大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

二つ名持ちと協戦2

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放り投げた鎚が、素早く伸びる。
それは俺の肩の上を通り過ぎ、背中から俺を攻撃しようとしていた誰かの顔を正確に突いた。
「ぐっ!」
まぁ、不意打ちならそうそう対処は出来ないよな。
「へー、変わった武器だね!」
「んー?いや、これは武器じゃなくて──」
「おい!!矢が来るぞ!!」
そう叫んだのはルト先輩。
「は?矢?」
なんでそんなもんが接敵した後に射掛けられるんだ?
ともかく、飛んできた弓矢に対し、俺はひとまずこれを避け──られねぇな。これ。
何百本あるんだ?これ。
「ジャンか。あいつも本気だな」
「え?」
まさかこれ、一人が射ったのか?
「伏せてッ!」
「伏せられるかボケ!」
依然として前衛と戦っている俺が急に伏せれば、普通に仮面か校章壊されて終わり。
それより、三年先輩達は一緒に射たれる気か?
山なりに射掛けられた、空を覆うような数の弓矢は。
「《ライトニング・ブラスト》!!」
後方に構えていた《荒野》の魔法でそのほとんどを焼き尽くされた。
「すっげぇ…」
「流石だねー!本気のシクラナちゃん、久しぶりに見たよ!」
「あぁ……全部撃ち落としてくれてたら百点だったな!」
撃ち落とし漏らしたのだけでも、俺達二つ名持ち達の数より圧倒的に多い!!
それらが、空中で方向を俺達の方向へ正確に向き直して飛んでくる。
『…あぁ、お前達だけを狙って射つのなら混戦中に射掛けても問題ない…むしろ、的をその場で釘付けにした方が効率いいわな』 
納得してる場合かッ!!
俺は即座に目の前にいた先輩を蹴飛ばし、鎧──《千変》を平たく伸ばして素早く巨大な盾を作る。
「《不動》!入れ!」
「!ありがと!」
手を伸ばして《不動》を盾の内側引き込むと同時に、壮絶な音がした。
鉄を鉄で削り殺すような、その時に漏れる悲鳴のような
『今…の、──からまわ──まれて…ぞ』
シャルの声すらほぼ聞こえないような声は、時間にして、恐らく一秒か二秒の悲鳴。
それが収まると、俺と《不動》は示し合わせたように別れて盾の影から出る。俺は左手、《不動》は右手から。
「ふッ!」「やぁっ!!」
逆に回り込もうとしていた先輩に、銀腕つきの左ストレートをお見舞、狙いはあやまたずに胸の校章を破壊する。
向こう側の《不動》も撃破したようだ。
「それ、盾だったんだね!」
「いや鎧」
「…えー、それ万能過ぎない?」
そういう代物になっちゃったんだから仕方ない。
文句は受け付けないぞ。
「全く…私達は無視か?」
《雷光》が非難がましく言ってくるが、コイツは何を言っているのか。
「お前なら…っと、《雷体化》で避けられるだろうしッ!はっ!いらんだろ?」
事実お前、無傷だし。
『背後注意な』
おーけー。
「せいっ!」
「…まぁ、確かにそうなのだがな…《逆鱗》やウィル様はいうに及ばずだし…手を貸そうか?」
「はっ!三対一ぐらいなら余裕だね!」
倒せるかどうかはまた別の話だけど。
…ルト先輩なら、あのクソでかい剣でも盾にすれば大丈夫だし、ウィル…ウィルについて、俺はよく知らねぇんだよな…。
「銀腕解除…《千変》、部分装着」
『前々から思ってたんだけどさ、それって言う必要あんの?』
あー、実はあるんだよな…。
理由は近々分かると思うんだが…。
ともかく、左の銀腕を解除し、《千変》を両腕だけにつける。
そうすると鎧の大部分が余るため、余った部分を両腕に剣の形を取って装着する。
あぁもちろん、現在進行形で先輩達と戦ってる。
避けながらそれらを装着し、俺は構える。
「《緋薙》!」
チッ、防がれたか。
だが、これなら。
『「リハビリに丁度いいな」』
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