大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

緋眼騎士と貴刃2

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ユーリアが宣言したと同時に、彼女が地面を強く蹴った。
一度の跳躍で地面を滑るように低く跳び、俺の間合いにまで急接近してくる。
『──ん?』
「《バレット・ブレイズ》!!」
アンダースローで下から上へと九つ、連続して扇状に打ち出された炎の塊。
なるほど、魔法で小手調べか?
弾速もそれなりに早く、込められた魔力も大したものだが──。
『温いな』
一番手前の炎弾をあえて銀剣の面で押しつぶすようにして強引に相殺、生み出された爆発が地面と銀剣の間、逃げ場を探して荒れ狂った結果、《千変》の効果も併用して軽くなった俺はその爆発を利用、宙に舞い上がる。
『…中々の火力だったな。まさか──』
シャルがそういう程度には火力があった。シャルのセリフを引き継いで代わりに俺が言う。
『まさかこのクソ高い天井まで打ち上げられるとはな…』
『だな』
いつの間にか張られたフィールドは特大サイズ。半球状のフィールドの天辺がちょうど高すぎる程に高い天井にくっついているのだが…そこに手が届いた。
『よっと』
左手の《千変》を巨大な鉤爪状に変形、天井を掴んでぶらりとぶら下がる。
『いい景色だな…』
『これ以上無いぐらい殺風景だろ』
高い所だとなんかいい景色だと思わないか…?思わないか。
『それよりほら、下見ろよ』
『ん?』
ちらりと見てみればユーリアの周りに無数の魔法陣が。
内包する魔力は──ちょっと二度見するぐらいには込められてた。
『──ヤバくね?』
『あれ食らったら流石に《勇者》の《魔法返し》でも貫通するな。天井そこ、完全に的だぞ』
『血界の使用ってもちろん…』
『禁止。誰が見てるか分からん以上はな』
だよな。
『ほらほら、来るぞ来るぞー』
『わかってるよッ!!』
ぐいっ、と身体を百八十度回転、天井に足裏をくっつけ、さらに足をたわめる。
右の手が握る銀剣は肩に担ぎ上げ、緋色に染まった目は眼下の紫の少女に照準を合わせる。
向こうも俺を見上げ、同じく剣を構える。
空白が一瞬、生まれた。
直後、始動。
「並列発動──喰らえ!!」
戦技アーツ──《潰断かいだん》ッ!!』
戦技アーツ発動の直前に見えたのは、色とりどりな魔法の数々。
炎の鳥、氷の馬、土の蛇に雷の龍。
一瞬で見えたのはそこまでで、もっと数があったのは見えたのだが、それが何かは分からなかった。
俺は上から落ちつつ、戦技アーツの輝きで白く染まり、高速回転しながら下のユーリア目掛けて落下。
いくつもの術式を同時に相殺や減衰させずに放つというのは流石耳長種エルフ、繊細な技が得意なのだろう。
だが──複数の術式を操るのは彼女にでもまだ難しいのだろう。
魔法と魔法、その隙間が…まだ甘い。
僅かな隙間を一瞬で駆け抜け、ユーリアとの距離は零。
俺の領域で──俺の戦技アーツの射程内だ。
「なっ──!?」
『喰らえッ──!!』
俺の銀剣が落下と回転の勢いを重ねてユーリアへ目掛けて振り下ろされた。
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