大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

緋眼騎士と超巨人 終

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アーネの一撃を受け、大きく仰け反る魔獣。
攻撃も一瞬止み、たたらを踏んで体勢を立て直す。
その隙に俺はもう一つの黒剣と白剣を回収するが、金剣は遠くにあって回収出来ず、銀剣はどこかへ吹き飛び、見つけられなかった。
『マキナ、アーネに繋げ』
『了解しました』
メッセージが繋がったのと、ギガースが敵意をアーネに向けたのはほぼ同時。
『アーネ!!逃げろ!』
『嫌ですわ!!』
俺の命令に対して帰ってきたのは掠れた叫び声。
『貴方に守られてばかりなのはもう嫌ですわ!!貴方がそれで傷つくのも、目を閉じたままでずっと生死の境をさまよう貴方も、そんな貴方を助ける事も出来ない私も!!もう嫌なんですの!!』
そこまで叫んだところで──。
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
ギガースが動いた。
俺が付けた足の傷はほぼ塞がっており、勢いよく駆け出す。
『不味っ──』
ギガースの身体は大きく、その一歩も長い。
そしてアーネは既に詠唱を始めているが、絶対に間に合わない。
『マキナぁ!!六割……いや、八割解放しろ!!』
『了解しました』
即座に判断した俺は、《千変》の中に貯蔵してあった血液の約八割を解放し、同時に二つの《血界》を発動させる。
一つは《血呪》。途切れかかっていたその血界を強化、平常使用時の約五割増の効果を発揮させ、壊れかかった手足をそれでも酷使する。
切っているはずの痛覚が俺の頭を締め上げ、握っている剣の感覚すら痛みに変える。
だが、それがどうした。
引き出した血の大半は──本命メインはこっちだ!!
『第三血界!!』
右手が持つ黒剣を連続で二本、全力でギガースの足に投擲する。気休め程度にギガースの動きが止まり、その僅かな空白の時間で空いた右手が白剣を握る。瞬間、白い刃を覆い尽くす赤黒い刃が形成され、ビチビチと血が波打ちながら、その射程距離をも拡張する。
長さはおよそ──十メートル。
『《血刃》!!』
名前を呼んだ途端、ヴン、と音を鳴らせて形が定まる。
長さ約十メートル、触れる物を断ち切る絶対切断の刃を思いっきり──横に振り抜く!!
『あああああああああああああああああああああああ!!』
音は無く、手応えもなく、結果だけが眼前に現れる。
人で言う脛のあたりを両方寸断されたギガースが前のめりに倒れる様を。
あれではアーネが潰れる!!
『しまっ──』
剣を翻らせ、追撃の一振りを下から上に向かって放つ。
間に合うか──!?
しかしそれは杞憂に終わる。
見たこともないような大きさの火球がギガースに直撃、さらにギガースが内側から爆発する。
残ったのは巨大な足首だけ、あとは全て灰か塵になった。
『あぁ、よかっ──』
最後まで言うことは出来ず、意識がゆっくりと遠のいていく。
そう言えば、何が「よかった」なのだろうか。
自分の言葉の意味すら分からず、俺の意識は久しぶりに落ちていった。
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