Worldtrace

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[Worldtrace]

VSドワイト・ヴォルフ

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変身も終了し、準備万端のドワイトはジャンプで俺の上を飛び越え、俺と王都の間に立ち構える。変身した後、剣を使わず格闘に切り替える。ゲームでも変身後は剣を使って無かったからそこは記憶通りだ。

ドワイト「これ以上の語り合いは不粋だろう。この先に行くなら己の力で押し通れ!」

急いでるのにお預けを喰らうと腹が立つ。まぁ、腹が立つという表現は正しく無いだろう。怒りで身体中の毛が逆立つ様だ。だが集中しよう。俺とドワイトは同時に走る。ドワイトが右ストレートを放つ。俺はその下に潜り胴を狙うがドワイトが左の腕で防ぐ。ギイィンと音が鳴る。

俺「何で斬れない!」

ドワイト「フンッ、俺の全身の体毛には魔力を通してある。そこら辺の甲冑より遥かに堅牢だぞ!」

格好はパンツ一丁なのに体毛のお陰で普通の鎧より頑丈なんて信じられない。第一、毛の硬さの表現に使わないだろ?堅牢なんて言葉!俺は体毛が比較的に少なく腕より切断出来そうな箇所を狙う。膝だ。目線でバレない様に狙ったが考えを読まれたらしくあっさり躱される。そして次はドワイトの左ストレートだ。
俺はまた刀で受け流し今度は毛の無い胸部、心臓を目掛けて突きを繰り出す。だがその攻撃をドワイトの右腕で防がれ弾かれる。今度は俺の攻撃を弾いた右手の爪で引っ掻きに来る。俺は左に転がりながら躱し今度は右脚のアキレス腱を狙う。
バチュンと音を立て俺の刀は奴の足下の小石を弾く。躱された。それ所か外回し蹴りの軌道で右脚が迫る。位置と高さから伏せて躱す。
その時何故か地球で飼っていた犬を思い出した。俺の腹の辺りで寝ていた犬が夢を見ていたのか急に後ろ足で俺の腹を蹴った。膝や踵のバネを活かした蹴りで中々に痛かった事を思い出す。
ドワイトは膝をたたんでいる。俺が仰け反ると前髪が跳ねる。俺は蹴りを躱す反動でひっくり返る。後少し反応が遅れたら頭が無かったかも知れない。犬に感謝だ。

ドワイト「外れたか。ちょこまかと良く動くな。いい加減観念してあの世に逝け!」

くそ!思ってたより遥かに強い!集中力が欠けてるのも痛い。落ち着け。まだ挽回出来る。皆んな簡単にはやられない。俺は本気で奴を見据える。
目を凝らし魔力の流れを見る。確かに奴の言う通り全身の毛に魔力が行き渡っている。しかも流れの経路はいずれも体内からだ。いつもの要領で魔力線を破壊して魔法を消去は出来ない。正確には体内から破壊する発勁の類いしか無いと思う。ただそうなると攻撃は素手って事になる。でもあの動きをする敵に武器無しでは対処するのは難しい。
要するに答えはもう出てる。[気]を刀に流して体内と体外、両方をまとめて断ち斬れば良い。問題は今まで物に[気]を流して破壊せず、維持するという練習はしてこなかった。要はまたぶっつけ本番で新技を決めなきゃいけない。今更だけど。
俺は目を閉じ集中する。全身から刀に意識を持っていく。刀の切っ先まで神経を行き渡らせる様に己の全てを[気]で満たす。俺は正眼の構えから八相の構えってやつに変える。

ドワイト「ほう!雰囲気が変わったな!腹を括ったか!」

俺「・・・・。」

ドワイトも全身に最大限の魔力を流し構え直す。何故か周りが静かになった気がする。今はまるで俺達2人しかいない感じだ。それだけ集中してるって事かな?数秒か、数分かは分からないが俺達は睨み合う。何処かでカツンと音がした。
俺は刀を振り下ろし、ドワイトは右ストレートを放つ。お互いがすれ違う。ギャリィィンと鉄が擦れる音がした。
ただその時、目の前に血が飛んでいた。俺は振り返る。やはりドワイトの血だ!
良し!これなら、行ける!!

ドワイト「チッ!くそ!」

俺は刀を横薙ぎに振る。今度は防御では無く後ろに跳んで回避する。奴は右脚を前に出しもう一度右ストレートを放つ動きをする。俺はそれを躱す為に動いた。しかし俺が回避行動を取っても右ストレートは来なかった。
さっきの動きはフェイントだった。右脚を軸に勢いを殺さず一回転、本命の左回し蹴りが来る。
俺はそれを躱したがもう既に右の蹴りが迫っていた。左の蹴りの時には次の跳び蹴りのモーションに入っていた。
俺はギリギリで回避し、一歩踏み出し真っ直ぐ振り下ろす。奴は飛び退き回避する。
流石に最初と状況が違う。俺の攻撃が通るとなると防御無視では攻められないらしい。

ドワイト「途端に強さが増したな。」

俺「・・・・。」

ドワイト「話す余裕も無いか。」

ドワイトが目を閉じ深呼吸すると全身から魔力が溢れ始める。全開か。次で決める気だろう。俺は脇構えで立ち、ドワイトはオーソドックスのファイティングポーズで構える。ドワイトの左ジャブを躱しながら接近、胴を狙いフルスイング。
だが一瞬で視界から消える。ここに来てフェイントかよ!俺を跳び越え背後に行く。着地と同時に左手の手刀で俺を攻撃する。俺は後ろに振り向く流れで下から上へ刀を振る。奴の手刀が当たる前に俺が腕を切断する。

ドワイト「ぐあぁ!ま、まだまだぁ!」

ドワイトは正拳突きを放つ。俺はそれを躱し、ドワイトを頭から真っ直ぐ断ち斬る。

ドワイト「がは!アーサー!すまん!」

ドワイトは仰向けに倒れ絶命する。その瞬間一斉に周りから歓声が上がる。ただ正直今はどうでも良かった。皆んなの所に行かないと。でもいくら速い馬に乗っても王都まで行けるのか分からない状態だった。
その時音楽が鳴る。俺のスマホだ。戦場だから音が聞こえるようにしたけど誰だ?画面を見るとノルンの名前が書いてある。うわ!また厄介事か?多分最初は怒りの一言だな。

ウルド「あんた!馬鹿じゃないの!何で簡単に分断されてんの!」

俺はあまりの金切り声にスマホを耳から離す。・・・まだ騒いでる。

ウルド「ちょっと!聞いてんの!」

俺「ん?めちゃくちゃ聞いてる。」

ヴェルダンディ「シリウスさん!早くジン君を助けに行ってください。」

ヴェルダンディの声だ。あっちはスピーカーにしてるんだな。

ウルド「ちょっと待ちなさいよ!そのあんたの推しを助ける為に電話してんのよ!」

ヴェルダンディはジン推しか。

シリウス「いや、今はそんな事どうでもいいんだけど。本題は?」

ウルド「今皆んながいるのはあんたが初めて魔王と戦った高台の広間よ!ただ今からじゃ馬を走らせても間に合わない。だから私の奢りで"足"を用意したわ!感謝なさい!」

スクルド「ねぇ。お姉ちゃん。代金割り勘だよね?少し足りなかったよ。」

ウルド「・・・・。」

俺「・・・・。」

俺「今、割り勘って言わなかった?」

ブツリっと電話が切れた。あいつ・・・まぁ、良いか。ここから直ぐに移動できるなら、そう思っていると突然後ろかな声が掛かる。

配達員「配達で~す。」

俺「ぬわぁ!ビックリした!いきなり話掛けるなよ!」

配達員「えぇ~、じゃあ少し離れた所からゆっくり来た方が良いですか?」

俺「いや、すまん。それはそれでイラッと来るわ。」

配達員「とにかくサインお願いします。」

俺「はいよ。で?物は?」

配達員「それです。」

デカい木箱が置いてある。ぱっと見はバイクが入ってそうなサイズだ。

俺「この箱どうすんの?」

配達員「ああ、後でこっちが回収します。」

そして箱が光り出す。木箱なのにエフェクトがSFみたいなのはどうなんだ?木箱が爆発する様にバラバラになる。中から本当にバイクが出た。だけどそれよりさっきまであった箱の残骸と配達員が消えている。回収早いな。さてと。

俺「というかバイク乗った事無いけど。」

バイクの上にあるペラペラな説明書がある。これ見て運転すんの?大丈夫かな?・・・・とにかくやるか。

俺「あ!ヘルメット!フルフェイス・・・
じゃないのね。ゴーグルと後は・・・。」

付属品の確認と操縦の仕方を確認する。

俺「さて行くか!」

俺は貰ったバイクで走り出す。
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