大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

二つ名激突と二人の勇者7

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比喩でも嘘でも冗談でもない。金剣が柄だけを残し爆散。吹き飛んだ。
「はぁッ!?」
当然一番驚いたのは俺。
唯一の武器が急にぶっ壊れたんだ。そりゃそうなる。
だから、次に起こった事で一番驚いたのも俺だ。いや、勇者俺達だ。
それは、太陽よりもまばゆく燃える焔。
それは、鏡よりも鮮やかに物を写す氷。
それは、あまねくものを支える不動の地たる土。
それは、無形でありながら有形である物を破壊する風。
「四種類の……!?」
膨大な魔力を燃料にしているのは緋眼で見れば一目でわかった。
だが──この魔力、
『そうか、お前なら──そうか。なんせお前は理なんだからな』
シャルが何か意味深な事を呟くが、それを聞き返す前にウィルが口を開いた。
「魔法を生み出す剣かぁ…驚いた。まさしく魔法剣、魔剣だね。その手の魔剣は全部オリジン・ウェポン級……君も知り合いに槌人種ドワーフがいるのかい?」
残った柄を睨む。軽くなりすぎてしまった金剣。あるはずの身体を軽くする効果もなくなってしまったようで、身体がずっしりと重く感じる。
「まぁ、いないわけじゃないな。けどそいつとこの剣はほぼ無関係だ」
そう言った時だった。
一番近くにあった風の魔法が突然俺の方へ飛んできた。
「はぁ、え、ちょっ」
いつもなら難なく避けられたであろう魔法は、しかし満身創痍の今、到底避けられるものではない。
膨大な量の砂埃が風で舞い上がり、視界を一気に悪くする。
「…まさか自爆かい?呆れるよ」
ウィルの声が確かに聞こえた。
「…痛ぇ」
まるで目の前で強力な爆発が起きたような…
クソ、一体何が起きやがった。
重い身体を起こすと、握っていた物が変化しているのに気づいた。
運よく離さなかった金剣の柄、その先が──あった。
「!!」
俺の髪と同じ白銀に薄らと輝くそれは、よく見ると形は白剣と酷似しているようだった。
半透明の風の刃。それが柄の先についていた。
「なるほど、こりゃ俺にぴったりだ」
『………聖弾なのに剣なのか?無茶苦茶だな』
と言われても俺にだって聖弾がどんなものなのか知らないんだからな……
砂埃を切り払おうと、剣を軽く一振りする。
すると──風の刃が抜けた。
「『は?』」
そして抜けた風の刃が砂埃を真っ二つに切り裂き、そのまま直進──ウィルの胸をも切り裂き、空気が爆発。
膨大な量の風が荒れ狂い、訓練所の中を掻き乱した。
「ッ!?」
ここで初めてウィルの焦った声。
「…まさか聖弾って」
未だ浮遊を続ける土の塊がこちらに来るイメージをすると、風の魔法と同じようにこちらへ来、柄の先に白剣と似た形の刃を形成する。
それをさっきより真面目に狙い、剣の間合いのはるか外にいるウィル目掛けて振り下ろす。
すると真っ黒の刃が飛び出し、周りの空間を歪めながらウィルへと迫る。
それを氷の拳で破壊しようとしたウィル。しかし魔法の出力が違いすぎたようだ。
拳は容易く砕かれ、血を辺りにまき散らす。土の刃はひたすら重いようだ。
これを見て俺は確信を得る。
「これあれか、四種の魔法を刃の形に固定して射出するってのか」
『っぽいな』
とにかく検証は後回しだ。
「本気になってくれて、嬉しいよ!」
「俺ァ嬉しかねぇよ!!」
いつの間に剣と盾を拾ったのか、それを手に突っ込んで来るウィル。正直助かった。動ける気がしなかったから。
残った魔法は炎と氷の魔法。
氷を呼び寄せ刃を形作ると、半身身体を引く。
この一瞬で出し切ってやる。
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