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第二章 歩み〜生活基盤を整えましょう〜
2-10 家庭菜園と装飾工房がそれぞれ完成
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お母さんとルミばぁーちゃんが魔力を注ぐのをやめるとそこには予想以上の建物が姿を現す。
どことなく和風の雰囲気を持ちつつも洋風の要素がうまく溶け込んだデザインの建物に。机等の家具類はこの世界でも違和感がないデザインになっている。
お母さんがゆっくり目を開けるとルミばぁーちゃんの満面の笑顔が。
そして...
「完成したわよ。アンタの店だよ。素敵じゃないかい。この店で、アンタと仕事するのが待ち遠しいね。」
ルミばぁーちゃんの言葉を聞きながら、ゆっくりと周りを見渡すお母さん。
昔、夢見ていた自分の店が現実に出来上がっている。
これは夢ではない。
「ありがとう...ございます。」
お母さんは、改めてルミばぁーちゃん達に深く御礼をいう。
「何言ってんだい。私は楽しかったわよ。」
「気にすんなよ。まだまだこれからだぜ。」
「夫婦揃って凄い才能だなぁー。」
ルミばぁーちゃん達はそれぞれお母さんに声をかけて頭を上げるよう促す。
建物ができたので必要な材料達をいつ運び入れようかと思っていると
「今日の作業は、ここまでにしようかね。また明日ゆっくり準備をしたらいいさ。」
お母さんの考えを読み取ったルミばぁーちゃんがそっと声をかけてくれたおかげで、皆店の外にでる。
店の外に出るとなんとドラしゃんが立っているではないか。
ドラしゃんは店の中から出てきたお母さんを見つけるとゆっくりと歩み寄り
『無事に完成しましたか。おめでとうございます。夕飯の準備が整いましたのでお迎えにあがりました。
あと、この店の鍵も付けさせて頂きます。』
ドラしゃんはそう告げるとお父さんの時と同じように建物全体に魔法をかけていく。
そして鍵を3つ作成してルミばぁーちゃん、お母さんにそれぞれ一つずつ渡していく。
『ではこれでこの建物は安全です。皆さんお腹を空かせてお待ちです。屋敷に戻りましょう。』
そう言うと私達の待つ家に一瞬にして家路につく。
お母さん達が工房を作っている数分前の出来事なんだど...。
お父さんはこの世界で初めてクワを作り上げた。
造ったと言っても先端部のみなんだけどね。
お父さんが造った刃先にドムじぃーちゃんが魔法で持つところをつくってクワとして使えるように加工までしてくれたの。
お父さんが造ったクワを見てドラしゃんは溜息を付いていたが誰もそれには気づかない。
完成したクワを見て喜んでいる中ドラしゃんが、お父さん達に声をかける。
『喜んでいるところに水をさすようで申し訳ありません。
そろそろ家にもどって食事の支度しないと間に合いませんよ?』
ドラしゃんのその一言で我に返ったお父さん達。
いそいで工房の片付けをしドラしゃんの魔法で家にもどり夕食の支度にとりかかる。
今日はお父さんが主となり夕食の準備を進めていく。
「アキラ!リン!食べたいものあるか?」
お父さんはキッチンに立つなり私とお兄ちゃんに質問してきたのだが...私もお兄ちゃんもお腹は限界に近かったので"お腹がいっぱいになるもの"とお願いした。
私とお兄ちゃんのリクエストを聞きお父さん達は大笑い。
大笑いしながらも必死に夕飯の支度にとりかかってくれた。
そろそろ完成という頃合いを見計らってドラしゃんは1人お母さん達のお迎えに姿を消す。
お母さん達は全ての料理が完成してテーブルに並んだ瞬間に戻ってきた。
挨拶もそこそこに皆で食卓を囲みお父さんが用意してくれたご飯を食べ進める。
ある程度皆のお腹が満たされた頃にお母さんが口を開く。
「お父さん、お父さんの作った工房の横に私の工房も無事にできたの。昔話していたじゃない?あの雰囲気の建物ができたのよ!」
嬉しそうに話すお母さんを見てお父さんも喜ぶ。
「それは本当かい?お母さんやったね。ぜひ見せてほしいよ。工房には行ってたけど、瞬間移動みたいなのしていったから知らないんだ。」
「ぜひ見て!とても素敵なの。」
お父さん達の会話のやり取りを皆優しい表情をして静かに見守る。
どうやらお父さんはお母さんが建てた建物についてなんとなく知っている様子。
その分お母さんが喜んでいる姿がとても嬉しそうなのだろう。
2人の会話が落ち着いた頃に明日の段取りについて話し合いを改めて行う。
『明日からなんですが、奥様が作った工房を皆さんで見に行った後にそれぞれ別々に行動をとるようにするのでどうでしょうか?』
ドラしゃんの言葉にロドじぃーちゃんが反応する。
「うん?まだなんかやることがあるのか?」
ロドじぃーちゃんの質問に私とお兄ちゃんが手を挙げて返事する。
「はい!おやちゃいまだ!」
「畑がまだできてないんです。」
私達の言葉にお父さんは申し訳なさそうに頷く。
そう...必要な道具をいくつか量産して肝心な畑は一切手をつけてない状態なんですから。
その話を踏まえドラしゃんは提案してくれていたのだ。
「じゃー仕方がないな。今日と同じメンバーで動く方がいいだろう?」
ロドじぃーちゃんの言葉に皆頷く。
『ではそのようにしましょう。何かありましたら遠慮なく救援要請お願いしますね。
隠されて後々面倒ごとになる方がしんどいですから。』
ドラしゃんの言葉に大人たちはグッと気まずそうな表情を浮かべる。
まぁーともあれ明日の予定が決まった。
明日はお父さん側は家庭菜園の続きを。
お母さん側は作った工房に今使っている道具の移動や内装を仕上げていくことになった。
メンバー分はもちろん今日と同じメンバー。
話も纏まり夕食も食べ終わったのでその日はそれぞれの家に戻り就寝となる。
翌朝。朝食は各自でとり準備をしてから集まり早速行動開始。
まずお母さんが造った工房を皆で見に行った。
お母さんらしいという言葉がぴったりとあう工房が建っていた。
「さすがお母さんだね。いい工房だね。」
お父さんが褒めるとお母さんは照れくさそうにお父さんとイチャイチャしだす。
なんとも言えない空気が流れ出したので、気を利かせたドラしゃんが速やかにお父さんを引き連れて残りの予定をこなす事を促す。
お母さん達とはまたお昼ご飯ごろに合流することだけ伝えて、私達は農園を作るために家に戻る。
家に戻り農園予定地へ向かうと...昨日の昼間ラミィお兄ちゃんが印を付けた所が周りと少し色が変わっていた。
「あっ!いい感じに土壌が出来上がってますね。これで問題なく耕していけますね。」
ラミィお兄ちゃんが土壌を確認すると問題なく準備ができていたと判明したので昨日お父さんとドムじぃーちゃんで造った農機具を使って農園を作っていくことに。
と、とりあえずお父さんが先に土を耕していく。
クワを持って一振り...?!!!!
ザショッ!!という軽快な音と共に変色した土壌が一気に耕されたのだ。
お父さんはクワを持ったまま目を点にした状態で固まり、ラミィお兄ちゃんとドムじぃーちゃんもお父さんと同じ表情で固まっている。
私とお兄ちゃんは手を叩いて大喜び。
ドラしゃんのみやれやれといった表情をして呆れ返っている。
大の大人が3人固まっているのでドラしゃんが解説をしだす。
『旦那様が造った農具は普通の農具ではありませんからね。
見た目は普通ですが...農具としての機能がS級のものですね。まぁーようするにとんでもないものができあがったということです。』
ドラしゃんの説明が終わると3人は揃いも揃って叫ぶ。
あまりの内容に衝撃も半端でなかったようだが...。
(お父さんなんかクワを持ったまま震えてたしね。)
そんな3人をよそにドラしゃんは私とお兄ちゃんに向かって話出す。
『土も耕せましたので野菜の種を蒔きましょうか?お嬢様、坊ちゃま。昨日見せて下さったことをもう一度お願いします。』
と言うと私にお野菜を渡してきた。
昨日の事?そう...実は昨日夕食の時、私とお兄ちゃんは少しだけやらかしをしたのです。
夕食の時、お父さんとモッケしゃんが植える野菜の種や苗の事について話していたんですが、その時たまたまですよ?
テーブルの上にあった野菜をお兄ちゃんと一緒に手にとって"種"って念じながら握ったら、野菜が種になってしまったのです。
それを皆で、目撃されてしまったのです。
驚きは凄かったし、その後も確認だ!と言って何回かその場で色んな野菜を私とお兄ちゃんは握らされて同じ事をさせられた。
そう...何回も!!!
どれもきちんと種になったんだけどね。
ドラしゃんが笑顔で褒めてくれたのがすごく嬉しかったので苦にはならない。
周りの他の人が何やら怒っていた気がしたけど気にしない事にした。
と言うのが昨日の出来事なのです。
昨日、私とお兄ちゃんで作り出した種では少ないのでモッケしゃんの馬車の中に残っていた野菜と家の冷蔵庫の中の野菜もちゃんと用意されて持ってきていた。
私とお兄ちゃんはドラしゃんからそれらのお野菜を受け取り、種にしては用意されている籠に入れていく。
私とお兄ちゃんが造った種をドラしゃんが用意してあった籠に種類ごとに取り分けていく。
(ちなみに、種を入れる容器は野菜の名前も容器の外側に書かれてあって便利なのよ。)
持ってきた野菜が全て種に変わる頃にはお父さん達も復活する。
お父さんは何やらぶつぶつ呟いていたが、ラミィお兄ちゃんとドムじぃーちゃんが慰める。
種の準備も整ったので畑に植えていくことにした。
今回植えるのはキャロル(人参)、ダリット(大根)、キャツル(キャベツ)、モリッソ(ジャガイモみたいな野菜)がこの世界では1番の主流の野菜を。
あとは、ほうれん草、小松菜、ゴボウ、トマト、キュウリ、ナスが私達の世界にしかない野菜を今回植えることにした。
上手いこといけば今後植える野菜の種類を増やしていく事にしたので、今回はこれだけの種を皆んなで手分けして蒔いていく。
それぞれ種の入った容器をもって耕された畑に足を踏み入れた時だった。
私は畑の近くの木の根元に何か光る物が視界に入った。
木の根元にあるいていき光る物を拾ってみたのだが、それは淡い緑色の光を放つ種の様な物だった。
私はそれを手に持って皆んなの元に戻り、空いていたスペースに密かに植えた。
が、それに気づいたドラしゃんが声をかけてきた。
『お嬢様。何を植えたのでか?』
さすがのドラしゃんでも私が何を持って帰ってきて植えたかまではわからなかったようす。
私はとびっきりの笑顔でドラしゃんに報告した。
「たねが、おちてたから、うえたの。」
私が報告すると...。
もうわかりますよね?
ドラしゃんはよくできましたと褒めてくれた。
しかし、後日。この時何を植えたかを確認しなかった事を悔やむハメになるとはドラしゃんは思わなかったのだ。
とりあえず、無事に全ての種を無事に蒔くことができたので、最後に今日はラミィお兄ちゃんが魔法で畑に水を撒いてくれた。
お父さんがドラしゃんにあるお願いをした。
"今後は自分達で水やりをしたいので井戸を作りたいと。"
お父さんに造らせるとどんな井戸になるか分からないので、今回はドムじぃーちゃんが畑の側に井戸を作ってくれた。
井戸も完成したので今日の作業はここで中断して一度家に戻る事にした。
私達が畑で作業している間装飾工房へと行ったお母さん達は...。
前から使っているお母さんの道具と材料を昨日建てた工房に運んでいた。
運び終えると今後どんな物を作っていくか。どんな材料がいるかを話し合っていた。
「この世界ではどんな物が好まれるんですか?」
お母さんはルミばぁーちゃんにこの世界での流行りについて確認を取る。
同じ女性でも文化や習慣、ましてや世界が違うので慣性なども違ってくると思ったからだ。
だから少しでも情報を得ている方が作りやすいから。
お母さんの質問にルミばぁーちゃんは考えながら答えてくれる。
「まず、アンタの世界ではどんな物が好まれていたんだい?」
ルミばぁーちゃんはその意図を汲み取ってあえてお母さんの好みを先に知ることにしたみたいい。
まぁー、お母さんがどんな物が作れるかを確認しておきたいというのもあったのだと思う。
お母さんはそれを理解し作業机の上に自分が作った作品を数点並べて説明する。
「私はあまり派手な物は苦手で、年齢層別の物とどの年代の人にも使える物の2種類に分けて作成しています。
子供向けには"ヘアゴム"といった髪飾りを中心とした、日常で使える物がメインです。
使うパーツも大振りの物を使用し破損しにくい素材を使用してます。
若者向けには、ピアスやイヤリングと言った耳飾りやブレスレット、バックチャームを中心かな?パーツも小ぶりな物にし綺麗な物を使用してます。
高年層むけには落ち着いた雰囲気の物を作成してます。ネックレスや冠婚葬祭にも使える物にしてます。
使う素材も天然石等少し高めで見栄えの良い物を使用してます。
全年齢むけにはキーチャームやヘアピン。ブローチ等を作ってます。
あとはお客様の依頼に応じた物を作ってました。」
お母さんの話の内容にルミばぁーちゃんは驚きながらも感心する。
技術もそうだがきちんと客層を理解して、客が求めるモノを作る事が出来る職人だという事を知ることができて満足している。
お母さん自身は無自覚だったがきちんとプロの心構えができていた。
それを確認した上で今度はルミばぁーちゃんがこの世界での事を詳しくお母さんに話していく。
「基本、女は綺麗な物を好むのは一緒だよ。綺麗・可愛い・オシャレな物は特に好まれよ。アンタのやり方で問題はないね。
あとは、貴族なんかはやたらめったらと派手なのを好むね。
あんなのどこが良いか分からんがね。
あとは...値段だが。貴族連中は安い物は買わないよ。
奴らは安い=価値がないと思っているからね。しかし、庶民には安い物が好まれる。それはアンタの世界でも一緒かい?」
ルミばぁーちゃんの話をどこでも一緒なんだと思いながらお母さんは聞いていたので返事も早かった。
「はい。同じですね。なら作りやすいです。材料はどうやって集めるのですか?」
そう問題はここだ。
前の世界みたいにネット購入ができないからね。
この世界にどんな店があるかもまだ知らない。
ルミばぁーちゃんは材料の集め方を説明してくれた。
「材料の集め方には色んな方法があるよ。①自分で探しに行く。②ギルドに依頼して冒険者に集めてもらう。③魔法で作り出す。だね。
①に関しては自分にある程度魔物と戦える能力がないと無理だね。②は予算がかかるが安全に手に入るよ。③はある程度の魔力があればできるさ。」
③に関して自分でも考えていたのであまり驚かなかったが、①と②にかんしては、思いつかなかったのでお母さんは驚く。
「この世界では材料を売っている店はないんですか?」
お母さんは疑問に感じた事を尋ねてみたらその問いにはムキじぃーちゃんが答えてくれた。
「ユイカの作ったモノに使われるような素材を扱う店はないな。あっても皮や布。木材や鉱石ぐらいだな。」
この世界では細かな材料を売っている店がないとのこと。
これにはお母さんは驚く。
「宝石なんかの高価な物は商業ギルドでしか取り扱えない。しかも、値段がバカ高いときたもんだ。」
とロドじぃーちゃんが教えてくれた。
宝石なんか使う気もなかったので本当に困った。
でもこの世界にはアクリルビーズやガラスビーズがない。もちろん金属パーツもだ。
「この作品に使っている素材を作る事は可能ですか?」
お母さんはダメ元でルミばぁーちゃんに確認したら、ルミばぁーちゃんはお母さんの作った作品を数点を手に取り確認していく。
「この木材のヤツは作れるね。
後、ガラス製のモノと金属パーツは...素材があればできない事は無いだろうね。
しかし、この見慣れない素材のは無理だね。なんだねこれは?ガラスの様でガラスでないし。意外に丈夫な作りをしてるじゃないかい。」
木製のパーツとガラス製、金属製のパーツはなんとかなる事がわかりお母さんはホッとする。
しかし、アクリルパーツが手に入れる事が出来ないのは大きな痛手。
アクリルパーツは、使いやすく破損も少なく加工もしやすく重宝していたのでとても辛い。
「それは、"アクリル"といって人工的に造られたものです。形も色々加工ができ色も自分で染められたりできます。丈夫で長持ちするので私達の世界では重宝していたものです。」
と、お母さんが説明するとルミばぁーちゃんは驚く。
「その"アクリル"って言うモノの作り方は分かるのかい?」
ルミばぁーちゃんの食いつきは凄かった。
お母さんは、"残念ながら..."と答えると悔しがる。
「もし、この作り方が分かればアンタ、一気にこの世界で金持ちになれるよ。
しかもコレなら絶対売れるね。特に庶民にはウケるだろうね。宝石の様に見えるし見栄えもいい。
しかし、作り方が分からんのではね...。」
ルミばぁーちゃんの言葉を聞いて何か方法はないかと悩んでいたら、ムキじぃーちゃんとロドじぃーちゃんが声を掛けてきた。
「その、"アクリル"って言うヤツは無理だけど、それ以外の素材に関してはユイカの依頼だったらワシがタダで受けてやるよ。
報酬が気になるなら美味しい飯でいいさ。強い魔物ほど良い素材になるからなぁー。高ランクの冒険者でないと難しいぞ。」
「高ランクの冒険者に依頼となったら報酬額も高くなる。今のお前さんらはこの世界の硬貨も持っておらんだろう?
とりあえずはワシらが取りにいってやるわい。ムキファーと同様で美味い飯をご馳走してくれたらいいからよ。」
2人は笑顔で話してくれた。
そういえば私達はこの世界のお金も知らないことに気付いた。正直の話無一文のはず。
「今すぐって言うわけでは、ないからゆっくり考えな。あと、祝いに私の店で取り扱っていた材料を一部倉庫に入れてあるからそれを使いな
細かい事は、追々考えて行こうじゃないかい。とりあえずは、戻ってお昼にでもするかね。」
ルミばぁーちゃんの提案で一度家に戻る事にした。
後で、ドラしゃんにお金についてとアクリルについて確認しようとお母さんは心に決めたのだった。
どことなく和風の雰囲気を持ちつつも洋風の要素がうまく溶け込んだデザインの建物に。机等の家具類はこの世界でも違和感がないデザインになっている。
お母さんがゆっくり目を開けるとルミばぁーちゃんの満面の笑顔が。
そして...
「完成したわよ。アンタの店だよ。素敵じゃないかい。この店で、アンタと仕事するのが待ち遠しいね。」
ルミばぁーちゃんの言葉を聞きながら、ゆっくりと周りを見渡すお母さん。
昔、夢見ていた自分の店が現実に出来上がっている。
これは夢ではない。
「ありがとう...ございます。」
お母さんは、改めてルミばぁーちゃん達に深く御礼をいう。
「何言ってんだい。私は楽しかったわよ。」
「気にすんなよ。まだまだこれからだぜ。」
「夫婦揃って凄い才能だなぁー。」
ルミばぁーちゃん達はそれぞれお母さんに声をかけて頭を上げるよう促す。
建物ができたので必要な材料達をいつ運び入れようかと思っていると
「今日の作業は、ここまでにしようかね。また明日ゆっくり準備をしたらいいさ。」
お母さんの考えを読み取ったルミばぁーちゃんがそっと声をかけてくれたおかげで、皆店の外にでる。
店の外に出るとなんとドラしゃんが立っているではないか。
ドラしゃんは店の中から出てきたお母さんを見つけるとゆっくりと歩み寄り
『無事に完成しましたか。おめでとうございます。夕飯の準備が整いましたのでお迎えにあがりました。
あと、この店の鍵も付けさせて頂きます。』
ドラしゃんはそう告げるとお父さんの時と同じように建物全体に魔法をかけていく。
そして鍵を3つ作成してルミばぁーちゃん、お母さんにそれぞれ一つずつ渡していく。
『ではこれでこの建物は安全です。皆さんお腹を空かせてお待ちです。屋敷に戻りましょう。』
そう言うと私達の待つ家に一瞬にして家路につく。
お母さん達が工房を作っている数分前の出来事なんだど...。
お父さんはこの世界で初めてクワを作り上げた。
造ったと言っても先端部のみなんだけどね。
お父さんが造った刃先にドムじぃーちゃんが魔法で持つところをつくってクワとして使えるように加工までしてくれたの。
お父さんが造ったクワを見てドラしゃんは溜息を付いていたが誰もそれには気づかない。
完成したクワを見て喜んでいる中ドラしゃんが、お父さん達に声をかける。
『喜んでいるところに水をさすようで申し訳ありません。
そろそろ家にもどって食事の支度しないと間に合いませんよ?』
ドラしゃんのその一言で我に返ったお父さん達。
いそいで工房の片付けをしドラしゃんの魔法で家にもどり夕食の支度にとりかかる。
今日はお父さんが主となり夕食の準備を進めていく。
「アキラ!リン!食べたいものあるか?」
お父さんはキッチンに立つなり私とお兄ちゃんに質問してきたのだが...私もお兄ちゃんもお腹は限界に近かったので"お腹がいっぱいになるもの"とお願いした。
私とお兄ちゃんのリクエストを聞きお父さん達は大笑い。
大笑いしながらも必死に夕飯の支度にとりかかってくれた。
そろそろ完成という頃合いを見計らってドラしゃんは1人お母さん達のお迎えに姿を消す。
お母さん達は全ての料理が完成してテーブルに並んだ瞬間に戻ってきた。
挨拶もそこそこに皆で食卓を囲みお父さんが用意してくれたご飯を食べ進める。
ある程度皆のお腹が満たされた頃にお母さんが口を開く。
「お父さん、お父さんの作った工房の横に私の工房も無事にできたの。昔話していたじゃない?あの雰囲気の建物ができたのよ!」
嬉しそうに話すお母さんを見てお父さんも喜ぶ。
「それは本当かい?お母さんやったね。ぜひ見せてほしいよ。工房には行ってたけど、瞬間移動みたいなのしていったから知らないんだ。」
「ぜひ見て!とても素敵なの。」
お父さん達の会話のやり取りを皆優しい表情をして静かに見守る。
どうやらお父さんはお母さんが建てた建物についてなんとなく知っている様子。
その分お母さんが喜んでいる姿がとても嬉しそうなのだろう。
2人の会話が落ち着いた頃に明日の段取りについて話し合いを改めて行う。
『明日からなんですが、奥様が作った工房を皆さんで見に行った後にそれぞれ別々に行動をとるようにするのでどうでしょうか?』
ドラしゃんの言葉にロドじぃーちゃんが反応する。
「うん?まだなんかやることがあるのか?」
ロドじぃーちゃんの質問に私とお兄ちゃんが手を挙げて返事する。
「はい!おやちゃいまだ!」
「畑がまだできてないんです。」
私達の言葉にお父さんは申し訳なさそうに頷く。
そう...必要な道具をいくつか量産して肝心な畑は一切手をつけてない状態なんですから。
その話を踏まえドラしゃんは提案してくれていたのだ。
「じゃー仕方がないな。今日と同じメンバーで動く方がいいだろう?」
ロドじぃーちゃんの言葉に皆頷く。
『ではそのようにしましょう。何かありましたら遠慮なく救援要請お願いしますね。
隠されて後々面倒ごとになる方がしんどいですから。』
ドラしゃんの言葉に大人たちはグッと気まずそうな表情を浮かべる。
まぁーともあれ明日の予定が決まった。
明日はお父さん側は家庭菜園の続きを。
お母さん側は作った工房に今使っている道具の移動や内装を仕上げていくことになった。
メンバー分はもちろん今日と同じメンバー。
話も纏まり夕食も食べ終わったのでその日はそれぞれの家に戻り就寝となる。
翌朝。朝食は各自でとり準備をしてから集まり早速行動開始。
まずお母さんが造った工房を皆で見に行った。
お母さんらしいという言葉がぴったりとあう工房が建っていた。
「さすがお母さんだね。いい工房だね。」
お父さんが褒めるとお母さんは照れくさそうにお父さんとイチャイチャしだす。
なんとも言えない空気が流れ出したので、気を利かせたドラしゃんが速やかにお父さんを引き連れて残りの予定をこなす事を促す。
お母さん達とはまたお昼ご飯ごろに合流することだけ伝えて、私達は農園を作るために家に戻る。
家に戻り農園予定地へ向かうと...昨日の昼間ラミィお兄ちゃんが印を付けた所が周りと少し色が変わっていた。
「あっ!いい感じに土壌が出来上がってますね。これで問題なく耕していけますね。」
ラミィお兄ちゃんが土壌を確認すると問題なく準備ができていたと判明したので昨日お父さんとドムじぃーちゃんで造った農機具を使って農園を作っていくことに。
と、とりあえずお父さんが先に土を耕していく。
クワを持って一振り...?!!!!
ザショッ!!という軽快な音と共に変色した土壌が一気に耕されたのだ。
お父さんはクワを持ったまま目を点にした状態で固まり、ラミィお兄ちゃんとドムじぃーちゃんもお父さんと同じ表情で固まっている。
私とお兄ちゃんは手を叩いて大喜び。
ドラしゃんのみやれやれといった表情をして呆れ返っている。
大の大人が3人固まっているのでドラしゃんが解説をしだす。
『旦那様が造った農具は普通の農具ではありませんからね。
見た目は普通ですが...農具としての機能がS級のものですね。まぁーようするにとんでもないものができあがったということです。』
ドラしゃんの説明が終わると3人は揃いも揃って叫ぶ。
あまりの内容に衝撃も半端でなかったようだが...。
(お父さんなんかクワを持ったまま震えてたしね。)
そんな3人をよそにドラしゃんは私とお兄ちゃんに向かって話出す。
『土も耕せましたので野菜の種を蒔きましょうか?お嬢様、坊ちゃま。昨日見せて下さったことをもう一度お願いします。』
と言うと私にお野菜を渡してきた。
昨日の事?そう...実は昨日夕食の時、私とお兄ちゃんは少しだけやらかしをしたのです。
夕食の時、お父さんとモッケしゃんが植える野菜の種や苗の事について話していたんですが、その時たまたまですよ?
テーブルの上にあった野菜をお兄ちゃんと一緒に手にとって"種"って念じながら握ったら、野菜が種になってしまったのです。
それを皆で、目撃されてしまったのです。
驚きは凄かったし、その後も確認だ!と言って何回かその場で色んな野菜を私とお兄ちゃんは握らされて同じ事をさせられた。
そう...何回も!!!
どれもきちんと種になったんだけどね。
ドラしゃんが笑顔で褒めてくれたのがすごく嬉しかったので苦にはならない。
周りの他の人が何やら怒っていた気がしたけど気にしない事にした。
と言うのが昨日の出来事なのです。
昨日、私とお兄ちゃんで作り出した種では少ないのでモッケしゃんの馬車の中に残っていた野菜と家の冷蔵庫の中の野菜もちゃんと用意されて持ってきていた。
私とお兄ちゃんはドラしゃんからそれらのお野菜を受け取り、種にしては用意されている籠に入れていく。
私とお兄ちゃんが造った種をドラしゃんが用意してあった籠に種類ごとに取り分けていく。
(ちなみに、種を入れる容器は野菜の名前も容器の外側に書かれてあって便利なのよ。)
持ってきた野菜が全て種に変わる頃にはお父さん達も復活する。
お父さんは何やらぶつぶつ呟いていたが、ラミィお兄ちゃんとドムじぃーちゃんが慰める。
種の準備も整ったので畑に植えていくことにした。
今回植えるのはキャロル(人参)、ダリット(大根)、キャツル(キャベツ)、モリッソ(ジャガイモみたいな野菜)がこの世界では1番の主流の野菜を。
あとは、ほうれん草、小松菜、ゴボウ、トマト、キュウリ、ナスが私達の世界にしかない野菜を今回植えることにした。
上手いこといけば今後植える野菜の種類を増やしていく事にしたので、今回はこれだけの種を皆んなで手分けして蒔いていく。
それぞれ種の入った容器をもって耕された畑に足を踏み入れた時だった。
私は畑の近くの木の根元に何か光る物が視界に入った。
木の根元にあるいていき光る物を拾ってみたのだが、それは淡い緑色の光を放つ種の様な物だった。
私はそれを手に持って皆んなの元に戻り、空いていたスペースに密かに植えた。
が、それに気づいたドラしゃんが声をかけてきた。
『お嬢様。何を植えたのでか?』
さすがのドラしゃんでも私が何を持って帰ってきて植えたかまではわからなかったようす。
私はとびっきりの笑顔でドラしゃんに報告した。
「たねが、おちてたから、うえたの。」
私が報告すると...。
もうわかりますよね?
ドラしゃんはよくできましたと褒めてくれた。
しかし、後日。この時何を植えたかを確認しなかった事を悔やむハメになるとはドラしゃんは思わなかったのだ。
とりあえず、無事に全ての種を無事に蒔くことができたので、最後に今日はラミィお兄ちゃんが魔法で畑に水を撒いてくれた。
お父さんがドラしゃんにあるお願いをした。
"今後は自分達で水やりをしたいので井戸を作りたいと。"
お父さんに造らせるとどんな井戸になるか分からないので、今回はドムじぃーちゃんが畑の側に井戸を作ってくれた。
井戸も完成したので今日の作業はここで中断して一度家に戻る事にした。
私達が畑で作業している間装飾工房へと行ったお母さん達は...。
前から使っているお母さんの道具と材料を昨日建てた工房に運んでいた。
運び終えると今後どんな物を作っていくか。どんな材料がいるかを話し合っていた。
「この世界ではどんな物が好まれるんですか?」
お母さんはルミばぁーちゃんにこの世界での流行りについて確認を取る。
同じ女性でも文化や習慣、ましてや世界が違うので慣性なども違ってくると思ったからだ。
だから少しでも情報を得ている方が作りやすいから。
お母さんの質問にルミばぁーちゃんは考えながら答えてくれる。
「まず、アンタの世界ではどんな物が好まれていたんだい?」
ルミばぁーちゃんはその意図を汲み取ってあえてお母さんの好みを先に知ることにしたみたいい。
まぁー、お母さんがどんな物が作れるかを確認しておきたいというのもあったのだと思う。
お母さんはそれを理解し作業机の上に自分が作った作品を数点並べて説明する。
「私はあまり派手な物は苦手で、年齢層別の物とどの年代の人にも使える物の2種類に分けて作成しています。
子供向けには"ヘアゴム"といった髪飾りを中心とした、日常で使える物がメインです。
使うパーツも大振りの物を使用し破損しにくい素材を使用してます。
若者向けには、ピアスやイヤリングと言った耳飾りやブレスレット、バックチャームを中心かな?パーツも小ぶりな物にし綺麗な物を使用してます。
高年層むけには落ち着いた雰囲気の物を作成してます。ネックレスや冠婚葬祭にも使える物にしてます。
使う素材も天然石等少し高めで見栄えの良い物を使用してます。
全年齢むけにはキーチャームやヘアピン。ブローチ等を作ってます。
あとはお客様の依頼に応じた物を作ってました。」
お母さんの話の内容にルミばぁーちゃんは驚きながらも感心する。
技術もそうだがきちんと客層を理解して、客が求めるモノを作る事が出来る職人だという事を知ることができて満足している。
お母さん自身は無自覚だったがきちんとプロの心構えができていた。
それを確認した上で今度はルミばぁーちゃんがこの世界での事を詳しくお母さんに話していく。
「基本、女は綺麗な物を好むのは一緒だよ。綺麗・可愛い・オシャレな物は特に好まれよ。アンタのやり方で問題はないね。
あとは、貴族なんかはやたらめったらと派手なのを好むね。
あんなのどこが良いか分からんがね。
あとは...値段だが。貴族連中は安い物は買わないよ。
奴らは安い=価値がないと思っているからね。しかし、庶民には安い物が好まれる。それはアンタの世界でも一緒かい?」
ルミばぁーちゃんの話をどこでも一緒なんだと思いながらお母さんは聞いていたので返事も早かった。
「はい。同じですね。なら作りやすいです。材料はどうやって集めるのですか?」
そう問題はここだ。
前の世界みたいにネット購入ができないからね。
この世界にどんな店があるかもまだ知らない。
ルミばぁーちゃんは材料の集め方を説明してくれた。
「材料の集め方には色んな方法があるよ。①自分で探しに行く。②ギルドに依頼して冒険者に集めてもらう。③魔法で作り出す。だね。
①に関しては自分にある程度魔物と戦える能力がないと無理だね。②は予算がかかるが安全に手に入るよ。③はある程度の魔力があればできるさ。」
③に関して自分でも考えていたのであまり驚かなかったが、①と②にかんしては、思いつかなかったのでお母さんは驚く。
「この世界では材料を売っている店はないんですか?」
お母さんは疑問に感じた事を尋ねてみたらその問いにはムキじぃーちゃんが答えてくれた。
「ユイカの作ったモノに使われるような素材を扱う店はないな。あっても皮や布。木材や鉱石ぐらいだな。」
この世界では細かな材料を売っている店がないとのこと。
これにはお母さんは驚く。
「宝石なんかの高価な物は商業ギルドでしか取り扱えない。しかも、値段がバカ高いときたもんだ。」
とロドじぃーちゃんが教えてくれた。
宝石なんか使う気もなかったので本当に困った。
でもこの世界にはアクリルビーズやガラスビーズがない。もちろん金属パーツもだ。
「この作品に使っている素材を作る事は可能ですか?」
お母さんはダメ元でルミばぁーちゃんに確認したら、ルミばぁーちゃんはお母さんの作った作品を数点を手に取り確認していく。
「この木材のヤツは作れるね。
後、ガラス製のモノと金属パーツは...素材があればできない事は無いだろうね。
しかし、この見慣れない素材のは無理だね。なんだねこれは?ガラスの様でガラスでないし。意外に丈夫な作りをしてるじゃないかい。」
木製のパーツとガラス製、金属製のパーツはなんとかなる事がわかりお母さんはホッとする。
しかし、アクリルパーツが手に入れる事が出来ないのは大きな痛手。
アクリルパーツは、使いやすく破損も少なく加工もしやすく重宝していたのでとても辛い。
「それは、"アクリル"といって人工的に造られたものです。形も色々加工ができ色も自分で染められたりできます。丈夫で長持ちするので私達の世界では重宝していたものです。」
と、お母さんが説明するとルミばぁーちゃんは驚く。
「その"アクリル"って言うモノの作り方は分かるのかい?」
ルミばぁーちゃんの食いつきは凄かった。
お母さんは、"残念ながら..."と答えると悔しがる。
「もし、この作り方が分かればアンタ、一気にこの世界で金持ちになれるよ。
しかもコレなら絶対売れるね。特に庶民にはウケるだろうね。宝石の様に見えるし見栄えもいい。
しかし、作り方が分からんのではね...。」
ルミばぁーちゃんの言葉を聞いて何か方法はないかと悩んでいたら、ムキじぃーちゃんとロドじぃーちゃんが声を掛けてきた。
「その、"アクリル"って言うヤツは無理だけど、それ以外の素材に関してはユイカの依頼だったらワシがタダで受けてやるよ。
報酬が気になるなら美味しい飯でいいさ。強い魔物ほど良い素材になるからなぁー。高ランクの冒険者でないと難しいぞ。」
「高ランクの冒険者に依頼となったら報酬額も高くなる。今のお前さんらはこの世界の硬貨も持っておらんだろう?
とりあえずはワシらが取りにいってやるわい。ムキファーと同様で美味い飯をご馳走してくれたらいいからよ。」
2人は笑顔で話してくれた。
そういえば私達はこの世界のお金も知らないことに気付いた。正直の話無一文のはず。
「今すぐって言うわけでは、ないからゆっくり考えな。あと、祝いに私の店で取り扱っていた材料を一部倉庫に入れてあるからそれを使いな
細かい事は、追々考えて行こうじゃないかい。とりあえずは、戻ってお昼にでもするかね。」
ルミばぁーちゃんの提案で一度家に戻る事にした。
後で、ドラしゃんにお金についてとアクリルについて確認しようとお母さんは心に決めたのだった。
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