大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

二つ名激突と二人の勇者4

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過去、俺の煌覇を無傷で受け切った奴はいなかった。
ユーリアの魔法で作られる異形の騎士でさえ、威力を落として上から叩き落したり、受け切っても耐え切れず、消えていった。
純粋な威力のみをみるなら、俺の戦技アーツの中でも最も威力の高い戦技アーツだと言えるだろう。
それをウィルは──
「笑えねぇ。無傷かよ」
それも素手。わざわざ剣を放棄してまで、盾があるにもかかわらず、それを使わずに俺の煌覇を生身の身体で止めやがった。
「痛たた……まさか。無傷じゃないよ。ほら」
僅かに目尻を下げながら右手を俺に見えるように広げる。
ウィルの手のひらの皮が破けたのだろう、血が僅かに滲んでいた。
それたけ。
「流石に全くの無傷とはいかなかったか。流石だね」
「その程度、怪我のうちに入らないだろ」
足の傷を瞬く間に治してしまったのを見た後では、あの程度の傷は無いものと大差ない。実際ウィルも、「まぁね」と言って血を拭うと、そこには傷跡すら残っていなかった。
「チィ、化けモンめ…」
「何度も言うけど、僕はれっきとしたヒトだよ。少なくともそうあろうとしている」
床に刺していた剣を引き抜くと、軽く二、三度振る。その様子は全く問題なさげだ。
『確定だ、あいつのスキルは身体強化系。それもかなり強力なものだ。じゃなきゃお前の煌覇を素で受け切るには身体が持たないし、傷がすぐに塞がったのも納得が行く。銀剣を受け止めたのも同様の理由だ』
「ウィル、お前のスキルがやっと分かったぜ。身体強化系、それもかなり強力な奴だな?」
指を突きつけてそう言うと、ウィルは僅かに首を傾げる。
「うーん、ほとんど正解だけど、少しだけ違うかな。百点満点なら九十五点」
『なら隠し能力がある、か…』
「どっちかってーとあんまり嬉しくない発言だな」
一言呟き、鎧の内側に髪を仕込む。
自分の髪を全身に纏い、筋力の底上げを狙う。血呪と比べるとあまりに心もとない強化だが、昔はこれが当たり前だったんだよな…いや、武装度合いからして今の方が圧倒的に上か。
「どうしたのかな?」
「いや、何でもない。ちょっと昔のことを思い出してただけだ──よ!」
不意打ちで右の黒剣を投擲し、それを越える速度で距離をつめて踏み込む。
「おっ、と」
俺の黒剣とウィルの長剣が鍔迫り合いをし、盾で俺の鼻っ面を叩こうとする盾を拳で弾きあげる。
空いた胴に蹴りを入れるが、弾きあげたはずの左腕が急降下。俺の蹴りを盾で受け止める。
「お見事。けどあと一手、足りなかったね」
遅れて飛んできた黒剣をこともなげに避け、そう言うウィル。
「おいおい、お前が最初にどうやって一撃貰ったか忘れるなよ」
空いた右手には金に輝くことわり
それを思いっきり肩に振り下ろし──
「僕が何故、鎧を付けないか知ってるかい?」
金剣が肩で止まる。
「なっ」
「答えは単純。つける必要が無いからだよ」
長剣からまた手を離したウィルが、握りしめた拳を俺の鳩尾に叩き込んだ。
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