大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

噂話と青頭

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翌日、若干寝不足になったものの、変な夢を見たりという事は無かった。
あれで終わり…という事なのだろうか。となると、あの主任とかいう男はやはり死んだのだろう。銀剣の生みの親という人物、余程天才だったのだろうが…求めるものが高すぎたのだろう。望んだ物がどんなものだったのかは少し気になるが、もしそれが完成していたのなら、戦争は全く違う形になっていただろうと思うと、安堵感もある。
それはさておき、いつも通りアーネとシエルを起こして支度を済ませ、学校へと行く。
そういや例の西学生徒もあと一週間ぐらいで帰るのか…まだ一週間もいるのか、あれが。
昨日は特にあの女の問題は聞かなかったが、ぶっちゃけ俺が寝たから聞かなかったって理由もあるだろうし…何かあってもおかしくはないな。
と思ってクラスに行けば、何やらみんなが騒いでいた。
「あ!レィア来た!」
「ホントだ!シィルさん来たよ!ねぇねぇ、やるの?」
「あ?何が?」
あまり喋ったことのない奴らが、急に俺の周りに集まって来ての第一声が意味不明過ぎた。ストレートに聞いてみれば、勝手に「なんだ、やっぱり嘘?」と変に納得されそうになるが、それをちょっと待てと呼び止める。
それに応じてくれたのは、たまに飯を一緒に食う男子グループの内の一人エリイク。通称エリ。
「俺、昨日早めに寝たから、訓練所から出た後に何があったか全く知らねぇんだよ。なんかあったのか?」
「なんだ、じゃあアイツが言ってるだけか…それでも受けるんだろ?」
「だから何が?」
舌打ちをしたい衝動を堪えて最大限愛想を込めてもう一度聞き返す。
「それがよォ、あの青頭が《剣姫》と決闘で戦って勝ったって言いふらしててよォ」
「は?」
《剣姫》が?剣を扱う事に関しちゃ天才級のアイツが、多少剣が上手い程度のアンジェに負ける?
まさか。
「あー、ちょっと待て、それガセじゃねぇよな?」
「俺もそう思ったんだけどよォ、それがマジらしいぜ?先生が審判したから嘘は無ェはずだし、《剣姫》もすんげェ不服そうだったけど、昨日の晩飯の時に認めてたぜ」
ふーむ……普通なら自分から傷口を抉るタイプじゃないだろうし、負けても黙るだろうな…多分決闘の方で強制されたな、《剣姫》。大方、この勝敗の事を宣伝しろとか何とかそんな感じの命令だろう。
「まぁ何となく事情はわかった。でもそれ、俺には関係無いよな?」
「まァ、ここまではな」
まだ続くのか。そろそろ朝礼でオードラル先生も来る頃だが。
「問題はこの後でよォ、アンジェがリベンジするんだとよ」
「へー、誰に?」
「話の流れで分かるだろうよ?もちろん《緋眼騎士》にだと。どうもお前、前に非公式だが例の青頭をボコったんだろ?それも完封で。目ェつけられて当たり前だわな」
…ん、ちょっと待て。
「へいエリ、まさかその話既に全校に広まってたり──」
「安心しろ、人がいちばん集まる夕飯時に大声で話してたんだ。広まらない訳がないだろう?」
……最悪。何がアンジェを駆り立てるのかは分からんが、どうやら余程俺にご執心のようだ。
逃げ道はないな…どうするか。
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