大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

来客と内容

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夜八時過ぎ、朝とは打って変わって控えめなノックが来客を知らせた。
「来たな…入ってくれ」
「あ、はい」
ベッドの横の椅子を勧め、テーブルを挟んで向かいに俺も座る。
「で?何の用だ」
アーネは何やら先輩に呼び出しされたらしく、今はいない。シエルは一人で本を読んでおり、静かにしている。
「えっと…この部屋広くない?なんか奥にもう一部屋あるし…」
「あぁ、十五号室はちょっとした事情があって、隣の部屋一つをブチ抜いててな。少しばかり広いんだ」
「へぇー…羨ましい…私の借りてる部屋はだだっ広いだけの物置みたいな部屋で、こんな立派な家具とかほとんど無いや…」
…うん?それって正真正銘の物置じゃないか?そう言えば…、と思って少し視線を逸らし、シエルの方を見る。
「………?」
シエルが最初に入れられる予定だった部屋って物置を改築して云々って話だったな。そこに押し込まれたか?
「それで、私の用事?って言うかなんだけど」
「ん?おう」
視線を戻し、正面の美しく青い目を見返す。
「どうやって一年生で二つ名持ちになったの?」
「あ?」
そんな事を聞きたがっていたのか。
「別に。魔族を倒しただけだ…………あぁ、瀕死のな」
一瞬、取り繕う前、こいつの目がホラ吹きを見る目になった。本物の魔族を見たことがあるな。これは。
「それだけ?」
「まぁ、ざっくり言うとな」
実際は仲間たちと馬車パクって勝手にアーネを探しに出て、ついでに魔族二体を屠ってアーネを取り返してきたって話だが…まぁ、そこまで言う必要はないだろう。
「………。」
途端に黙り込むアンジェ。何なんだ。
「なぁおい、話ってのはそれだ──」
ゾッとするほどの殺気。それが俺に向けられた。
「ッ」
胸元から咄嗟に取り出したのは銀剣。それが現実的な重みを持つ半瞬前、殺気が忽然と消える。
「…あれ?どうかした?」
アンジェが俺の右手が持つ銀剣を見てそう聞いてくる。
「…いや、何でもない」
シャル、今の──
『感じた。が、突然過ぎて特定までは出来なかった。すまん』
なら仕方ない。アンジェの可能性は?
『まぁ高いな。理由は何にしろ、この部屋にいるのはお前とアンジェとシエルだけだ。そうなると、アンジェぐらいしか思い当たらん』
だな。
だが、その証拠はないしな…
「で、話ってのはそれだけか?」
「え?あー…うん、もう十分だよ。バイバイ」
そそくさと去っていくアンジェ。…何だったんだ?本当に。
『…まぁ、面倒事じゃなくて良かったじゃないか?』
疑問形かよ。
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