911 / 2,022
本編
授業と青
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「…よし、起きないな」
上手いこと落下の衝撃を緩和させ、それでも少し痛む身体をさすりながらそっと起きる。
一方アンジェは落下の衝撃と、ほんのちょっとの外的要因で気絶。彼女を寮の前にこっそりと運び、飯を押し込むようにして食べた後、寮を飛び出して学校へ向かう。
アンジェは幸運なことに二年の新クラス、俺のクラスには関係ない。
学校が始まってしまえば、アンジェが俺に会うのは難しいだろう。出来ればこのまま約二週間、過ごしたいものだ。
『逃げてどうするんだよ』
…だよな。
正直、二週間も逃げられる気がしない。
礼儀作法の授業を適当に聞き流し、代わりに頭の中の《亡霊》と会話を始める。
『素直に話聞いてやれ…《神剣》絡みの話は終わったんだろ?なら別にいいじゃないか』
嫌な予感しかしねぇ。だから全力で避けたい。
『予感と言っても、結局は勘だろう?根拠がないなら、話を聞くぐらいならいいんじゃないか?』
まぁそうなんだが……相手はあの《神剣》の孫娘だぞ?何かあると思うんだが…それもかなり面倒な奴。
『でも逃げるにしたって二週間だろう?厳密には残り十日か?部屋も割れたんだし、逃げ切るのは不可能だろ』
それは…まぁ。
…そうだ、図書室。図書室に篭れば逃げ切れる可能性がある…か?
『中途半端に逃げて、期限ギリギリになってから面倒事を片付けるよりか、先に話を聞いて出来るだけ手を打つ方がいいように思えるがなぁ…』
シャルにそう言われれば、なるほどそうかもしれないと思い始めてしまう。
『まぁ、もしかしたらお前の言う嫌な予感ってのが外れる可能性もあるしな。どのみち、相手は《緋眼騎士》のお前を探してわざわざ話を持ちかけている。同じ二つ名持ちでも、ユーリアが特にそんな西学生徒に絡まれているという話は聞いていないはずだしな』
それなら、あいつは俺に用事があるのか、俺にしか頼れない状況なのか…
…仕方ない。
『次は逃げないのか?』
…まぁ。話ぐらいなら聞いてやるつもりだ。
そう言うと、シャルは『そうか』と短く返したが、その一言にはどことなく喜びが隠れているような気がした。
そしてその日の夕食時。
非常にご立腹のアンジェと食堂で鉢合わせた。
「いた!《緋眼騎士》!朝の恨みを──」
「はいはい。聞いてやる聞いてやる。だけど後からな。まずは飯。飯が終わってから俺の部屋に来い。そうしたら聞いてやる」
「へ?あ、はい」
俺がそう言ったのが余程驚いたのだろう。アンジェが珍生物でも見るような目で俺を見てきた。
「つ、次は逃げないでよね!?」
「わかったわかった。じゃ、後でな」
ひらひらと手を振って、いつものように三人で夕食をとる。
「…何かあったんですの?」
「別に。というか多分、これから起きる」
出来るだけ面倒じゃありませんように、と。
誰にかは知らないが、俺は思わずそう祈った。
上手いこと落下の衝撃を緩和させ、それでも少し痛む身体をさすりながらそっと起きる。
一方アンジェは落下の衝撃と、ほんのちょっとの外的要因で気絶。彼女を寮の前にこっそりと運び、飯を押し込むようにして食べた後、寮を飛び出して学校へ向かう。
アンジェは幸運なことに二年の新クラス、俺のクラスには関係ない。
学校が始まってしまえば、アンジェが俺に会うのは難しいだろう。出来ればこのまま約二週間、過ごしたいものだ。
『逃げてどうするんだよ』
…だよな。
正直、二週間も逃げられる気がしない。
礼儀作法の授業を適当に聞き流し、代わりに頭の中の《亡霊》と会話を始める。
『素直に話聞いてやれ…《神剣》絡みの話は終わったんだろ?なら別にいいじゃないか』
嫌な予感しかしねぇ。だから全力で避けたい。
『予感と言っても、結局は勘だろう?根拠がないなら、話を聞くぐらいならいいんじゃないか?』
まぁそうなんだが……相手はあの《神剣》の孫娘だぞ?何かあると思うんだが…それもかなり面倒な奴。
『でも逃げるにしたって二週間だろう?厳密には残り十日か?部屋も割れたんだし、逃げ切るのは不可能だろ』
それは…まぁ。
…そうだ、図書室。図書室に篭れば逃げ切れる可能性がある…か?
『中途半端に逃げて、期限ギリギリになってから面倒事を片付けるよりか、先に話を聞いて出来るだけ手を打つ方がいいように思えるがなぁ…』
シャルにそう言われれば、なるほどそうかもしれないと思い始めてしまう。
『まぁ、もしかしたらお前の言う嫌な予感ってのが外れる可能性もあるしな。どのみち、相手は《緋眼騎士》のお前を探してわざわざ話を持ちかけている。同じ二つ名持ちでも、ユーリアが特にそんな西学生徒に絡まれているという話は聞いていないはずだしな』
それなら、あいつは俺に用事があるのか、俺にしか頼れない状況なのか…
…仕方ない。
『次は逃げないのか?』
…まぁ。話ぐらいなら聞いてやるつもりだ。
そう言うと、シャルは『そうか』と短く返したが、その一言にはどことなく喜びが隠れているような気がした。
そしてその日の夕食時。
非常にご立腹のアンジェと食堂で鉢合わせた。
「いた!《緋眼騎士》!朝の恨みを──」
「はいはい。聞いてやる聞いてやる。だけど後からな。まずは飯。飯が終わってから俺の部屋に来い。そうしたら聞いてやる」
「へ?あ、はい」
俺がそう言ったのが余程驚いたのだろう。アンジェが珍生物でも見るような目で俺を見てきた。
「つ、次は逃げないでよね!?」
「わかったわかった。じゃ、後でな」
ひらひらと手を振って、いつものように三人で夕食をとる。
「…何かあったんですの?」
「別に。というか多分、これから起きる」
出来るだけ面倒じゃありませんように、と。
誰にかは知らないが、俺は思わずそう祈った。
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