大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

襲撃と銀閃

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シャルの索敵範囲は非常に広く、ぶっちゃけ男子くんなんて要らないレベルだったが、それだと流石に怪しまれるかと思って一応男子くんを見張りに立てていたのだが…まぁ、それよりも。
とにかく、一分か二分程度時間があるというのが大切な事。
喚く二人をやや強引な手段で気ぜ…もとい眠らせ、控え室放り込──んだら女子二人のところに男子一人の状況になってしまうので、何となく不味いと判断し、男子くんを寝袋に突っ込んでカウンターの内側に転がしておく。
『おい、なんであの二人を置いといたんだ?』
あ?シャル?ちょいと今時間ないから後からで。
二人を寝かせた後、急いで二階に戻って細工をし、それが終わればまた一階で敵を迎え撃つために階段へ。
銀剣を抜き、口の中で歌でも歌うように言葉を紡ぎながら大急ぎで階段を駆け下りると、今まさに九組目の襲撃者が突っ込んできたところだった。
数は?
『四。剣一斧一不明二』
面倒な。
既に襲撃者はやけに壊れにくい椅子やテーブル、壁などに目掛けて武器を思い思いに振りかぶっている。
呼吸をあまり乱さないように気をつけながら銀剣を構え、床を蹴る。
新品のように光る床がギシリと音が鳴るほど全力で蹴った結果、一番手近なところにいた、壁に目掛けて剣を振る襲撃者の懐に入る。
「!?」
あまり力は入れずに下から上へと薙いだ銀剣は、襲撃者の身体をいとも簡単に浮かせ、そのまま天井へ磔のように叩きつける。
…少し加減を間違えたか。
『力を抜いていてもその剣の力は強力だ…知ってるはずなのに、珍しい失敗をしたな』
いつも通りのつもりだったんだがな…。
まぁいい。
『後ろ、斧』
振り返りざまに横薙ぎの一撃、それを斧使いは受けるのではなく逸らせる。
…ん?
「久しいな、《緋眼騎士》」
よくよく見れば、初日にも会ったやたらめったら硬い大男だった。
面倒な。
俺の身体が泳いだほんの数瞬、大男は俺がギリギリ受け止められるような力で鍔迫り合いをさせる。
躱せは…しないか。銀剣が相手の斧とガッチリ噛み合い、抜ける気がしない。
「どうした?今宵はやけに静かだが。前の時はよく喋ったではないか。そうだ、俺の告白の答えは──」
──ぷちっ。と。
そんな音が聞こえた気がした。
『お前…沸点低いな…』
知るか。ギルティだ。
「『その姿は彼の者のつるぎ、盾である』」
ガゴン、と。
さっきから少しずつ解除して、最後の言葉ワードを保留していたのを今。
解放した。
「ふっ!」
もはや鞘となった銀剣を滑らせ、中から黒剣を引き抜きながら斧の間合いの内側、大剣の間合いの内側、拳と拳の間合いになるまで接近し。
両の双剣を逆手に掴む。
「スキルを使え──全力でな」
俺の気迫に押されたのか、顔を一瞬で強ばらせた大男が一気に硬くなった──ような気がした。
戦技アーツ
腰だめになり、相手の腹のあたりに狙いを絞る。
ここを──斬る。
「《終斬撃しゅうざんげき》」
右手が七回、左手が六回。
大男の腹を刻んだ。
その衝撃が背中まで貫き、大男は逆の壁の方まで吹き飛ぶ。
「決まってる。ノーだクソ野郎」
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