大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

緋眼騎士と鴉

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シャル、今ので何人いった?
『二十二全部だ。凄まじい一撃だったな』
あぁ、これが二つ名持ちの本気か。
だが──。
《雷光》も限界か。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…」
飛ばしていた欠片を手の形にして《雷光》の襟を引っ掴んでこっちに無理矢理引き戻す。
どうやら立つのも辛いらしく、《雷光》はそのまま座り込んでしまった。
『大丈夫──じゃ無さそうだな』
「すまないな。私は元より短期決戦型なんだ。今の一撃で回復した分も撃ち切ってしまった」
『なんだ使えねぇ』
「酷い言い様だな」
『だが、充分すぎるぐらいにやってくれた。あとは──』
チラリと外を見る。
そこには、今まさにこちらに踏み入ってくる人影が二つ。
一つは笛吹男のもの。
しかし手足は震え、目は泳いでいる。本人の戦闘能力は低そうだ。
そしてもう一つはずっと一人で俺の事を見ていた指揮官らしき人物。
真っ黒な外套をつけ、顔はさっぱり分からないが体格からして恐らく男。…どこかで見た事のある気が…。
『…あれはもしかして…プクナイムの時に会った《クロウ》か?』
シャルがそう呟く。
『…あぁ、言われりゃ確かに《鴉》だな』
「あの男の事を知っているのか?」
『え?あぁうん、まぁ。少し前に学校長の命令で出かけた時に知り合った………敵?』
「敵なのか…」
そう言うと、《雷光》はまだ立とうとする。
どうやら自力で立つことが難しいほど消耗しているらしく、俺に寄りかかって無理矢理立とうとしている。
『座ってろ馬鹿』
俺が立とうとする《雷光》から離れると、《雷光》はいとも容易く崩れ落ちる。
「おい、立てないだろう。手を貸せ。戦う」
『手を貸さにゃ立てねぇ奴を戦いに放り込んでもせいぜいが足でまといだボケ。せめて立てるようになってから来い』
そう言って後ろに投げ飛ばし、逆に俺は前へと進む。
『よぉ。えーっと…《鴉》だったか?合ってる?ほら、プクナイムで楽しく過ごした──』
答えは俺の言葉を切り裂くようにして鋭く飛んできたナイフで返された。
ナイフは次々投げられるが、俺はそれを全て金剣の力で軽くなった身体で避け続ける。
精密かつ鋭いその攻撃は確かに一流。どれも急所を狙っているし、避けた先にも別の一撃が俺を狙っている。
『まぁまぁ、そんな怒らないで。どしたの?何か嫌なことでもあった?彼女にフられたとか?』
『今代の…お前、ついさっきまで喋るのもキツいって…』
今もキツいけど、そんな雰囲気出したらヤられる。
と、《鴉》の攻撃が唐突にピタリと止まった。
「嫌な事なんてないさ。むしろ──」
ダラリと下げた手がフードを掴み、剥ぎ取った。
その下の顔は。
「楽しくって仕方ないな」
『……あれ?ヴォルテール君?』
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