大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

片付けと怪我

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「あー…キッツ…」
『お疲れさん』
敵魔族が張った人払いの魔法が切れるまで、三十分ほど時間が余っていた。
あれよりも後にまだまだ話す気があったのかもしれないが、そんなことは知らない。
そんなことより、やらなければならない事があったので、そちらを大至急やらせてもらった。
まぁつまり、ぶっちゃけるなら証拠隠滅か。
壊れた椅子だの。
焦げた天井だの。
同じく焦げた床だの。
熱で割れた窓だの。
その他諸々を大急ぎで修復し、前と遜色ないようにした。
壊れた椅子は《千変トンカチ》片手に補修。
焦げた天井はカンナで薄く削り、綺麗に。
同じく床もカンナで。
割れた窓はスペアと取り替えた。
あと残っているのは俺自身の怪我だが──。
「言う訳にゃあいかんよなぁ…」
コトがコトだ。アーネにもいうことは出来まい。
魔族が英雄のフリして話しかけてきて、しかも話の内容が軽く機密事項みたいなモンで、とんでもない魔法ぶっぱなして逃げた。
そんなことを言えば大騒ぎになるのは目に見えている。
『怪我の具合はどうだ?』
「かなり酷い火傷ってところだ。炭化はしてないがな。巨大な鉄板で焼かれたみたいになってやがる」
咄嗟に《千変》を纏ったのだが、今思い返してみるとあまりいい防御方法ではなかったかもしれないな。
もしも服など無く、鎧が直に肌に当たっていたら鉄板の上の肉と大差なかった。いや、全裸で付ける趣味などないが。
熱を帯びた鎧はむしろ装着者に牙を剥く。それを実感した。
『……見てきたが、たしかにかなり酷いな…服の下はほとんどじゃねぇか』
だから座れねぇんだろうが。ずっと立ったまんまだ。
「今が秋で本当によかったよ。夏場だったら一発でバレてた」
顔は呼吸確保のために少し空間を開けていたのが幸いした。もしそうじゃなかったらと想像するとゾッとする。
ちなみに、手には髪を回していたのでほとんど焼けていない。
『痛くないのか?』
「痛覚切ってるからあんまり。明日、タイミング見計らって適当に薬買ってくるか…」
『それで大丈夫なのか?今すぐ手当をした方が…』
「そいつになんて説明すんだよ。こんな大火傷、明らかにおかしいだろ」
薬屋で薬を買っても怪しまれるだろうが、深くは聞くまい。
『火傷はほっとくと危険なんだがなぁ…』
「どんな怪我もそうだろ…おっと」
アーネ達が帰ってきたのが見えた。
「あれ、レィアさん起きたの?」
「よぉ。ちょっとばかり迷惑な客が来たからお帰り願った。まぁ、大したことは──」
「あなたちょっとこっちへ来なさい」
アーネに手首を捕まれ、ぐいっとカウンターの奥、控え室に連れ込まれた。
「んだよ唐突に。そんなに強く引っ張らなくても」
「この火傷は何ですの?」
「……あー…」
速攻でバレた。
何でだ。
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