大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

鴉と過去

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どこかで見た事のある…と思っていたが、プクナイムの一件より前、森でのふた班合同訓練。
そこでの一件は俺も覚えている。
そして、彼も絶対に覚えている。
やけにギラギラとした目で俺を見ながら《クロウ》は──ヴォルテール君は、噛み付くように言葉を吐く。
「俺はお前の…お前達のせいで全てを狂わされた!親の期待を背負って入学して、僅か一ヶ月で退学させられたんだからな!あれから暫く、地面を舐め、汚泥を啜りながら生きていたさ。だが──おかげで新しい道が見えた」
さっきまでとは一転、饒舌になった彼はまだ喋る。
「西部第二聖女直属英雄育成学校──お前らの言う所の西学に拾われたんだ!」
へぇ、西学ってそんな名前だったんだ。
それからもヴォルテール君はまだ喋る。
どれだけ自分が苦労し、どうやって今の地位──聖学で言う所の二つ名持ちになったのか、など。
だが──。
『なんだ、
「──何?おいお前、何をしている」
銀剣を片付けながら、思わずそんな言葉が口をついた。
『俺も少しだけな?迷ってたんだよ』
西学の襲撃は学校ぐるみでのものだ。
明らかに何者かの計算によって企てられ、計画されたものだ。
だから俺は、もしもこの計画によって据えられた頭が強制させられて作られたものであることも考えていた。
たとえば、その能力スキルがあるからという理由で仕方なく、学校側から命令されたから、とか。事実、ハーメルンによって扇動された者達はこれに近いだろう。
しかし、そうではないようだ。
むしろ進んで、自らこの作戦に立候補したようだ。
だったら。
『遠慮も情けも容赦も要らねぇよなぁ?クソ鴉!!お前が今からしていいのは懺悔と謝罪だ!』
「上等だ!聖学箱庭の中の騎士気取りが!あの時の復讐、お前とあの女への恨みは生涯薄まる事はないぞ!!」
あぁ──。
つい先程までなかった熱が身体を動かす。
力が抜けていた四肢に新しく活気が叩き込まれる。
どことなく向かう先を見失い、そして沈黙していた感情がそのはけ口を見つけ、身体を動かす。
沈黙していた緋眼が意思を持ち、今までとは比べ物にならないほどの情報が流れ込んでくる。
対して向こうも本気を出すようだ。
バサリと翻った黒い外套、全てを覆う様な闇の中ではためいた外套の内側を緋眼で覗くと、その内側には何十本もの異なる短剣が括られているのが見えた。
それらを自在に操るのが彼のバトルスタイルなのだろう。
俺達はおろおろとしている笛吹男を完全に無視し──衝突する。
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