大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

二つ名激突と二人の勇者3

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ウィルの動きがガラリと変わった。
守りからの反撃と言った動きから一転して、攻め続ける戦法。
切って突いてショートタックル、剣の柄でも盾でも殴って足癖も若干悪くなってる。
この動き…
『真似られたか。今代の動きとそっくりじゃねぇか』
野郎…舐めてんのか。
その猛攻を全て銀剣ひと振りで辛うじて弾くが、全て防げる訳ではない。
鎧のあちこちにウィルの剣がぶつかる度に鎧が吹き飛び、その余波で下の肌に血が滲む。
『クソッタレ、が!!』
ウィルがなんの前触れも無く足を真下から蹴り上げ、俺の手を狙う。
それを銀剣で叩き落とし、剣を振った勢いそのままに身体を回転。今度は俺がウィルの頭を上からカチ割る勢いで蹴りを繰り出す。
それを盾で阻まれた瞬間、銀剣を片手に持ち替え、金剣を起こして二刀流になる。
「はぁっ!!」
俺の蹴りを止めたウィルが剣を両手で握り、下から切り上げるのを先に読んで回避。とんぼ返りをして一度距離を取るが、爆発音がした直後、既にウィルが至近距離まで接近。再び猛攻が再開されるが──こっちはここからが二刀流本領だ。
『オオオオオオッッッ!!』
銀剣の袈裟斬りをウィルが剣で相殺、金剣の突きを盾で逸らし、ウィルが逆に盾でクロスカウンター気味に顔を殴る。
盾が顔に突き刺さる直前で顔を横に振って回避。
しかしそれも読まれていたらしく、半壊した兜を突き破って盾が額に叩き込まれる。
「ッッが!!」
首をそらして衝撃をできるだけ軽くしたが、それでも今の一撃で完全に兜が割れ、血が一筋つぅ、と額から流れ落ちる。
威力も当然高い。ゴロゴロと後ろに転がって飛ばされ、即座に飛び起きて構える。
来て当然と思った追撃は、しかし飛んでは来ない。
「………?」
「僕がね、どうして《緋眼騎士》…レィアさんと戦いたいって言ったかわかるかい?」
「ああん?さぁなぁ……?戦ったことがなかったからじゃねぇか?」
「うん、それもあったんだけど、本当はそれじゃないんだ」
と、ウィルの視線が俺の顔ではない一箇所に集中している事に気づいた。
その視線の先は俺の腰よりやや下、だらりと下げたままの銀剣。
「君の戦技アーツ──《煌覇》を、一度でいいから受けてみたい──いや、受け止めてみたかったからなんだ」
何言ってんだこいつ。でも目が…なんというかキラキラしてる。本気のようだ。
上等、距離もそれなりによし。
「一撃だ。食らえよ──」
金剣を再び畳んで銀剣を両手で握る。
肩に担ぐと銀剣が赤く発光し、戦技アーツの構えに入る。
大したタメは必要ない。本日二度目の《煌覇》が──放たれる。
「《煌覇》!!」
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