大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

穴と休息

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よくわからないが、とにかく結界の穴が急に狭まり、魔獣達の進行が一時的にぐっと落ち着いた。
もちろん穴をくぐり抜けて入ってくる魔獣達はかなりの数いるのだが、大穴があいていた時と比べるまでもない程に減っている。
「…何が起きた?」
ヘルムを取ると、中から漏れる湯気が視界を遮るが、冷たい風がすぐに飛ばしてくれる。
そして目の前の結界はやはり穴が塞がりかかっており、今現在──三頭ほど同時に魔獣がその穴をくぐろうとして詰まっている。何してんだこいつら。
見た感じ、まだ抜け出すまで暫く時間がかかりそうだな。後ろから魔獣がこいつらごとブチ抜くまで…ざっと十五分って所か。
「マキナ、現状をヤツキに報告したい。出来るか?」
『了解しました・《千変鎧》から縦横二センチ・厚さ三ミリ使用しますが・宜しいですか』
「構わん。大至急行け」
言った途端、肩の辺りからペラり、と鎧が剥がれ、次いで飛んでいく。
「さて、今のうちに」
水を補給したりその他諸々のことをしたい。具体的に排泄とか。
そう思い立ち、急いで走る。
アドレナリン脳のヤバイ興奮のせいかまだ睡眠欲はないが、いつそれが切れて急に眠くなるかわからん。ついでに言うと疲労はそれなりに感じている。この身体には休息が必要なのだ。
マキナの損耗も激しい。途中で警告を受けたが、重力魔法に使っている魔力…つまり貯蔵している俺の血が半分を切ったらしい。
血そのものはついさっきまで倒していた魔獣の物とかもあるため、かなりの量があるのだが、それらは魔力を含まない。
このままだと、近々マキナの重力魔法は使えなくなると見てほぼ間違いないだろう。
水を汲み、その他諸々を済ませ、腹に飯もねじ込んだ。
周りを見ると、ここもかなり荒らされていたらしい。かなりの数の木の幹が削れ、枝は折れ、中には根っこからひっくり返されたものもある。
「ヒデェなこりゃ…」
そう思ったところで踵を返し、元いた場所に戻り始める。
その途中でマキナが小さく鳴った。
「なんだ?」
『ヤツキ様と・接触しました』
「よし、繋げ。出来るな?」
『了解しました』
────、
『──これでいいのか?こんなもので遠くの者と通じるというのは…便利だな…』
「ヤツキか、聞こえるか?」
『なんだ?《勇者》?聞こえているが…何用だ?』
「日が昇った途端、結界の穴が急に閉じた。何か知ってるか?」
暫く無言の時間が過ぎ、『分かった、判明した』と返ってくる。
『結界は日が昇っている間は強化されるらしい。理由は分からんが…穴はどのぐらいの大きさのものが空いている?』
「直径…目算で一メートルちょっとぐらいだったな。どうかしたか?」
『そうか。修復力は高いらしいな。それでも破れる時は破れるから気をつけろよ』
それが最後にメッセージは途切れる。
…さて。
ヘルムを下ろし、剣を再び握る。
『第二ラウンドスタート、だな』
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