77 / 187
[Worldtrace]
クライド
しおりを挟む
初日は何とか生き延びた。だが玄人の騎士達はほとんどが初日で潰れた。後は学生が残ってるだけだ。唯一幸いと言えるのは、まだ戦いに慣れてる冒険者がいるという事だ。ただもしかしたら今日死ぬかもしれない。相手は魔物でも凄い数だ。死の恐怖は拭えない。
同級生「クライド!」
クライド「え!何!」
同級生「どうしよう!冒険者達が逃げる算段してる!」
クライド「だ、駄目だよ!ここが潰れたら王都が!」
同級生「だけど力のある騎士は動けないし、残ってる騎士達も士気が落ちて何も言えないんだ。おまけにこの都市に住んでる住民が戦う為に農具とかを持って集まってるんだ。」
クライド「どうして!」
同級生「自分達の家族とか故郷を守りたいからだって。」
守る?・・・死ぬかも知れないあんな恐い場所に何で行けるのか?気持ちだけでどうにか出来る事じゃない。
同級生「どうする?」
クライド「どうするって?」
同級生「上級生もいない司令官もいない状況じゃ戦えないだろ?どう逃げる?」
逃げる?確かに勝ち目が無い以上死ぬより良い。それで後はどうなる?ここが落ちれば、王都は火の海だ。でも自分達だけでは無理だ。幸いここには身一つで来ている。気付かれない内にこの都市を脱出する事は出来る。同級生達と一緒に逃げる為に外に出るとある家族の姿が目に映る。遠目に見た限り一般市民だと思う。これから戦いに行くのだろう。子供は何事か分からない様子だけど奥さんは泣いてる。周りで似た様な光景がいっぱい見える。
クライド「ねぇ。」
同級生「気にするなよ!このままじゃ皆んな死んじゃうんだぞ!」
クライド「逃げるってそもそも何処に逃げるのさ。王都もどうなるか分からないんだよ?生き残れるかも分からない。」
同級生「でもここにいたら確実に死ぬ。今は生き残れる確率の高い方に掛けるのが正解だろ!」
それはもっともな意見だ。何も自分から危険な場所に行く必要は無い。でもここで生きる人からすればそれは関係ないんだろう。守りたい。その一念だ。そんな時ある幼馴染に言われた言葉を思い出す。
"周りが変わらないならもう自分が変わらないと変化なんて起きないぞ。"
そして気付く。"ああ、そうかここだ!ここで変わらないと!"と。
クライド「ごめん。やっぱりここに残るよ。戦わなくちゃ。今変わらないと僕は変われないから。」
同級生「何の話だよ。とにかく僕は行くぞ。じゃあな。」
そして開戦の数分前、広場に冒険者と都市の住民、残りの動ける騎士達全員を集めた。
冒険者1「これから何が始まるんだ?こっちはそろそろ退散するんだけどな。」
住民「お、おい!俺達を見捨てるのか!」
冒険者1「そう言われてもな。騎士団だって逃げるんだろ?」
騎士「い、いや、そういう訳じゃ・・・。」
冒険者2「待ってくれ、ここには動けない親父やお袋がいる。いきなりいなくなられたら俺の家族はどうなる?」
住民「そ、そうだ!家は捨てられない!」
冒険者1「俺に言われてもな。騎士様からもなんとか言ってやってくれよ。」
冒険者2「そうだ!民を守るのは騎士の仕事だろう?こいつを説得してくれ!」
住民「ああ、俺からも頼む!」
騎士「ま、待ってくれ!こういう事は上の者に判断を仰がねば。私の一存では決められない。」
冒険者1「ハッキリしねぇな。素直に"逃げるから好きにしろ!"って言えないのか?」
冒険者2「ふざけるな!ここは"共に戦いましょう"と宣言する所だ!そうだろう!」
騎士「え!い、いや。あははは。」
住民「笑ってる場合じゃないだろう!」
案の定、騒動が起きる。ただの学生の身で何を言っても聞いてくれないかも知れない。でも皆んなに伝えないと。
クライド「皆さんすみません。僕はクライドと言います。騎士の見習いで学生をしています。この場にいる全ての人、皆んなにそれぞれ考えや想いがあるのは分かっています。それでもお願いします。力を貸して下さい。ここで戦わなければ王都は・・・いえ、国が滅びます。誰も家族や仲間を救う事が出来なくなります。僕も家族が死ぬかも知れません。大事な物、全部を守る為に協力して下さい!お願いします!」
冒険者1「はぁ~、確かにこのままだとそうなるよな。仕方ない。もう少し付き合うか。ただ代金分しか働かないぞ。」
冒険者2「俺は元々ここが故郷だ。最初から戦うつもりだった!言われるまでも無い!」
住民「俺達もやるぞ!」
騎士「わ、私も栄えある騎士団の一員だ。私達もやるぞ!」
演説のお陰か皆んなやる気を出してくれた。この程度で上手く行くは分からなかったがこれでとりあえずの準備は出来た。後は力の限り守るだけだ。
そして開戦・・・辛うじて魔物達を抑えている。土魔法で下から壁を出し大型の魔物をひっくり返し、小さい魔物は石の弾丸で撃ち抜く。穴を掘って落としたりもした。ただ数が減ってる気がしない。そんな余計な事を考えていた所為だろう。魔物が直ぐ近くに来ていた。
クライド「あ!しまった!」
魔物「ガァ!」
同級生「クライド!危ない!」
同級生が盾で弾きトドメ刺す。
クライド「え!どうして!」
同級生「なんかあのままお別れって、寝覚めが悪いだろ?」
クライド「うん!ありがとう!」
その時突然王都の方から物凄い光の柱が立つ。
同級生「何だよ!あれ!どういう事だよ!」
頭の中にある幼馴染の顔が浮かぶ。
クライド「大丈夫だよ。こんな状態であいつが何もしない筈が無い。僕達は目の前の敵に集中するんだ!」
同級生「わ、分かった!」
結果から言うと多少の死傷者を出したが、クライドは見事都市を守り抜き自身も生き延びた。
そして本来なら学園を卒業後成績によって準男爵もしくは男爵になるが彼はいきなり子爵になる。同郷の者達の中ではそれなりの出世だった。
だがこれはこの戦争が終わった後の話だ。まだ戦いは続く。
同級生「クライド!」
クライド「え!何!」
同級生「どうしよう!冒険者達が逃げる算段してる!」
クライド「だ、駄目だよ!ここが潰れたら王都が!」
同級生「だけど力のある騎士は動けないし、残ってる騎士達も士気が落ちて何も言えないんだ。おまけにこの都市に住んでる住民が戦う為に農具とかを持って集まってるんだ。」
クライド「どうして!」
同級生「自分達の家族とか故郷を守りたいからだって。」
守る?・・・死ぬかも知れないあんな恐い場所に何で行けるのか?気持ちだけでどうにか出来る事じゃない。
同級生「どうする?」
クライド「どうするって?」
同級生「上級生もいない司令官もいない状況じゃ戦えないだろ?どう逃げる?」
逃げる?確かに勝ち目が無い以上死ぬより良い。それで後はどうなる?ここが落ちれば、王都は火の海だ。でも自分達だけでは無理だ。幸いここには身一つで来ている。気付かれない内にこの都市を脱出する事は出来る。同級生達と一緒に逃げる為に外に出るとある家族の姿が目に映る。遠目に見た限り一般市民だと思う。これから戦いに行くのだろう。子供は何事か分からない様子だけど奥さんは泣いてる。周りで似た様な光景がいっぱい見える。
クライド「ねぇ。」
同級生「気にするなよ!このままじゃ皆んな死んじゃうんだぞ!」
クライド「逃げるってそもそも何処に逃げるのさ。王都もどうなるか分からないんだよ?生き残れるかも分からない。」
同級生「でもここにいたら確実に死ぬ。今は生き残れる確率の高い方に掛けるのが正解だろ!」
それはもっともな意見だ。何も自分から危険な場所に行く必要は無い。でもここで生きる人からすればそれは関係ないんだろう。守りたい。その一念だ。そんな時ある幼馴染に言われた言葉を思い出す。
"周りが変わらないならもう自分が変わらないと変化なんて起きないぞ。"
そして気付く。"ああ、そうかここだ!ここで変わらないと!"と。
クライド「ごめん。やっぱりここに残るよ。戦わなくちゃ。今変わらないと僕は変われないから。」
同級生「何の話だよ。とにかく僕は行くぞ。じゃあな。」
そして開戦の数分前、広場に冒険者と都市の住民、残りの動ける騎士達全員を集めた。
冒険者1「これから何が始まるんだ?こっちはそろそろ退散するんだけどな。」
住民「お、おい!俺達を見捨てるのか!」
冒険者1「そう言われてもな。騎士団だって逃げるんだろ?」
騎士「い、いや、そういう訳じゃ・・・。」
冒険者2「待ってくれ、ここには動けない親父やお袋がいる。いきなりいなくなられたら俺の家族はどうなる?」
住民「そ、そうだ!家は捨てられない!」
冒険者1「俺に言われてもな。騎士様からもなんとか言ってやってくれよ。」
冒険者2「そうだ!民を守るのは騎士の仕事だろう?こいつを説得してくれ!」
住民「ああ、俺からも頼む!」
騎士「ま、待ってくれ!こういう事は上の者に判断を仰がねば。私の一存では決められない。」
冒険者1「ハッキリしねぇな。素直に"逃げるから好きにしろ!"って言えないのか?」
冒険者2「ふざけるな!ここは"共に戦いましょう"と宣言する所だ!そうだろう!」
騎士「え!い、いや。あははは。」
住民「笑ってる場合じゃないだろう!」
案の定、騒動が起きる。ただの学生の身で何を言っても聞いてくれないかも知れない。でも皆んなに伝えないと。
クライド「皆さんすみません。僕はクライドと言います。騎士の見習いで学生をしています。この場にいる全ての人、皆んなにそれぞれ考えや想いがあるのは分かっています。それでもお願いします。力を貸して下さい。ここで戦わなければ王都は・・・いえ、国が滅びます。誰も家族や仲間を救う事が出来なくなります。僕も家族が死ぬかも知れません。大事な物、全部を守る為に協力して下さい!お願いします!」
冒険者1「はぁ~、確かにこのままだとそうなるよな。仕方ない。もう少し付き合うか。ただ代金分しか働かないぞ。」
冒険者2「俺は元々ここが故郷だ。最初から戦うつもりだった!言われるまでも無い!」
住民「俺達もやるぞ!」
騎士「わ、私も栄えある騎士団の一員だ。私達もやるぞ!」
演説のお陰か皆んなやる気を出してくれた。この程度で上手く行くは分からなかったがこれでとりあえずの準備は出来た。後は力の限り守るだけだ。
そして開戦・・・辛うじて魔物達を抑えている。土魔法で下から壁を出し大型の魔物をひっくり返し、小さい魔物は石の弾丸で撃ち抜く。穴を掘って落としたりもした。ただ数が減ってる気がしない。そんな余計な事を考えていた所為だろう。魔物が直ぐ近くに来ていた。
クライド「あ!しまった!」
魔物「ガァ!」
同級生「クライド!危ない!」
同級生が盾で弾きトドメ刺す。
クライド「え!どうして!」
同級生「なんかあのままお別れって、寝覚めが悪いだろ?」
クライド「うん!ありがとう!」
その時突然王都の方から物凄い光の柱が立つ。
同級生「何だよ!あれ!どういう事だよ!」
頭の中にある幼馴染の顔が浮かぶ。
クライド「大丈夫だよ。こんな状態であいつが何もしない筈が無い。僕達は目の前の敵に集中するんだ!」
同級生「わ、分かった!」
結果から言うと多少の死傷者を出したが、クライドは見事都市を守り抜き自身も生き延びた。
そして本来なら学園を卒業後成績によって準男爵もしくは男爵になるが彼はいきなり子爵になる。同郷の者達の中ではそれなりの出世だった。
だがこれはこの戦争が終わった後の話だ。まだ戦いは続く。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
スコップ1つで異世界征服
葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。
その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。
怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい......
※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。
※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。
※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。
※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。

王女殿下の死神
三笠 陣
ファンタジー
アウルガシア大陸の大国、ロンダリア連合王国。
産業革命を成し遂げ、海洋発展の道を進もうとするこの王国には、一人の王女がいた。
エルフリード・ティリエル・ラ・ベイリオル、御年十六歳の少女は陸軍騎兵中尉として陸軍大学校に籍を置く「可憐」とはほど遠い、少年のような王族。
そんな彼女の隣には、いつも一人の少年の影があった。
リュシアン・エスタークス。
魔導貴族エスタークス伯爵家を継いだ魔術師にして、エルフリード王女と同い年の婚約者。
そんな彼に付けられた二つ名は「黒の死神」。
そんな王女の側に控える死神はある日、王都を揺るがす陰謀に遭遇する。
友好国の宰相が来訪している最中を狙って、王政打倒を唱える共和主義者たちが動き出したのである。
そして、その背後には海洋覇権を巡って対立するヴェナリア共和国の影があった。
魔術師と諜報官と反逆者が渦巻く王都で、リュシアンとエルフリードは駆ける。
(本作は、「小説家になろう」様にて掲載した同名の小説を加筆修正したものとなります。)
無法の街-アストルムクロニカ-(挿し絵有り)
くまのこ
ファンタジー
かつて高度な魔法文明を誇り、その力で世界全てを手中に収めようとした「アルカナム魔導帝国」。
だが、ある時、一夜にして帝都は壊滅し、支配者を失った帝国の栄華は突然の終焉を迎えた。
瓦礫の山と化した帝都跡は長らく忌み地の如く放置されていた。
しかし、近年になって、帝都跡から発掘される、現代では再現不可能と言われる高度な魔法技術を用いた「魔導絡繰り」が、高値で取引されるようになっている。
物によっては黄金よりも価値があると言われる「魔導絡繰り」を求める者たちが、帝都跡周辺に集まり、やがて、そこには「街」が生まれた。
どの国の支配も受けない「街」は自由ではあったが、人々を守る「法」もまた存在しない「無法の街」でもあった。
そんな「無法の街」に降り立った一人の世間知らずな少年は、当然の如く有り金を毟られ空腹を抱えていた。
そこに現れた不思議な男女の助けを得て、彼は「無法の街」で生き抜く力を磨いていく。
※「アストルムクロニカ-箱庭幻想譚-」の数世代後の時代を舞台にしています※
※サブタイトルに「◆」が付いているものは、主人公以外のキャラクター視点のエピソードです※
※この物語の舞台になっている惑星は、重力や大気の組成、気候条件、太陽にあたる恒星の周囲を公転しているとか月にあたる衛星があるなど、諸々が地球とほぼ同じと考えていただいて問題ありません。また、人間以外に生息している動植物なども、特に記載がない限り、地球上にいるものと同じだと思ってください※
※固有名詞や人名などは、現代日本でも分かりやすいように翻訳したものもありますので御了承ください※
※詳細なバトル描写などが出てくる可能性がある為、保険としてR-15設定しました※
※あくまで御伽話です※
※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様でも掲載しています※
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる