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第四章 新しい国誕生!〜国の設立と同盟〜
4-54 職人魂に火がついて
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翌朝。皆で朝ご飯を食べた後、昨日作業をした場所へと向う。
皆は前日の疲れなんて感じさせないぐらい、良い表情をしていて作業した場所へ着くと、土台枠に流し込んでいた材料が綺麗に全て固まっているのをみて更にやる気を見せる。
見た目でも色が変わっている事で、固まっていると確認が取れるが、ドムじぃーちゃんは念には念をと言って、土台の上に乗って確かめる。
本当に底まで乾燥しているのであれば、上に乗っても沈んだりしないのだいう。
ドムじぃーちゃんは、土台全てに乗って歩いたり、ジャンプしたりして確かめていた。
「ヨシ!全部固まっているなぁー!上出来だ。次の作業に取り組むぞ。」
そう言いながら私達の元へ戻ってきたかと思ったら、鞄の中から本日使う材料と道具を取り出す。
今回使うのは、長さと厚さが異なる5種類の木材だ。
種類と用途ごとに木材を分けていくドムじぃーちゃん。
それを私達はただじっーと見守る。
すると、ヤマブキさんがある事に気付いたようで少し驚いた様子。
ヤマブキさんは、ドムじぃーちゃんが作業を終えるまでひたすら待っていた。
ドムじぃーちゃんが鞄から全ての材料を出し終えると直ぐに質問する。
「あのう、質問してもよろしいですか?」
ヤマブキさんの声にドムじぃーちゃんは頷き、ヤマブキさんはホッとした表情を浮かべて言葉を続けた。
「あのう。今出された木材のうち3種類は、普通は柱や屋根の支えとかに使う木材ですよね?
それをなぜ、床に使うのですか?」
ヤマブキさんの質問に、ドムじぃーちゃんは嬉しそうに答える。
「よく気付いたな。そうだ。この3種類は今お前さんが言った通り、柱や屋根の支えとして使うやつだ。」
そう言って、ドムじぃーちゃんは3種類の木材を手に取った。
どれも固く頑丈そうな木材で、よく見ると長さはどれも一定に切られていて、一部加工までされていた。
「これは、重さにも湿気にも強い木材でな、組み合わせて次第では、簡単な補強で通常の3倍近くの強度を上げるんだ。」
ドムじぃーちゃんの言葉に驚くヤマブキさん。
ヤマブキさんの反応に、ドムじぃーちゃんは何かを感じ取ったようで、更に詳しく説明していく。
「今から使う木材は、どれも耐久性の強いものだ。その上、湿気にも強く火にも強く燃えにくいんだ。
あと、見た目は硬そうに見えるんだが、ある一定の重さが加わると、圧を分散させようとしなやかになるんだ。
そんな特性があるから、俺は床素材にもこの木材をよく利用するんだ。」
そんなドムじぃーちゃんの話を真剣な表情で聞くヤマブキさん。
その反面、他の側近さん達はただただ感心するだけで、さほど興味はないようだった。
とりあえず、説明を終えるとドムじぃーちゃんは次の作業に取り掛かる。
取り出した木々を組み合わせていき、土台と柱の補強と床の設置をするという作業だった。
その作業をしている間に、側近さん達には別の作業をしてもらう事に。
2人組になって手分けして行うものだ。
ひと組は、桟橋の所に行って海水を汲み上げてくる作業で、大ガメ10個分用意するというもので、もうひと組は、外壁内側周辺の土を大ガメ20個分集めることだった。
それも均等に外壁の周り全部だ。
それを聞いてゾッとする側近の皆さん。
もちろん魔法は使っても良いとのこと。
海水も土も、建物作りに使うので必要なものなので、多少多くても問題ないから用意して欲しいとドムじぃーちゃんは説明した。
とりあえず、話し合いで2組に分かれることに。
2組に分かられたら、ドムじぃーちゃんが作業している間に、それぞれ海水と土集めに向かった。
セバしゃんとサリムさんが土集めに。
残りの2人が海水を集めに行った。
二手に分けたのは、黒服の男を警戒しての対策だったようだ。
量が量だけに、皆でした方がいいのだけど、何かあった時が困るのであえて分散したのだった。
それに、気分転換も兼ねての意味もあったようだ。
「ドムじぃーちゃん。土と海水って何に使うの?」
お兄ちゃんがそう質問した。
もちろんそれには、私も頷いた。
すると、ドムじぃーちゃんはニカって微笑むと意地悪そうに答えた。
「へへへっ。さぁー、何に使うと思う?考えてみろ。わからなかったら、教えてやる。」
ドムじぃーちゃんの答えに、私とお兄ちゃんは一生懸命考えた。
海水は、しょっぱくって飲めない。
土は、....。食べれないし...。
????
私とお兄ちゃんが、ゔーんと唸りながら考えているのを楽しそうに見ながら作業をこなすドムじぃーちゃん。
あとっという間に、全ての土台部分に鞄から取り出した木材を設置完了していた。
あとは、床板を貼れば土台部分は完成の様に見えたのだ。
ドムじぃーちゃんは、一旦作業の手を止めて一休みする事にした。
そんなドムじぃーちゃんにお茶を入れるドラしゃん。
他に作業をしているメンバーにも、伝言ドラゴンを飛ばして、休息を取りに戻る様に伝える。
それぞれ汗だくになって戻ってくるメンバー。
皆は魔法を使って作業をしているのかと思いきや、意外にも手作業で作業をしていたようだ。
「魔法を使ってもいいのですが、肝心な時に魔力切れでは話になりませんしね。」
「だからといって、体力切れになっても意味ないぞ?」
サリムさんの言葉に、ドムじぃーちゃんは驚きながらもそう言葉を返した。
皆かなりヘトヘトのようす。
私は【聖獣】に頼んで、涼しい風を起こしてもらった。
少しでも気持ちよく体を休める様にと。
その効果はあった様で、皆の顔から火照り感が消えていく。
皆が休憩している間に、先程の質問の答えをドムじぃーちゃんに教えてもらう事にした。
どう考えても、答えが出なかったので降参したのだ。
「ドムじぃーちゃん。降参です。わかりません。」
お兄ちゃんの素直な解答に、ドムじぃーちゃんは茶化すこともなく、答えを教えてくれた。
「そうか。よし。教えてやる。海水と土は、この建物の床と壁に使うんだ。」
ドムじぃーちゃんの言葉に驚いた。
壁はなんとなく想像はついたが、床?
床って...あの床?
皆の表情に、ドムじぃーちゃんは笑い出した。
「あー。床と壁だ。床板を貼る前に海水に床板を浸しておくんだ。
浸しすぎると腐るが、ある程度加減して浸しておくとカビの繁殖予防になるだ。
特に、ギルドだと素材の解体作業をしたりするだろう?
解体作業場の床板は、特にその一手間を加えるか加えないかによって、痛みの速度が違うんだ。
少しでも、長く持たせようと思うならこの一手間が後々生きてくるんだ。」
ドムじぃーちゃんの言葉に、やはりヤマブキさんが1番早く反応した。
「床板を貼ってから、海水をかけるのでは意味がないのですか?」
ヤマブキさんの言葉に、ドムじぃーちゃんはしっかり返事をかえす。
「あー。それでは意味がない。貼った後だと、片面にしか海水はかからない。
均等に海水を染み込ませないと意味がないんだ。
別に全ての床板にする必要はない。解体作業場の床板のみでも構わない。
しかし、現段階でどの建物が解体作業場になるのか解らないだろ?
そうなると、全ての床板にする必要があるんだ。」
ドムじぃーちゃんの言葉に、ヤマブキさんは真剣に聞き入っていた。
その反応に、ドムじぃーちゃんの職人魂に火を付けてしまった。
「あと、しぃーと言えば。海水を浸して乾き切る前に、粘土質の土を薄く塗ってやるとまたもちが良くなるんだ。」
ドムじぃーちゃんのこの言葉に、またまた食いつくヤマブキさん。
「それは、なんでですか?」
「気になるか?」
「はい。」
「なら、教えてやる。ここの土地の土は、他の国とは違ってとても質の良い土なんだ。
しかも、粘土質の土となれば一級品だ。虫食い予防にもなるし、防臭効果もあるんだ。」
ドムじぃーちゃんの話に火がともりかけた。
このままでは、まずいと感じた時だった。
「グーっキュルルル。」
いいタイミングで、私のお腹の虫が鳴いたのだ。
その音を聞いて、ドムじぃーちゃんの話はすぐに中断した。
私は顔を真っ赤にして鳴り続けるお腹をさする。
「こりゃ可愛い音だな。朝ご飯食べるの早かったからな。そりゃ~腹も減るわな。」
ドムじぃーちゃんは、豪快に笑いながら私の頭を撫でてくれた。
『では、このまま昼休憩と致しましょう。皆さん一度屋敷に戻りましょうか。』
ドラしゃんの一言で、昼ご飯を食べに皆で一度宿へ戻る事にしたのだった。
私のお腹の虫の音を合図に、昼ご飯を食べてゆっくり体を休める事になった。
魔法を使いながら、土台部分を粗完成させたドムじぃーちゃんはともかく、海水の水汲みや土集めをしていた側近の皆さんは、半日の作業でかなり体に答えている様だった。
なんせ、箸を持つ手が皆震えていたからだ。
それを見て、ドラしゃんとドムじぃーちゃんは午後からは休む様に伝えたが、皆は作業を続けると言ったのだった。
「いいえ。作業は続けます。」
「そうです。そうでなくても、作業に時間がかかってますから。」
「まだまだいけます。」
「ご心配には及びません。」
そう口々に言うものの、普段の彼らの仕事とは違った事をしているので、体は正直だった。
「今無理をしても、いい事はないぞ。
まだまだ、やる事はあるんだ。無理して、明日や明後日使い物にならん様になる方が困るぞ。」
『そうですね。とにかく、今日はこのままお風呂に入ってその体を休める事が、あなた方の仕事です。
残りの作業は、私どもでしておきますのでご心配なく。』
ドムじぃーちゃんドラドラしゃんに言われて、渋々引き下がる4人だった。
昼ご飯を食べ終えると、4人を宿に残して私達は作業の続きをしに行った。
側近さん達がしていた作業のうち、海水集めはドラしゃんがあっという間に終わらせた。
土集めはと言うと、私とお兄ちゃん。
そして、【聖獣】達で行ったのはいいのだが...。
予想通り。
皆土まみれとなったのだ。
「おいおい。土遊びをしろとは言ってないぞ。」
「遊ぶつもりはないんですよ..。ただ...。」
「土がすごいの。」
お兄ちゃんと私の言い分は、見ていたドムじぃーちゃんはよく分かっていた。
やっと仕事を貰えたと張り切った【聖獣】達が悪いのだった。
張り切りすぎて、土埃を盛大にたてたのだった。
そのおかげで、私もお兄ちゃんも【聖獣】達も頭の先から足の先まで土まみれとなったのだ。
まぁ~、その甲斐もあったのか用意されていた大ガメ全て集める事ができたのだった。
もちろん採取した場所は、【聖獣】の力で元に戻っていた。
「よし。全部集まったな。なら、この器に海水を半分だけ入れてくれ。」
そう言って、ドムじぃーちゃんが鞄から取り出したのは四角形の細長いトレイの様な器だった。
少し深みのある器。
その器の半分を目安にドラしゃんは、汲んできた海水を入れた。
海水が入ると、その中に床板用の板を数枚ずつドムじぃーちゃんは沈めて行った。
沈めた板の色と気泡を目安に、職人の勘を働かせて沈めた板を取り出しては乾かして。
次の板を沈めると言った作業をひたすら繰り返していた。
こうして、床板用に用意していた板を全て海水に浸し終わると完全に乾き切る前に、土台へ貼り付け作業に取り掛かったのだった。
「どうして、乾く前にするの?」
お兄ちゃんの質問に、ドムじぃーちゃんは体を動かしながらも答えてくれた。
「完全に乾きっ切ってから貼り付けていたら、今度は割れる可能性があるんだ。
完全に乾く前の方が、板にしなりがあって貼りやすいんだ。
まぁ~、貼り付けるときもキツキツにすると乾いた時に大変だから、少し気持ちゆとりを持って貼り付けするのがコツだ。」
そう言いながらも、ドムじぃーちゃんの手は素早く動いていた。
板一枚一枚がぴっちりくっついている様に見えるが、乾いた時の事を予想してパツパツにならない様に貼り付けてあったのだ。
これこそまさに、職人技。
私とお兄ちゃんは、目を輝かせてドムじぃーちゃんの作業をひたすら見ていたのだった。
その間、ドラしゃんは土まみれになっている【聖獣】達を綺麗にしてくれていたのだった。
そんな事も気に留める事なく、私とお兄ちゃんはずーっとドムじぃーちゃんの作業を見ていたのだ。
魔法で浮かせた板は、一枚貼り付けが完了する度に、次のポイントに示し合わせた様に設置されていくのだった。
その作業をしながらも、私達が集めた土を土の種類ごとに分けて、粘土質の土のみ別容器に移して海水と混ぜ合わせていたのだった。
海水と混ぜ合わせた土を貼り付けた板の上に、パックをするかのように薄く伸ばしながら塗っているのだった。
全てドムじぃーちゃんが魔法で行っている。
なんとこの作業、日が暮れる前には全て完了したのだった。
余った土と海水は、今度壁にも使うのでとりあえずそのまま置いておく事にした。
今日の作業は、ここまでにして周りに簡易の結界をドラしゃんが張り、私達は宿へと戻ったのだった。
宿に戻ると、側近の皆さんが手分けして夕食の準備をしていたのだ。
と言っても、お膳の用意のみ。
あとは、お風呂も自分達が入った後掃除をして、新しく湯を入れ直してくれていたのだった。
ドラしゃんは、私とお兄ちゃんをドムじぃーちゃんに預けて、先に3人でお風呂に入る様に言われた。
もちろん【聖獣】達も着いて来たのだった。
私達がお風呂に入っている間に、夕食の支度をしておくとドラしゃんに言われたので、ドムじぃーちゃんは私とお兄ちゃんを小脇に抱えて風呂場へと直行したのだ。
私とお兄ちゃんは、初めてドムじぃーちゃんと3人でお風呂に入った。
【聖獣】達のおまけ付きだが、大いに盛り上がった。
互いに洗い合いっこしたり、お湯の掛け合いしたりと、痺れを切らしたドラしゃんが怒鳴りに来るまで楽しんだのだった。
そのせいで、夕食中ひたすらドラしゃんの小言を聞きながらの食事となったのだった。
リン:
ドムじぃーちゃんとのお風呂も楽しかったね^ ^
アキラ:
そうだね^ ^
できたら、また一緒に入りたいよね^ ^
リン:
ドムじぃーちゃん、ツノ作るの上手だよね♪
アキラ:
職人技だったね^ ^
リン:
ドラしゃんには怒られたけどね
仕方がないよね
アキラ:
リンは強いよ。
皆は前日の疲れなんて感じさせないぐらい、良い表情をしていて作業した場所へ着くと、土台枠に流し込んでいた材料が綺麗に全て固まっているのをみて更にやる気を見せる。
見た目でも色が変わっている事で、固まっていると確認が取れるが、ドムじぃーちゃんは念には念をと言って、土台の上に乗って確かめる。
本当に底まで乾燥しているのであれば、上に乗っても沈んだりしないのだいう。
ドムじぃーちゃんは、土台全てに乗って歩いたり、ジャンプしたりして確かめていた。
「ヨシ!全部固まっているなぁー!上出来だ。次の作業に取り組むぞ。」
そう言いながら私達の元へ戻ってきたかと思ったら、鞄の中から本日使う材料と道具を取り出す。
今回使うのは、長さと厚さが異なる5種類の木材だ。
種類と用途ごとに木材を分けていくドムじぃーちゃん。
それを私達はただじっーと見守る。
すると、ヤマブキさんがある事に気付いたようで少し驚いた様子。
ヤマブキさんは、ドムじぃーちゃんが作業を終えるまでひたすら待っていた。
ドムじぃーちゃんが鞄から全ての材料を出し終えると直ぐに質問する。
「あのう、質問してもよろしいですか?」
ヤマブキさんの声にドムじぃーちゃんは頷き、ヤマブキさんはホッとした表情を浮かべて言葉を続けた。
「あのう。今出された木材のうち3種類は、普通は柱や屋根の支えとかに使う木材ですよね?
それをなぜ、床に使うのですか?」
ヤマブキさんの質問に、ドムじぃーちゃんは嬉しそうに答える。
「よく気付いたな。そうだ。この3種類は今お前さんが言った通り、柱や屋根の支えとして使うやつだ。」
そう言って、ドムじぃーちゃんは3種類の木材を手に取った。
どれも固く頑丈そうな木材で、よく見ると長さはどれも一定に切られていて、一部加工までされていた。
「これは、重さにも湿気にも強い木材でな、組み合わせて次第では、簡単な補強で通常の3倍近くの強度を上げるんだ。」
ドムじぃーちゃんの言葉に驚くヤマブキさん。
ヤマブキさんの反応に、ドムじぃーちゃんは何かを感じ取ったようで、更に詳しく説明していく。
「今から使う木材は、どれも耐久性の強いものだ。その上、湿気にも強く火にも強く燃えにくいんだ。
あと、見た目は硬そうに見えるんだが、ある一定の重さが加わると、圧を分散させようとしなやかになるんだ。
そんな特性があるから、俺は床素材にもこの木材をよく利用するんだ。」
そんなドムじぃーちゃんの話を真剣な表情で聞くヤマブキさん。
その反面、他の側近さん達はただただ感心するだけで、さほど興味はないようだった。
とりあえず、説明を終えるとドムじぃーちゃんは次の作業に取り掛かる。
取り出した木々を組み合わせていき、土台と柱の補強と床の設置をするという作業だった。
その作業をしている間に、側近さん達には別の作業をしてもらう事に。
2人組になって手分けして行うものだ。
ひと組は、桟橋の所に行って海水を汲み上げてくる作業で、大ガメ10個分用意するというもので、もうひと組は、外壁内側周辺の土を大ガメ20個分集めることだった。
それも均等に外壁の周り全部だ。
それを聞いてゾッとする側近の皆さん。
もちろん魔法は使っても良いとのこと。
海水も土も、建物作りに使うので必要なものなので、多少多くても問題ないから用意して欲しいとドムじぃーちゃんは説明した。
とりあえず、話し合いで2組に分かれることに。
2組に分かられたら、ドムじぃーちゃんが作業している間に、それぞれ海水と土集めに向かった。
セバしゃんとサリムさんが土集めに。
残りの2人が海水を集めに行った。
二手に分けたのは、黒服の男を警戒しての対策だったようだ。
量が量だけに、皆でした方がいいのだけど、何かあった時が困るのであえて分散したのだった。
それに、気分転換も兼ねての意味もあったようだ。
「ドムじぃーちゃん。土と海水って何に使うの?」
お兄ちゃんがそう質問した。
もちろんそれには、私も頷いた。
すると、ドムじぃーちゃんはニカって微笑むと意地悪そうに答えた。
「へへへっ。さぁー、何に使うと思う?考えてみろ。わからなかったら、教えてやる。」
ドムじぃーちゃんの答えに、私とお兄ちゃんは一生懸命考えた。
海水は、しょっぱくって飲めない。
土は、....。食べれないし...。
????
私とお兄ちゃんが、ゔーんと唸りながら考えているのを楽しそうに見ながら作業をこなすドムじぃーちゃん。
あとっという間に、全ての土台部分に鞄から取り出した木材を設置完了していた。
あとは、床板を貼れば土台部分は完成の様に見えたのだ。
ドムじぃーちゃんは、一旦作業の手を止めて一休みする事にした。
そんなドムじぃーちゃんにお茶を入れるドラしゃん。
他に作業をしているメンバーにも、伝言ドラゴンを飛ばして、休息を取りに戻る様に伝える。
それぞれ汗だくになって戻ってくるメンバー。
皆は魔法を使って作業をしているのかと思いきや、意外にも手作業で作業をしていたようだ。
「魔法を使ってもいいのですが、肝心な時に魔力切れでは話になりませんしね。」
「だからといって、体力切れになっても意味ないぞ?」
サリムさんの言葉に、ドムじぃーちゃんは驚きながらもそう言葉を返した。
皆かなりヘトヘトのようす。
私は【聖獣】に頼んで、涼しい風を起こしてもらった。
少しでも気持ちよく体を休める様にと。
その効果はあった様で、皆の顔から火照り感が消えていく。
皆が休憩している間に、先程の質問の答えをドムじぃーちゃんに教えてもらう事にした。
どう考えても、答えが出なかったので降参したのだ。
「ドムじぃーちゃん。降参です。わかりません。」
お兄ちゃんの素直な解答に、ドムじぃーちゃんは茶化すこともなく、答えを教えてくれた。
「そうか。よし。教えてやる。海水と土は、この建物の床と壁に使うんだ。」
ドムじぃーちゃんの言葉に驚いた。
壁はなんとなく想像はついたが、床?
床って...あの床?
皆の表情に、ドムじぃーちゃんは笑い出した。
「あー。床と壁だ。床板を貼る前に海水に床板を浸しておくんだ。
浸しすぎると腐るが、ある程度加減して浸しておくとカビの繁殖予防になるだ。
特に、ギルドだと素材の解体作業をしたりするだろう?
解体作業場の床板は、特にその一手間を加えるか加えないかによって、痛みの速度が違うんだ。
少しでも、長く持たせようと思うならこの一手間が後々生きてくるんだ。」
ドムじぃーちゃんの言葉に、やはりヤマブキさんが1番早く反応した。
「床板を貼ってから、海水をかけるのでは意味がないのですか?」
ヤマブキさんの言葉に、ドムじぃーちゃんはしっかり返事をかえす。
「あー。それでは意味がない。貼った後だと、片面にしか海水はかからない。
均等に海水を染み込ませないと意味がないんだ。
別に全ての床板にする必要はない。解体作業場の床板のみでも構わない。
しかし、現段階でどの建物が解体作業場になるのか解らないだろ?
そうなると、全ての床板にする必要があるんだ。」
ドムじぃーちゃんの言葉に、ヤマブキさんは真剣に聞き入っていた。
その反応に、ドムじぃーちゃんの職人魂に火を付けてしまった。
「あと、しぃーと言えば。海水を浸して乾き切る前に、粘土質の土を薄く塗ってやるとまたもちが良くなるんだ。」
ドムじぃーちゃんのこの言葉に、またまた食いつくヤマブキさん。
「それは、なんでですか?」
「気になるか?」
「はい。」
「なら、教えてやる。ここの土地の土は、他の国とは違ってとても質の良い土なんだ。
しかも、粘土質の土となれば一級品だ。虫食い予防にもなるし、防臭効果もあるんだ。」
ドムじぃーちゃんの話に火がともりかけた。
このままでは、まずいと感じた時だった。
「グーっキュルルル。」
いいタイミングで、私のお腹の虫が鳴いたのだ。
その音を聞いて、ドムじぃーちゃんの話はすぐに中断した。
私は顔を真っ赤にして鳴り続けるお腹をさする。
「こりゃ可愛い音だな。朝ご飯食べるの早かったからな。そりゃ~腹も減るわな。」
ドムじぃーちゃんは、豪快に笑いながら私の頭を撫でてくれた。
『では、このまま昼休憩と致しましょう。皆さん一度屋敷に戻りましょうか。』
ドラしゃんの一言で、昼ご飯を食べに皆で一度宿へ戻る事にしたのだった。
私のお腹の虫の音を合図に、昼ご飯を食べてゆっくり体を休める事になった。
魔法を使いながら、土台部分を粗完成させたドムじぃーちゃんはともかく、海水の水汲みや土集めをしていた側近の皆さんは、半日の作業でかなり体に答えている様だった。
なんせ、箸を持つ手が皆震えていたからだ。
それを見て、ドラしゃんとドムじぃーちゃんは午後からは休む様に伝えたが、皆は作業を続けると言ったのだった。
「いいえ。作業は続けます。」
「そうです。そうでなくても、作業に時間がかかってますから。」
「まだまだいけます。」
「ご心配には及びません。」
そう口々に言うものの、普段の彼らの仕事とは違った事をしているので、体は正直だった。
「今無理をしても、いい事はないぞ。
まだまだ、やる事はあるんだ。無理して、明日や明後日使い物にならん様になる方が困るぞ。」
『そうですね。とにかく、今日はこのままお風呂に入ってその体を休める事が、あなた方の仕事です。
残りの作業は、私どもでしておきますのでご心配なく。』
ドムじぃーちゃんドラドラしゃんに言われて、渋々引き下がる4人だった。
昼ご飯を食べ終えると、4人を宿に残して私達は作業の続きをしに行った。
側近さん達がしていた作業のうち、海水集めはドラしゃんがあっという間に終わらせた。
土集めはと言うと、私とお兄ちゃん。
そして、【聖獣】達で行ったのはいいのだが...。
予想通り。
皆土まみれとなったのだ。
「おいおい。土遊びをしろとは言ってないぞ。」
「遊ぶつもりはないんですよ..。ただ...。」
「土がすごいの。」
お兄ちゃんと私の言い分は、見ていたドムじぃーちゃんはよく分かっていた。
やっと仕事を貰えたと張り切った【聖獣】達が悪いのだった。
張り切りすぎて、土埃を盛大にたてたのだった。
そのおかげで、私もお兄ちゃんも【聖獣】達も頭の先から足の先まで土まみれとなったのだ。
まぁ~、その甲斐もあったのか用意されていた大ガメ全て集める事ができたのだった。
もちろん採取した場所は、【聖獣】の力で元に戻っていた。
「よし。全部集まったな。なら、この器に海水を半分だけ入れてくれ。」
そう言って、ドムじぃーちゃんが鞄から取り出したのは四角形の細長いトレイの様な器だった。
少し深みのある器。
その器の半分を目安にドラしゃんは、汲んできた海水を入れた。
海水が入ると、その中に床板用の板を数枚ずつドムじぃーちゃんは沈めて行った。
沈めた板の色と気泡を目安に、職人の勘を働かせて沈めた板を取り出しては乾かして。
次の板を沈めると言った作業をひたすら繰り返していた。
こうして、床板用に用意していた板を全て海水に浸し終わると完全に乾き切る前に、土台へ貼り付け作業に取り掛かったのだった。
「どうして、乾く前にするの?」
お兄ちゃんの質問に、ドムじぃーちゃんは体を動かしながらも答えてくれた。
「完全に乾きっ切ってから貼り付けていたら、今度は割れる可能性があるんだ。
完全に乾く前の方が、板にしなりがあって貼りやすいんだ。
まぁ~、貼り付けるときもキツキツにすると乾いた時に大変だから、少し気持ちゆとりを持って貼り付けするのがコツだ。」
そう言いながらも、ドムじぃーちゃんの手は素早く動いていた。
板一枚一枚がぴっちりくっついている様に見えるが、乾いた時の事を予想してパツパツにならない様に貼り付けてあったのだ。
これこそまさに、職人技。
私とお兄ちゃんは、目を輝かせてドムじぃーちゃんの作業をひたすら見ていたのだった。
その間、ドラしゃんは土まみれになっている【聖獣】達を綺麗にしてくれていたのだった。
そんな事も気に留める事なく、私とお兄ちゃんはずーっとドムじぃーちゃんの作業を見ていたのだ。
魔法で浮かせた板は、一枚貼り付けが完了する度に、次のポイントに示し合わせた様に設置されていくのだった。
その作業をしながらも、私達が集めた土を土の種類ごとに分けて、粘土質の土のみ別容器に移して海水と混ぜ合わせていたのだった。
海水と混ぜ合わせた土を貼り付けた板の上に、パックをするかのように薄く伸ばしながら塗っているのだった。
全てドムじぃーちゃんが魔法で行っている。
なんとこの作業、日が暮れる前には全て完了したのだった。
余った土と海水は、今度壁にも使うのでとりあえずそのまま置いておく事にした。
今日の作業は、ここまでにして周りに簡易の結界をドラしゃんが張り、私達は宿へと戻ったのだった。
宿に戻ると、側近の皆さんが手分けして夕食の準備をしていたのだ。
と言っても、お膳の用意のみ。
あとは、お風呂も自分達が入った後掃除をして、新しく湯を入れ直してくれていたのだった。
ドラしゃんは、私とお兄ちゃんをドムじぃーちゃんに預けて、先に3人でお風呂に入る様に言われた。
もちろん【聖獣】達も着いて来たのだった。
私達がお風呂に入っている間に、夕食の支度をしておくとドラしゃんに言われたので、ドムじぃーちゃんは私とお兄ちゃんを小脇に抱えて風呂場へと直行したのだ。
私とお兄ちゃんは、初めてドムじぃーちゃんと3人でお風呂に入った。
【聖獣】達のおまけ付きだが、大いに盛り上がった。
互いに洗い合いっこしたり、お湯の掛け合いしたりと、痺れを切らしたドラしゃんが怒鳴りに来るまで楽しんだのだった。
そのせいで、夕食中ひたすらドラしゃんの小言を聞きながらの食事となったのだった。
リン:
ドムじぃーちゃんとのお風呂も楽しかったね^ ^
アキラ:
そうだね^ ^
できたら、また一緒に入りたいよね^ ^
リン:
ドムじぃーちゃん、ツノ作るの上手だよね♪
アキラ:
職人技だったね^ ^
リン:
ドラしゃんには怒られたけどね
仕方がないよね
アキラ:
リンは強いよ。
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そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中
あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。
結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。
定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。
だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。
唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。
化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。
彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。
現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。
これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
優の異世界ごはん日記
風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。
ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。
未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。
彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。
モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
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