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第二章 歩み〜生活基盤を整えましょう〜
2-9 装飾工房を作ろう
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皆が予想していたよりも時間が余ってしまいどうするか悩んでいたら、ルミばぁーちゃんからある提案があがった。
「時間がまだあるんなら私とユイカで工房を作ろうかと思うんだがどうだい?」
そのルミばぁーちゃんの提案にお母さんは驚く。お父さんはともかくなぜ自分も?という気持ちが大きかったからだろう。
お父さん達はその提案に乗り気でお母さんを後押しする。
「母さん!やってみたら?
リンとアキラは私達で見てるから。ついでに夕飯の準備もしておくよ。
時間は気にせずゆっくりしておいでよ。」
お父さんの言葉にドラしゃんも賛成する。
『こちらは心配ありません。ドムとラミィーさえ置いて行って頂けたらありがたいです。
でも、工房を作るのであればドム程ではないですが、ムキファーとロドムカを連れて行ってください。
それなりに使えますから存分にこき使って下さい。』
ドラしゃんの言葉にムキじぃーちゃんとロドじぃーちゃんは異議を申し立てようとしたがドラしゃんの冷視線で諦める。
「皆がそこまで言ってくれるなら...やってみようかしら?」
お母さんはそう言ってルミばぁーちゃん、ムキじぃーちゃん、ロドじぃーちゃんと一緒に工房造りにに向かって行った。
お父さん達の視界から外れたどこまで来たらルミばぁーちゃんが足を止める。
そんなルミばぁーちゃんにお母さんは不思議そうに声をかけようとしたら、ルミばぁーちゃんが何か呪文を唱え出したではないか。
1人焦るお母さん。ロドじぃーちゃんやムキじぃーちゃんは普通に構えているどころか呑気にしている。
どうしようか悩んでいるお母さんにムキじぃーちゃんが声を掛ける。
「おいおい、落ち着いたらいいぜ。歩いて行くのもいいが時間がもったいねぇーから移動魔法を使うんだ。足元の魔法陣から動くなよ。」
それ言われたのでゆっくり足元をみると...?!!見たことない模様が描かれた円陣があるではないか。(いつのまに)
お母さんは取り敢えず状況に身を任せる事を選んだ。
ルミばぁーちゃんが呪文を唱え終えると眩しい光が足元から照らす。
思わず目を閉じると...少し体が浮く感じがした。
次に目を開けるとお父さん達が建てた工房が目の前にあった。
「凄いわ!どうやったの?!あっという間に!えっ!わぁー!!」
お母さんは感嘆の声をあげる。
そんなお母さんにルミばぁーちゃんは苦笑いをしていた。
ルミばぁーちゃんからしたら初歩的な魔法でここまで喜んでくれるのだか心情複雑だったみたい。
「ある程度経験を積み魔力がありゃ~出来る様になるさ。いずれ必要になったら教えてやるよ。」
ルミばぁーちゃんの言葉にお母さんはさらに喜ぶ。
その姿をルミばぁーちゃん達は子供を見る親の心境でお母さんを見つめていた。
お母さんはルミばぁーちゃんの申し出に素直に喜び
「その時はよろしくお願いします。」
と言ってルミばぁーちゃんの両手をとりぶんぶんと振り回す。
お母さんのその仕草をみてムキじぃーちゃん達は"リンとアキラの親だけあってよく似てるわ"と呟いていたのだが...どうやらその呟きはお母さんの耳には届いてなかったようだ。
「ところで工房ってどんなのをつくるんですか?」
お母さんはルミばぁーちゃんの手を握ったまま質問する。
お母さんの質問に困惑した表情のままルミばぁーちゃんは答える。
「ちょっと...落ち着きなって。あんた裁縫とか得意なんだって?フレアからきいたよ。どうなんだい??」
ルミばぁーちゃんは前もってドラしゃんから情報を得ていたがあえてお母さんに直接確認する。
お母さんはまだルミばぁーちゃんの手を掴んだまま考えごとをしてから質問に答える。
「うーーん...得意と言うほどではないですが一応はできます。私やお父さん、アキラやリンが身につけたり、家で使う小物や服はよく私が作ってました。でも...得意なのはアクセサリーの方ですかね。」
お母さんの回答にルミばぁーちゃんは器用に片眉だけあげてお母さんを見つめるので、お母さんは自分の身に付けているアクセサリー類を見せながら説明する。
「えっとですね...このネックレスやブレスレットは私の手作りです。あと、リンのヘアゴム...髪留めはわたしが作ってます。今まではこんな感じのを何種類か作って販売して家計の足しにしてました。」
お母さんがそう言うとルミばぁーちゃんは身に付けているアクセサリーを一つ一つ確認していく。
今お母さんが身に付けているものは日本で作ったものなので、パーツも上質で綺麗なものばかり。
お母さんは手先が器用なので裁縫も上手だが、どちらかと言うとアクセサリーなどの小物を作る方が得意。
使う資材も安く、見栄えがよく、丈夫なものを選んでは上品質な作品を作り上げていく。
そのため金額的はかなりお安くできているのだが...販売するとかなりの高値をつけて購入する人がいる。
(お母さんは材料費と手間賃代で販売してるんだけど安すぎる!!ってお客さんの方から値段を釣り上げていくことが多いのだ。)
「店を構えるほど作る量も多くはなかったんですが、子育てと家事の合間で楽しみながらしてたので辞められなかったんです。
実はここに来てもドラしゃんにお願いして、以前使っていた道具を用意してもらって時々作ってるんです。」
そう言うと、服のポケットに入れていた一つのブレスレットをルミばぁーちゃんに手渡す。
これもかなり精密に出来ておりデザインも素敵なもの。
大金貨10枚、いやそれ以上の値をつけても売れそうな出来栄えなのだ。
ルミばぁーちゃんはお母さんから手渡されたブレスレットをマジマジと見て質問する。
「この...光っているのは宝石かい?」
ルミばぁーちゃんの言葉にロドじぃーちゃんやムキじぃーちゃんも気になったのだろう、ルミばぁーちゃんの手元を覗く。
「そんな!豪華な物使いませんよ。
これは、ガラスを薄く加工した"ビーズ"って言うのを使ってます。安くて加工しやすいんです。」
それを聞いてルミばぁーちゃんは、ますますお母さんに興味を抱く。
「この世界にはあんたが付けてるような物はないんだよ。
あっても、宝石を使った華やかな物で庶民には手が出せない。
派手な装飾品は貴族や皇族のみが身につけてるんだよ。
庶民はきのみや木を加工したものを身に付けてるだよね。
でも...あんたが作るのは庶民でもつけれそうなものだ。どの世界でも女は少しでも綺麗になりたいもんさぁ。その手伝いをしてくれんかい?あんたのその才能はこの世界で貴重だよ。」
ルミばぁーちゃんはお母さんを見た時から考えていたらしく、密かに色々と計画を練っていたのだ。
貴族向けでなく庶民でも気軽に付けれる物を作れるのではないかと思ってね。
案の定、お母さんの身に付けているものは庶民が身に付けても貴族が身に付けるものほど派手さはないが、この世界の庶民の女性にしたら喜ばしいことだ。
絶対にこれは"売れる!!"ルミばぁーちゃんの商人としての勘がそう訴えてくるのだった。
新しいものを自分の目で見てみたい。これをこの世界に広めていきたい!!
それは自分が元商業ギルドマスターだからもあるが、商人としての自分の魂が燃えている。
ルミばぁーちゃんの言葉にお母さんは涙をこぼす。これは嬉しい涙なのだが、ルミばぁーちゃん達は慌てる。
自分の才能を認められたのもあったが、この世界でも自分が家族を支えていけると言う保証を貰えたから自然と涙が溢れたのだった。
急に泣き出したお母さんにムキじぃーちゃん達は焦り、必死に宥める。
「どうしてんだ?!腹がいたいのか?
それとも、ババァーが何か酷いこと言ったか?」
「ババァーの顔がこわかったのか?大丈夫じゃ。お前さんは歳いってもあそこまで皺まみれのババァーにはならんぞ。」
ムキじぃーちゃん、ロドじぃーちゃんは、それぞれお母さんを泣き止まそうと喋るが墓穴を掘ることを忘れないのがさすがだ。
ムキじぃーちゃん、ロドじぃーちゃんはもれなくルミばぁーちゃんの鉄拳をお見舞いされ地面に倒れる。
お母さんは嬉しさと面白さで益々涙が止まらなくなった。
「ちょっ...違います。私...嬉しくって...。どうにか、なるって自分にも...家族にも...言い聞かせていたけど...。不安だったんです...。でも...ルミばぁーちゃんが....。」
お母さんは懸命に涙を拭きながら自分の気持ちを伝えるのだが...笑いながらなものでちゃんと伝わったか不明。
そんなお母さんをルミばぁーちゃんは優しく抱きしめ
「なんだい、そんな事かい。心配させんじゃないよ。泣きたかったら泣きな。そうだよね。あんたは母親だもんね。子供等の前では泣けないわ。アンタは立派だよ。自信持ちなさい。十分、この世界でも生活できるさぁ。
今度は私らも居るんだ。安心しな。」
お母さんの背中を優しく摩りながら声をかける。
お母さんはルミばぁーちゃんの優しさに甘えて、しっかりとしがみついて思う存分泣いた。
それをムキじぃーちゃんとロドじぃーちゃんはタンコブを摩りながら見守っていた。
お母さんがひとしきり泣いて落ち着いたのを見計らって、ルミばぁーちゃんは本題を話し出しす。
「落ち着いたかい。じぁー、話を戻すよ。この工房の横に新しい工房をつくるよ。
店主はあくまでもアンタ。ユイカだよ。私はサポート役だ。アンタがしたい店をここに建てるよ。」
ルミばぁーちゃんは泣きやんだお母さんに笑顔を向けて話をする。
「私の店?ですか?」
お母さんは信じられない様子でルミばぁーちゃんを見つめるとルミばぁーちゃんは頷く。
「私も一応、元商業ギルドマスター。それに職人でもあるだよ。職人として技術に限界を感じてね、元々得意だった魔法を活かして冒険者になったくちなんだよ。
だから、アンタのサポートぐらいは出来るつもりではいるよ。
アンタの世界の技術と私らの世界の技術を使って、誰も見たことのない物を作って見ようじゃないかい。
できたら庶民でも気軽に買えて使えるものがいいがね。
高そうなのは貴族共にふっかけりゃいいさぁ。」
そう話すルミばぁーちゃんの顔はどことなく悪徳商人の顔に一瞬見えたのだが...誰もそれについては触れない。
「店の運営はアンタのペースでやればいい。今は、子供達が小さいからゆっくりで十分だ。
しかし、子供達はいつまでも小さいままじゃーないさ。ある程度大きくなったら本格的に商売したらいい。それぐらいの腹づもりでやりゃーいいさ。」
ルミばぁーちゃんの言葉にお母さんは嬉しさで言葉が出なかった。
ルミばぁーちゃんに再度抱きつき耳元で感謝の言葉を伝えた。
"ありがとう"
お母さんの言葉を聞いたルミばぁーちゃんは、返事に優しくお母さんの頭を撫でた。
一応話が纏まり工房をどのように造るかと言う話に切り替わった。
お母さんは地面に棒を使って自分が理想とする店の絵を描き出す。
それをルミばぁーちゃん、ロドじぃーちゃん、ムキじぃーちゃんは静かに眺める。
お母さんは"ここがあーで"、"これがそーで"と自分の考えを口に出して説明しながら描いていく。
「お前さん、絵もうまいじゃないかい。」
「凄いな。わかりやすい。」
「ユウダイといいユイカも発想豊かじゃのう。」
お母さんが地面に描いた物はこの世界にはない感じの間取りで描かれていたので、ムキじぃーちゃん達は感心する。
温かみのある木造建の建物なのだが、二階建てで作業部屋、保管場所、販売場所、休憩室など用途ごとに空間を区切られていている。
女性らしさが滲み出ていて細かい部分まで配慮されたものなのだが...少し気になることがあったようでルミばぁーちゃんが口を挟む。
「ちょいと、倉庫はどうするんだい?材料とかはどこに置くんだい?」
ルミばぁーちゃんは倉庫がないのに気付きお母さんに確認する。
大体の工房には材料を保管する倉庫を備えている。
大体の倉庫は一部屋まるまる使っている事が多いのだが...お母さんが描く中にはそれが見当たらないのだ。
それを聞いてお母さんは驚いたのだった。材料は大体棚やケースに保管していたので、そこまでの大きな規模の保管場所がいるとは思っていない。
どうしようかと悩んでいたら、ロドじぃーちゃんが案をだす。
「それなら地下に倉庫を作ればいいじゃねか?作品も大量に作成して保管する場所もいるだろうからなぁ。」
「それいいじゃないか。たまにはいいこと言うじゃないかい。」
2人の意見にお母さんは焦る。
自分1人で作るなら作れる量は限られてくるので、そこまで大掛かりな保管場所は必要ないと思う。
慌てているお母さんを見てルミばぁーちゃんは微笑しながら
「安心おしよ。今はアンタ1人かもしれないけど、これから従業員や弟子を雇えばこれでも狭い方だよ。基礎さえ作っておけば後々手直しはいくらでもできるから心配しなさんな。」
どうやらルミばぁーちゃんは店や保管場所が狭すぎるのをあ母さんが心配しているものだと思っているみたいなのだが...まぁ~ルミばぁーちゃんがそう言うならお任せしておこうと思い直す。
これで建物の作りも決まったので早速作業に取り組む事に。
建物の大きさはルミばぁーちゃんの意見でお母さんが描いた絵を元に作っておいおい手直していくことにした。
ルミばぁーちゃんはお母さんの絵を元に大体の大きさをムキじぃーちゃんとロドじぃーちゃんに伝えて建物の土台を作るよう命じる。
「じゃーちゃっちゃかつくるわよ!あっ!地下倉庫作るのを忘れるんじゃないわよ!」
ルミばぁーちゃんの怒号にムキじぃーちゃん達はハイハイと言って地面に魔力を流して倉庫に出来るように地面を深めに掘り下げていく。
空間を確保できたら魔法で固めていく。
地下倉庫の外側は硬めの鉱石素材の壁に。内側はお母さんの希望で木の壁に。
倉庫へ行く出入り口も作り土台はあっという間に完成。
土台ができたのを確認してルミばぁーちゃんが、その上に建物の骨組みを魔法で造っていく。
骨組みを造るとお母さんを呼び寄せる。
「ここからは、アンタの出番だよ。私ので手を握りな。私も手伝ってあげるから、建物の肉付けをして行くよ。ついでに、細かい内装も仕上げていこうかね。」
お母さんはルミばぁーちゃんが差し出した手を両手で握る。
今日はよくルミばぁーちゃんの手を握るなぁーとお母さんは思いながらしっかり握りしめる。
「手を握ったら目を瞑ってイメージを固めるんだ。ゆっくり魔力を流すんだよ。アンタが流した魔力に私が補強していくから安心おし。」
ルミばぁーちゃんの指示に従ってお母さんは目を瞑り自分が作りたい建物のイメージを膨らませていく。
そしてルミばぁーちゃんの手に向かって少しずつ魔力を流し出す。
それを感じたルミばぁーちゃんはかなり驚く。
お母さんの魔力は暖かく優しいものなのだが...本人はかなり抑え気味に魔力を流しているのだが...強力なものだった。
「こりゃ~私の補強はほとんどしなくてもいいかもね。」
ルミばぁーちゃんは苦笑いしながらお母さんから流れてくる魔力を流していく。
すると...ムキじぃーちゃん達がつくった骨組みにお母さんがイメージしたように肉付きされていく。
そして思っていたよりかなり早く精密かつ、繊細な建物が完成したのだった。
地面に描かれた絵が忠実に再現されてね。
「こりゃ~凄いなぁー。いくらスティールミが補助しているって言ってもたまげたわ。」
「もうワシは慣れたぞ。この程度では驚かんわ。」
2人は作り上げられる建物を見ながら呟く。
建物以外も問題なく造られていた。
売り場のカウンター。商品棚。照明。
カーテンレール。ドア。作業場の机。
椅子。棚などなど。
建物の内側の壁は温かみのある薄ピンクとオレンジ色で花模様。
床は濃い緑と薄い緑、黄色が交互にタイル状に彩られ蔦模様。
この世界では見ない雰囲気の建物が無事に完成した。
初めて見る人には違和感を感じるかもしれないが温かみのある優しい建物となった。
「時間がまだあるんなら私とユイカで工房を作ろうかと思うんだがどうだい?」
そのルミばぁーちゃんの提案にお母さんは驚く。お父さんはともかくなぜ自分も?という気持ちが大きかったからだろう。
お父さん達はその提案に乗り気でお母さんを後押しする。
「母さん!やってみたら?
リンとアキラは私達で見てるから。ついでに夕飯の準備もしておくよ。
時間は気にせずゆっくりしておいでよ。」
お父さんの言葉にドラしゃんも賛成する。
『こちらは心配ありません。ドムとラミィーさえ置いて行って頂けたらありがたいです。
でも、工房を作るのであればドム程ではないですが、ムキファーとロドムカを連れて行ってください。
それなりに使えますから存分にこき使って下さい。』
ドラしゃんの言葉にムキじぃーちゃんとロドじぃーちゃんは異議を申し立てようとしたがドラしゃんの冷視線で諦める。
「皆がそこまで言ってくれるなら...やってみようかしら?」
お母さんはそう言ってルミばぁーちゃん、ムキじぃーちゃん、ロドじぃーちゃんと一緒に工房造りにに向かって行った。
お父さん達の視界から外れたどこまで来たらルミばぁーちゃんが足を止める。
そんなルミばぁーちゃんにお母さんは不思議そうに声をかけようとしたら、ルミばぁーちゃんが何か呪文を唱え出したではないか。
1人焦るお母さん。ロドじぃーちゃんやムキじぃーちゃんは普通に構えているどころか呑気にしている。
どうしようか悩んでいるお母さんにムキじぃーちゃんが声を掛ける。
「おいおい、落ち着いたらいいぜ。歩いて行くのもいいが時間がもったいねぇーから移動魔法を使うんだ。足元の魔法陣から動くなよ。」
それ言われたのでゆっくり足元をみると...?!!見たことない模様が描かれた円陣があるではないか。(いつのまに)
お母さんは取り敢えず状況に身を任せる事を選んだ。
ルミばぁーちゃんが呪文を唱え終えると眩しい光が足元から照らす。
思わず目を閉じると...少し体が浮く感じがした。
次に目を開けるとお父さん達が建てた工房が目の前にあった。
「凄いわ!どうやったの?!あっという間に!えっ!わぁー!!」
お母さんは感嘆の声をあげる。
そんなお母さんにルミばぁーちゃんは苦笑いをしていた。
ルミばぁーちゃんからしたら初歩的な魔法でここまで喜んでくれるのだか心情複雑だったみたい。
「ある程度経験を積み魔力がありゃ~出来る様になるさ。いずれ必要になったら教えてやるよ。」
ルミばぁーちゃんの言葉にお母さんはさらに喜ぶ。
その姿をルミばぁーちゃん達は子供を見る親の心境でお母さんを見つめていた。
お母さんはルミばぁーちゃんの申し出に素直に喜び
「その時はよろしくお願いします。」
と言ってルミばぁーちゃんの両手をとりぶんぶんと振り回す。
お母さんのその仕草をみてムキじぃーちゃん達は"リンとアキラの親だけあってよく似てるわ"と呟いていたのだが...どうやらその呟きはお母さんの耳には届いてなかったようだ。
「ところで工房ってどんなのをつくるんですか?」
お母さんはルミばぁーちゃんの手を握ったまま質問する。
お母さんの質問に困惑した表情のままルミばぁーちゃんは答える。
「ちょっと...落ち着きなって。あんた裁縫とか得意なんだって?フレアからきいたよ。どうなんだい??」
ルミばぁーちゃんは前もってドラしゃんから情報を得ていたがあえてお母さんに直接確認する。
お母さんはまだルミばぁーちゃんの手を掴んだまま考えごとをしてから質問に答える。
「うーーん...得意と言うほどではないですが一応はできます。私やお父さん、アキラやリンが身につけたり、家で使う小物や服はよく私が作ってました。でも...得意なのはアクセサリーの方ですかね。」
お母さんの回答にルミばぁーちゃんは器用に片眉だけあげてお母さんを見つめるので、お母さんは自分の身に付けているアクセサリー類を見せながら説明する。
「えっとですね...このネックレスやブレスレットは私の手作りです。あと、リンのヘアゴム...髪留めはわたしが作ってます。今まではこんな感じのを何種類か作って販売して家計の足しにしてました。」
お母さんがそう言うとルミばぁーちゃんは身に付けているアクセサリーを一つ一つ確認していく。
今お母さんが身に付けているものは日本で作ったものなので、パーツも上質で綺麗なものばかり。
お母さんは手先が器用なので裁縫も上手だが、どちらかと言うとアクセサリーなどの小物を作る方が得意。
使う資材も安く、見栄えがよく、丈夫なものを選んでは上品質な作品を作り上げていく。
そのため金額的はかなりお安くできているのだが...販売するとかなりの高値をつけて購入する人がいる。
(お母さんは材料費と手間賃代で販売してるんだけど安すぎる!!ってお客さんの方から値段を釣り上げていくことが多いのだ。)
「店を構えるほど作る量も多くはなかったんですが、子育てと家事の合間で楽しみながらしてたので辞められなかったんです。
実はここに来てもドラしゃんにお願いして、以前使っていた道具を用意してもらって時々作ってるんです。」
そう言うと、服のポケットに入れていた一つのブレスレットをルミばぁーちゃんに手渡す。
これもかなり精密に出来ておりデザインも素敵なもの。
大金貨10枚、いやそれ以上の値をつけても売れそうな出来栄えなのだ。
ルミばぁーちゃんはお母さんから手渡されたブレスレットをマジマジと見て質問する。
「この...光っているのは宝石かい?」
ルミばぁーちゃんの言葉にロドじぃーちゃんやムキじぃーちゃんも気になったのだろう、ルミばぁーちゃんの手元を覗く。
「そんな!豪華な物使いませんよ。
これは、ガラスを薄く加工した"ビーズ"って言うのを使ってます。安くて加工しやすいんです。」
それを聞いてルミばぁーちゃんは、ますますお母さんに興味を抱く。
「この世界にはあんたが付けてるような物はないんだよ。
あっても、宝石を使った華やかな物で庶民には手が出せない。
派手な装飾品は貴族や皇族のみが身につけてるんだよ。
庶民はきのみや木を加工したものを身に付けてるだよね。
でも...あんたが作るのは庶民でもつけれそうなものだ。どの世界でも女は少しでも綺麗になりたいもんさぁ。その手伝いをしてくれんかい?あんたのその才能はこの世界で貴重だよ。」
ルミばぁーちゃんはお母さんを見た時から考えていたらしく、密かに色々と計画を練っていたのだ。
貴族向けでなく庶民でも気軽に付けれる物を作れるのではないかと思ってね。
案の定、お母さんの身に付けているものは庶民が身に付けても貴族が身に付けるものほど派手さはないが、この世界の庶民の女性にしたら喜ばしいことだ。
絶対にこれは"売れる!!"ルミばぁーちゃんの商人としての勘がそう訴えてくるのだった。
新しいものを自分の目で見てみたい。これをこの世界に広めていきたい!!
それは自分が元商業ギルドマスターだからもあるが、商人としての自分の魂が燃えている。
ルミばぁーちゃんの言葉にお母さんは涙をこぼす。これは嬉しい涙なのだが、ルミばぁーちゃん達は慌てる。
自分の才能を認められたのもあったが、この世界でも自分が家族を支えていけると言う保証を貰えたから自然と涙が溢れたのだった。
急に泣き出したお母さんにムキじぃーちゃん達は焦り、必死に宥める。
「どうしてんだ?!腹がいたいのか?
それとも、ババァーが何か酷いこと言ったか?」
「ババァーの顔がこわかったのか?大丈夫じゃ。お前さんは歳いってもあそこまで皺まみれのババァーにはならんぞ。」
ムキじぃーちゃん、ロドじぃーちゃんは、それぞれお母さんを泣き止まそうと喋るが墓穴を掘ることを忘れないのがさすがだ。
ムキじぃーちゃん、ロドじぃーちゃんはもれなくルミばぁーちゃんの鉄拳をお見舞いされ地面に倒れる。
お母さんは嬉しさと面白さで益々涙が止まらなくなった。
「ちょっ...違います。私...嬉しくって...。どうにか、なるって自分にも...家族にも...言い聞かせていたけど...。不安だったんです...。でも...ルミばぁーちゃんが....。」
お母さんは懸命に涙を拭きながら自分の気持ちを伝えるのだが...笑いながらなものでちゃんと伝わったか不明。
そんなお母さんをルミばぁーちゃんは優しく抱きしめ
「なんだい、そんな事かい。心配させんじゃないよ。泣きたかったら泣きな。そうだよね。あんたは母親だもんね。子供等の前では泣けないわ。アンタは立派だよ。自信持ちなさい。十分、この世界でも生活できるさぁ。
今度は私らも居るんだ。安心しな。」
お母さんの背中を優しく摩りながら声をかける。
お母さんはルミばぁーちゃんの優しさに甘えて、しっかりとしがみついて思う存分泣いた。
それをムキじぃーちゃんとロドじぃーちゃんはタンコブを摩りながら見守っていた。
お母さんがひとしきり泣いて落ち着いたのを見計らって、ルミばぁーちゃんは本題を話し出しす。
「落ち着いたかい。じぁー、話を戻すよ。この工房の横に新しい工房をつくるよ。
店主はあくまでもアンタ。ユイカだよ。私はサポート役だ。アンタがしたい店をここに建てるよ。」
ルミばぁーちゃんは泣きやんだお母さんに笑顔を向けて話をする。
「私の店?ですか?」
お母さんは信じられない様子でルミばぁーちゃんを見つめるとルミばぁーちゃんは頷く。
「私も一応、元商業ギルドマスター。それに職人でもあるだよ。職人として技術に限界を感じてね、元々得意だった魔法を活かして冒険者になったくちなんだよ。
だから、アンタのサポートぐらいは出来るつもりではいるよ。
アンタの世界の技術と私らの世界の技術を使って、誰も見たことのない物を作って見ようじゃないかい。
できたら庶民でも気軽に買えて使えるものがいいがね。
高そうなのは貴族共にふっかけりゃいいさぁ。」
そう話すルミばぁーちゃんの顔はどことなく悪徳商人の顔に一瞬見えたのだが...誰もそれについては触れない。
「店の運営はアンタのペースでやればいい。今は、子供達が小さいからゆっくりで十分だ。
しかし、子供達はいつまでも小さいままじゃーないさ。ある程度大きくなったら本格的に商売したらいい。それぐらいの腹づもりでやりゃーいいさ。」
ルミばぁーちゃんの言葉にお母さんは嬉しさで言葉が出なかった。
ルミばぁーちゃんに再度抱きつき耳元で感謝の言葉を伝えた。
"ありがとう"
お母さんの言葉を聞いたルミばぁーちゃんは、返事に優しくお母さんの頭を撫でた。
一応話が纏まり工房をどのように造るかと言う話に切り替わった。
お母さんは地面に棒を使って自分が理想とする店の絵を描き出す。
それをルミばぁーちゃん、ロドじぃーちゃん、ムキじぃーちゃんは静かに眺める。
お母さんは"ここがあーで"、"これがそーで"と自分の考えを口に出して説明しながら描いていく。
「お前さん、絵もうまいじゃないかい。」
「凄いな。わかりやすい。」
「ユウダイといいユイカも発想豊かじゃのう。」
お母さんが地面に描いた物はこの世界にはない感じの間取りで描かれていたので、ムキじぃーちゃん達は感心する。
温かみのある木造建の建物なのだが、二階建てで作業部屋、保管場所、販売場所、休憩室など用途ごとに空間を区切られていている。
女性らしさが滲み出ていて細かい部分まで配慮されたものなのだが...少し気になることがあったようでルミばぁーちゃんが口を挟む。
「ちょいと、倉庫はどうするんだい?材料とかはどこに置くんだい?」
ルミばぁーちゃんは倉庫がないのに気付きお母さんに確認する。
大体の工房には材料を保管する倉庫を備えている。
大体の倉庫は一部屋まるまる使っている事が多いのだが...お母さんが描く中にはそれが見当たらないのだ。
それを聞いてお母さんは驚いたのだった。材料は大体棚やケースに保管していたので、そこまでの大きな規模の保管場所がいるとは思っていない。
どうしようかと悩んでいたら、ロドじぃーちゃんが案をだす。
「それなら地下に倉庫を作ればいいじゃねか?作品も大量に作成して保管する場所もいるだろうからなぁ。」
「それいいじゃないか。たまにはいいこと言うじゃないかい。」
2人の意見にお母さんは焦る。
自分1人で作るなら作れる量は限られてくるので、そこまで大掛かりな保管場所は必要ないと思う。
慌てているお母さんを見てルミばぁーちゃんは微笑しながら
「安心おしよ。今はアンタ1人かもしれないけど、これから従業員や弟子を雇えばこれでも狭い方だよ。基礎さえ作っておけば後々手直しはいくらでもできるから心配しなさんな。」
どうやらルミばぁーちゃんは店や保管場所が狭すぎるのをあ母さんが心配しているものだと思っているみたいなのだが...まぁ~ルミばぁーちゃんがそう言うならお任せしておこうと思い直す。
これで建物の作りも決まったので早速作業に取り組む事に。
建物の大きさはルミばぁーちゃんの意見でお母さんが描いた絵を元に作っておいおい手直していくことにした。
ルミばぁーちゃんはお母さんの絵を元に大体の大きさをムキじぃーちゃんとロドじぃーちゃんに伝えて建物の土台を作るよう命じる。
「じゃーちゃっちゃかつくるわよ!あっ!地下倉庫作るのを忘れるんじゃないわよ!」
ルミばぁーちゃんの怒号にムキじぃーちゃん達はハイハイと言って地面に魔力を流して倉庫に出来るように地面を深めに掘り下げていく。
空間を確保できたら魔法で固めていく。
地下倉庫の外側は硬めの鉱石素材の壁に。内側はお母さんの希望で木の壁に。
倉庫へ行く出入り口も作り土台はあっという間に完成。
土台ができたのを確認してルミばぁーちゃんが、その上に建物の骨組みを魔法で造っていく。
骨組みを造るとお母さんを呼び寄せる。
「ここからは、アンタの出番だよ。私ので手を握りな。私も手伝ってあげるから、建物の肉付けをして行くよ。ついでに、細かい内装も仕上げていこうかね。」
お母さんはルミばぁーちゃんが差し出した手を両手で握る。
今日はよくルミばぁーちゃんの手を握るなぁーとお母さんは思いながらしっかり握りしめる。
「手を握ったら目を瞑ってイメージを固めるんだ。ゆっくり魔力を流すんだよ。アンタが流した魔力に私が補強していくから安心おし。」
ルミばぁーちゃんの指示に従ってお母さんは目を瞑り自分が作りたい建物のイメージを膨らませていく。
そしてルミばぁーちゃんの手に向かって少しずつ魔力を流し出す。
それを感じたルミばぁーちゃんはかなり驚く。
お母さんの魔力は暖かく優しいものなのだが...本人はかなり抑え気味に魔力を流しているのだが...強力なものだった。
「こりゃ~私の補強はほとんどしなくてもいいかもね。」
ルミばぁーちゃんは苦笑いしながらお母さんから流れてくる魔力を流していく。
すると...ムキじぃーちゃん達がつくった骨組みにお母さんがイメージしたように肉付きされていく。
そして思っていたよりかなり早く精密かつ、繊細な建物が完成したのだった。
地面に描かれた絵が忠実に再現されてね。
「こりゃ~凄いなぁー。いくらスティールミが補助しているって言ってもたまげたわ。」
「もうワシは慣れたぞ。この程度では驚かんわ。」
2人は作り上げられる建物を見ながら呟く。
建物以外も問題なく造られていた。
売り場のカウンター。商品棚。照明。
カーテンレール。ドア。作業場の机。
椅子。棚などなど。
建物の内側の壁は温かみのある薄ピンクとオレンジ色で花模様。
床は濃い緑と薄い緑、黄色が交互にタイル状に彩られ蔦模様。
この世界では見ない雰囲気の建物が無事に完成した。
初めて見る人には違和感を感じるかもしれないが温かみのある優しい建物となった。
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事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
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気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
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小鳥遊 紅音は働く28歳OL
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