意味も解らず、戸惑いながら乙の言う通り、グラスを縁に置くと少ししゃがみグラスを見た。
月の真珠がルビー色の中に収まり、海と月達の間をシャンパンの粒は柔らかい光を放ち、小さな星となってグラスから空へ放たれてゆき、それは幻想的に映る。
「ぁ…夕方の海に星が踊っているみたい…」
ウットリとシャンパングラスを見つめる瀾。
肩肘を付き、寄り掛りながら瀾を見つめ、シャンパンを口にしている乙。
ほんの微かな時間、乙の中で温かく感じた一時だった。
そんな時、瀾は少し俯き口を開く。
「あの…」
「…?」
「月影先輩は…輝李さんと仲がお悪いんですか…」
「…え…」
唐突な質問…。
また、緊迫した空気が二人を包んでいく。
「…ごめんなさい…
何か意味が有るわけじゃなくて…
少し気になったもので…」
「…別に…仲が悪いわけじゃない…
ただ今は…考え方の不一致があるだけだ…」
今の乙には、そういうのが精一杯だった。
自分が招いた罪が今の状況をつくっている。
あのまま、輝李を愛していられていれば…。
いや、彼女達が自分と出会わなければ…。
重苦しい空気が二人を包む。
そんな沈黙を破ったのも、やはり瀾だった。
「ご…ごめんなさい。
な、何だか私のせいで雰囲気を壊してしまって。
せっかく先輩が話し掛けて下さったのに…」
それだけ言うと、瀾はグラスのシャンパンを一気に空ける。
「お、おい!!」
唐突な瀾の行動は乙を動揺させ、思わず声をあげる。
しかし、乙はフッと一瞬辛そうな瞳を見せた。
この空気の中、そんなに飲めもしない瀾が、気を遣った事くらいは充分解っていた。
そんな無茶をさせるほど、気のきかない自分を乙は責めた。
メイド時代も瀾は、乙に気を遣うことの出来る少女だった。
ズキン…
またしても乙の胸に痛みが走る。
いつからこんなに不器用になってしまったのだろうか。
いつもなら、こんな事に患わせられる事もなく、スマートに進められる事も、まるで子供のように上手くいかない。
アルコールが体に走り、フゥっと息を吐くと、瀾は顔を桜色に染め空気を変えた。
「そ、そう言えば輝李さんは、部屋に籠もって何をしてるんでしょうね。
お、お勉強かな?
私が居たら邪魔になるから…」
無理に笑う瀾は、少し痛々しかった。
乙は、フッと辛そうに目を逸らすと仕方ないとばかりに口をついた。
「…パーティーだよ…」
「パー…ティー?
ダンスパーティーは、明日だと聞いていますけど…」
「…そっちじゃない」
「??」
キョトンとする相変わらずの瀾に乙は、溜め息をついてそちらを見るとその言葉をついた。
「…セ●クスだ」
「ッ!!!!」
「いくら純粋でも、その言葉の意味くらいは解るだろ…
わざわざ鍵をかけて、野中を追い出した理由なんて他に何があると思う…?」
「…ぁ…///」
瀾は、桜色の顔を更に赤くして俯くと途端に黙ってしまった。
久方ぶりに見る赤面した瀾は、以前と色褪せる事もなく、初々しさを漂わせていた。
小さな沈黙が流れる中、乙はスッと瀾の手を掬った。
「!!」
「俺達もするか…パーティー…」
「わ、私…そんなつもりじゃ…//」
瀾は顔を真っ赤にして一歩後退り、瞳をそらした。
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