大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

緋眼騎士と超巨人2

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『────!!』
衝撃、そしてまた衝撃。
俺の身体に落ちてきた拳がそのまま地面にも突き立ったのだ。
普通なら一撃でミンチだが、《血呪》で強化された肉体はそれに耐えた。
すぐさま身体を起こそうとするが、半分ほど起こした時点で二撃目の拳が視界に入る。
床を転がり、拳を辛うじて避けるが起きれない。
起きる暇がないのではない。立とうとしたら立てなかったのだ。
『マスター・両足が著しく損傷・立ち上がるのは困難です』
マキナがそう言い、視線を足へと向けると──両足が捻れていた。
いくら《血呪》で強化されていた肉体とはいえ、耐えきれなかったか。
『──っ!!』
視認した途端、遅れて激痛が頭を焼くが、それを即座にシャットアウト。今は痛んでいる暇はない!!
再び転がって拳を避けつつ、マキナに命令を下す。
『マキナ!足の装甲を厚くしろ!!』
『了解しました』
両腕の装甲がなくなり、代わりに足の装甲がより強く、硬くなる。
『ぬううああああああああああああああああああああ!!』
痛覚はなくとも感触はある。
折れた足の骨同士が擦れ、筋肉に刺さり、言いようもない不快感がそこから湧き上がる。
『マスター・身体に甚大なダメージが出ています・即時撤退を提案します』
『ざけんな。絶対に仕留める』
とは言え限界が近いのは確かだ。それなのに相手はまだまだ余裕。
『アァッ!!』
下からすくい上げるような蹴りを《血呪》で強化された足で飛んで回避。しかし折れた足ではほとんど飛べず、左腕が蹴り飛ばされる。
剥き出しの腕がべきゃり、と潰れるが、右手にだけ残っていた黒剣をその足に突き立て、力技で強引に切り裂く。
身体は限界に近い。血呪もまだ続いているのが不思議なぐらいだ。
それでも──勝つ。絶対に。
ふらりと拳を、蹴りを避け、黒剣を突き立てて横に引き裂く。
これを繰り返すしか、今の俺には出来ない。
『マスター・半径十メートル以内・マスターの後方に人の反応です』
『……あ?』
目だけをそちらに向けると、辛うじて視界に入ったのは、燃えるような赤い長髪。
たった一人で立ち、周りには誰もいない。
代わりに、その周りに渦巻くのは大量の魔力。
アイツ、一体何を────!?
『……がれ』
掠れた声が轟音に消され、俺の耳にすら届かない。
『ッッ、早く下がれ!!アーネ!!』
その声すら、ギガースの撒き散らす破壊に掻き消される。
『こいつには、魔法が効かないんだよ!!』
だが俺の声はやはり届かず、アーネが放った魔法はギガースに炸裂。
それは俺の予想とは裏腹に、その顔に見事着弾した。
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