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第1章
3 突然のデート②
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待ち合わせ時間は十時半。場所は上野公園にある国立西洋美術館の前。
私は吾妻橋にマンションを借りているので、上野公園へは二十分くらいで行ける。
十時頃に部屋を出て、十分前には待ち合わせ場所に着いていた。
午前の公園は一段と空気が冷たくて寒いけど、それが気持ちよくもある。
その日はよく晴れていて、日差しがじわじわと空気を温めていくのを感じながら愛美ちゃんの到着を待っていた。
すると、しばらくして携帯にメールが届いた。
場所がわからなかったかな、と思いながら見てみると、こんな内容が書かれていた。
"おはようございます! 優子さんすみません。ちょっと風邪引いちゃったみたいで、行けなくなっちゃいました。申し訳ないので、代わりに弟を行かせましたので、よろしくお願いします! また今度ご一緒させてください。弟(亮弥)の連絡先 090-XXXX-XXXX"
ええーっ……?
さすがにこれには困ってしまった。
わざわざ弟さんに来てもらわなくても、別に私は一人でいいのに。
ていうかいくら顔見知りとはいえ、代理で弟をよこすなんてある?
でももうこちらへ向かっているものを、途中で追い返すようなのも気が引ける。
どうしようか迷い、私は愛美ちゃんに電話をかけた。
「もしもし……すみません……」
「おはよう。風邪は大丈夫?」
「すみません、優子さんに移してもいけないしと思って……」
「それはいいけど、来られないなら私は一人で構わなかったのに……。ね、弟さん若かったよね、いくつ? 上野は来たことあるのかな? 美術館の場所も初めてだとわかりにくいかも……」
「あ、大丈夫だと思います。携帯で調べたら道順もわかるので……。普段それでどこでも行くんで」
「あ、そうなの……」
そういえば最近は携帯でルート検索もできるってどこかで聞いたっけ。
「弟は十八です。早生まれなんでまだ誕生日前ですけど、一応もう大学生なんで、大丈夫です」
「だ、大学生……十八……」
どうりで幼く見えたはずだ。
「とりあえず来るのを待ってみるね。愛美ちゃんもお大事に」
「はい……よろしくお願いします」
電話を切って、大きくため息をついた。
十八歳の子と、うまく話せるだろうか。
向こうもどうしていいかわからない状態だろうし、気まずすぎる。
とりあえずレンブラント展は、無理につき合わせるわけにいかないし、延期したほうが良さそうだ。
そう思いながら待っていたら、ふと視線の先にスラッとした美形な男の子が現れた。
薄いグレーのチェスターコートに白のニットセーター、黒のパンツ。
スタイリッシュかつ爽やかな服装で歩くその男の子は、携帯片手に美術館を見上げ、そのまま視線を下げた流れで私を見つけると、あっという顔をして急いで駆け寄ってきた。亮弥くんだった。
「すみません、遅くなって、あの……」
「ごめんなさいね、お姉さんから聞きました。他に予定入ってたりしなかった?」
「大丈夫です。でも今朝突然言われてビックリして……」
「そうだよね。ごめんなさい。私は一人で大丈夫だったんだけど」
「いえっ、俺は全然っ! どうせ暇だし、大丈夫です!」
「でも美術展なんて興味ないでしょ?」
「えっと……」
「コレなんだけど」
私は美術館の前の掲示板に貼られたポスターを指差した。
亮弥くんはそれを眺めてウーンと考え込み、
「あのでも、優子さん観たいんですよね?」
「そうだけど、私はまた後日でも……」
「それじゃ、観ます!」
「えっ、大丈夫?」
「美術展とか観たことないけど、優子さんが観たいなら、一緒に観ます!」
気を遣わせているかなと少し心配になった。
でも、最悪楽しんでもらえなかったとしても、若いんだし経験としてアリだろう。
「それじゃ、おつき合いよろしくお願いします」
そう言って笑うと、亮弥くんも嬉しそうな笑顔を見せた。
私は吾妻橋にマンションを借りているので、上野公園へは二十分くらいで行ける。
十時頃に部屋を出て、十分前には待ち合わせ場所に着いていた。
午前の公園は一段と空気が冷たくて寒いけど、それが気持ちよくもある。
その日はよく晴れていて、日差しがじわじわと空気を温めていくのを感じながら愛美ちゃんの到着を待っていた。
すると、しばらくして携帯にメールが届いた。
場所がわからなかったかな、と思いながら見てみると、こんな内容が書かれていた。
"おはようございます! 優子さんすみません。ちょっと風邪引いちゃったみたいで、行けなくなっちゃいました。申し訳ないので、代わりに弟を行かせましたので、よろしくお願いします! また今度ご一緒させてください。弟(亮弥)の連絡先 090-XXXX-XXXX"
ええーっ……?
さすがにこれには困ってしまった。
わざわざ弟さんに来てもらわなくても、別に私は一人でいいのに。
ていうかいくら顔見知りとはいえ、代理で弟をよこすなんてある?
でももうこちらへ向かっているものを、途中で追い返すようなのも気が引ける。
どうしようか迷い、私は愛美ちゃんに電話をかけた。
「もしもし……すみません……」
「おはよう。風邪は大丈夫?」
「すみません、優子さんに移してもいけないしと思って……」
「それはいいけど、来られないなら私は一人で構わなかったのに……。ね、弟さん若かったよね、いくつ? 上野は来たことあるのかな? 美術館の場所も初めてだとわかりにくいかも……」
「あ、大丈夫だと思います。携帯で調べたら道順もわかるので……。普段それでどこでも行くんで」
「あ、そうなの……」
そういえば最近は携帯でルート検索もできるってどこかで聞いたっけ。
「弟は十八です。早生まれなんでまだ誕生日前ですけど、一応もう大学生なんで、大丈夫です」
「だ、大学生……十八……」
どうりで幼く見えたはずだ。
「とりあえず来るのを待ってみるね。愛美ちゃんもお大事に」
「はい……よろしくお願いします」
電話を切って、大きくため息をついた。
十八歳の子と、うまく話せるだろうか。
向こうもどうしていいかわからない状態だろうし、気まずすぎる。
とりあえずレンブラント展は、無理につき合わせるわけにいかないし、延期したほうが良さそうだ。
そう思いながら待っていたら、ふと視線の先にスラッとした美形な男の子が現れた。
薄いグレーのチェスターコートに白のニットセーター、黒のパンツ。
スタイリッシュかつ爽やかな服装で歩くその男の子は、携帯片手に美術館を見上げ、そのまま視線を下げた流れで私を見つけると、あっという顔をして急いで駆け寄ってきた。亮弥くんだった。
「すみません、遅くなって、あの……」
「ごめんなさいね、お姉さんから聞きました。他に予定入ってたりしなかった?」
「大丈夫です。でも今朝突然言われてビックリして……」
「そうだよね。ごめんなさい。私は一人で大丈夫だったんだけど」
「いえっ、俺は全然っ! どうせ暇だし、大丈夫です!」
「でも美術展なんて興味ないでしょ?」
「えっと……」
「コレなんだけど」
私は美術館の前の掲示板に貼られたポスターを指差した。
亮弥くんはそれを眺めてウーンと考え込み、
「あのでも、優子さん観たいんですよね?」
「そうだけど、私はまた後日でも……」
「それじゃ、観ます!」
「えっ、大丈夫?」
「美術展とか観たことないけど、優子さんが観たいなら、一緒に観ます!」
気を遣わせているかなと少し心配になった。
でも、最悪楽しんでもらえなかったとしても、若いんだし経験としてアリだろう。
「それじゃ、おつき合いよろしくお願いします」
そう言って笑うと、亮弥くんも嬉しそうな笑顔を見せた。
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