大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

撃退と西学

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「ふぅ、これで何組目だ?」
二回の窓から襲撃者をぶん殴って吹き飛ばし、その場で一息つく。
今回のパーティは下に一人、上に四人送り込んで襲撃してきたため、下の階の一人を蹴散らして上の階に俺が助太刀した。
もはや奪取を狙っているのではなく、ほとんど店の破壊を狙っている手口だ。
「お疲れ様です教官…えーっと、今ので八組目ですね」
「そうか…」
壁にかかった時計を見ると、時刻は丁度十二時。防衛を始めたのが九時半で、最初の襲撃は十時頃…二時間で八組だから、十五分に一組ペースか。もちろん、実際にはもっとバラつきがあるが…。
「数、多くね?」
そんな事を思える程度には来ている気がする。
そもそも、五人前後で八組だから、単純に考えると既に四十人近く襲撃してきている。
丸々ひとクラス襲撃しているようなものだ。
まぁ、傷を治した者が再び攻めてくることもルール上なんの問題もないので、実際は使いまわしているのだろうが…それにしたって多い。
そして、連戦ではないが、中途半端に挟まれるような休憩が逆に疲労を感じさせているような気もする。
幼い頃から戦い慣れていた俺ですらそうなのだ。隠そうとしている二人の疲労もかなりの物だろう。
「俺、昨日はほとんど寝てたから知らねぇんだけど、起きてた時はずっと相手来なかったぞ…?」
まぁ、人払いの魔法の結果でもあるのだろうが。
「…ジャフ…あぁ、初日の防衛組の一人なんだけど」
少し考えながら男子くんが口を開く。
「初日は一晩とおして四組しか来なかったらしいよ。流石にこの数は…異常じゃないかな」
「…ふむ」
既にその倍の数が来ているのか。
本気で落としにかかっているのだろう…しかし。
それにしては、あまりここにではないだろうか?
既に二つの店を落とした西学だが、それでも攻めてきている余裕があるという事は、まだ生徒が…店を取っていないクラスが存在するという事だ。
仮に店を持っているのが聖学こちら側で言う所の新一年、旧一年のようなクラス──まぁ、新しく出来た学校に新旧もクソもないのだが──だったとしよう。
さらにそれとは別に、俺たちへ攻めてくるクラス…仮にこれを新二年に当てるとしたら。
当然、最低もう一つ旧クラスが存在するはずだ。
そのクラスは…一体どこを攻めている?
どこの店も、ひとクラス分の戦力じゃあ足りないだろうし、西学は誕生したばかりだ、まだ教育が出来きっていないだろうから、戦力的にもそもそも問題が…。
「…ダメだ、わからん。なぁ、誰か西学のクラス割みたいなの知らねぇ?」
ダメ元でそう聞いてみる。もし分かれば、後どのぐらい戦えばいいかわかるかもしれないしな。
「えっと…一年ふたクラス、二年ふたクラス、三年ふたクラスですねー」
女子ちゃんが答え、
「…うん?クラネシナさん、それっておかしくない?」
男子くんが問う。
「ふぇ?何がですか?」
「だって、今年出来たばかりなんだからさ、一年がふたクラスあってもおかしくないけど、二年と三年があって、ふたクラスあるのっておかしくない?」
確かにそうだ。
そもそも西学は今年初めて出来たはず。
二年三年があるのがおかしい…。
「いやぁ、二人とも知らないんですか?」
当然のように女子ちゃんが言う。
「西学って、一年は普通に募集したんですけど、二年以上はギルドから人を回してもらったんですよ。だから、技術的に上の人を『一年、或いは二年の教育課程を通った』事にしているんですって」
「…は?」
「もちろん、年齢はある程度絞られてるらしいですがねー」
女子ちゃんがそう言ったと同時に。
『今代の』
来たか?
『来たぞ』
「……はぁ」
「どうしたんです?教官?」
「無礼なお客さんだ。迎え撃つぞ…あぁそれと」
ふと見上げた時計は、きっかり十二時十五分を指していた。
「お前らは休め。寝てろ」
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