大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

二つ名激突と二人の勇者5

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「くっ!」
何度切り込んでもすべて弾かれる。
その癖ウィルは苛烈に攻めてくる。必然的に俺の剣からは攻めが減り、守りが増える。
金剣が手元にないのも地味に致命的だ。身体がいつにも増してだるい。
黒剣を圧倒的膂力で弾かれ、晒した腹へ鞭のようにしなった回し蹴りが叩き込まれる。
「ッッッ!!」
勢いを殺しはしたものの、尋常ではない威力の蹴りが入った事実は変わらない。
再びせり上がってくる胃液を飲み込み、すぐさま起き上がる。
「うーん、ここまでやってもこの程度か。もしかしてレィアさん、君って本当にこの程度の実力しかないのかな?仕方ない」
ウィルがそう言い、剣を逆手に持ってクラウチングスタートのような体勢をとる。
「?、──ッッ!?」
直後、ウィルが掻き消えた。
『真下だ今代の!!』
シャルに言われて下を見た瞬間、猛烈な勢いで迫ってくる靴裏が見えた。
「がっ、!!」
マキナが反射的に俺の顎下を守り、打点をずらした。それでも首がもげるような衝撃が俺を襲い、口の中でゴギン、と嫌な音がして激痛が走る。多分今ので歯が口の中で砕けた。
「退場してもらおうかな」
「っ、誰が辞めるかよ」
ふらつく身体をスキルで制御し立つ。
それが不味かった。
戦技アーツ
それだけ言ったウィルは、戦技アーツの名前を言わずに戦技アーツを繰り出す。
身体に受けた衝撃は計十二回。
両足に四発、両腕に五発、腹と喉と額に一発ずつ。
その全てがおそらく打撃。恐ろしく重いそれが鎧を貫き、髪の防御も意味を成さず突き刺さる打撃。今ので多分、手足がイカれた。力が入らない。
恐ろしい威力の打撃を受けたにも関わらず、不思議なことに後ろへ飛ぶことの無かった俺の身体を掴みあげるウィル。
「死んだらごめんね」
わずかにそう聞こえた気がした。
直後、浮遊感。
天井に軽くつま先が触れ、そのまま落ちる。
下を見れば、もはやウィルは剣を握っていない。
燃え盛る右拳と凍える左拳、雷を纏う右脚と風巻き起こす左脚。
長く深く息を吐き、精神統一をするウィル。構えは明らかに戦技アーツ
本能が警鐘を鳴らす。
「ぐっ!!」
髪で強引に手足を動かし、どうにか回避しようとするが、空中ではどうしようもない。
『血界だ!!迎撃でも回避でもなんでもいい!!あいつの攻撃を避けろ!!』
「こと、わる!!」
『なっ!?』
あいつにだけは──
あいつにだけは、絶対血界を使わねぇ!!
戦技アーツ…《四元素戦技エレメンタル・アーツ》」
「マキナ!!盾!!」
『了解しました』
直後、巨大な盾が展開され、凄まじい音と共に衝撃が走った。
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