大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

二つ名持ちと協戦

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──ワァアアアアァァアアァァアアァァ!!
「──!?なんっ」
地面を揺らす声の発生源は、向こう側、三年合同の方から。
広い広いこの広場の端と端、俺達の向かいに立つアイツらが、鬨の声を上げたのだと気づくのに、一瞬遅れた。
この気迫──負けられるか。
「行くぞッ!!」
続いてこちら。ルト先輩に言われて出た声は短く、しかし鋭く。
誰と示し合わせた訳では無いが、自然と腹の底から湧き上がった声を思いっきり。
「「「応ッ!!」」」
その場の二つ名持ち全員の声が揃って吼えた。
そして、誰が「突撃」言ったか。いや、誰も言ってなかったかもしれない。
気づけば、俺は先陣を切っていた。
『なんだ、ノリノリじゃねぇか』
そんなシャルの言葉に、自分が驚いた。
…そう、だな。
『…もしかして、ストレス溜まってた?』
あぁ、そりゃ断言出来る。
「超溜ってるゥ」
ゴカッ、と。
右手が動き、胸元へとは行かずに、代わりに掴んだものは腰に下げた鎚。
それを握って、真っ正面に迫って来ていた短刀使いの額を叩いた。
すると当然、割れるのは額──ではなく、その上に乗った仮面。
お、行けそうだな。
音は痛そうだが、重力魔法が付与された鎚は、大した破壊力はないし。
『…それ、持ってきて良かったな』
本当に。
しっかし、なんで銀剣使っちゃダメなんだ?
目の前の女子へ無造作に蹴りを繰り出すが、流石に当たらない。
やっぱ、さっきのヤツがちょろかっただけか…。
『…今代の…紫色の髪をした耳長種エルフの忠告、忘れたのか?』
んー?何の話だ?
「ほっ」
「がふっ!!」
左手には銀腕を装着し、パイルバンカーも起動させる。もちろん、威力は低く。
あ、胸狙ったのに外して腹に当たった。
いや、避けられたのか。
『ほら、龍人種ドラゴニアンは執着心が強いみたいな話』
………………あー。
あー……。
あーあー!!
つまりアレか?
ルト先輩を見に来てる龍人種ドラゴニアンの親族が、俺の銀剣金剣に反応するって事?
『そうだろうな……おい、囲まれてるぞ』
「へ?」
ありゃ、雑談に花を咲かせすぎたか。
けどまぁ、問題ないだろ。
「──《ストライク・スラスト》!!」
「──《雷刀一閃》!!」
轟、と。
音より疾い風と、何よりはやいかずちが俺の両脇を走った。
「よぉ先輩方。遅くねぇ?」
おどけて言えば、脳天に《雷光》の拳骨を頂戴した。
「ははっ、調子に乗るなよ新入り?お披露目だって言っただろ。華は持たせた。ここからは本気だ」
見ろ──《雷光》が俺達が来た側の方を指さす。
周囲に警戒しつつ振り返ると、どこかで見た事のある、鈍器のような大剣が見えた。
「一緒にぶっ叩かれないように、気をつけてね!」
《荒野》の方は後ろに置いてきたらしい《不動》がそう言うと同時に、その剣は振るわれた。
──のに。
「…すげ」
普通ならば。
一人では絶対に防げない。
三人でも変わらない。
五人で手応えが変わるだろうか。
十人でようやく拮抗する。
そんな剛剣を。
「たった三人で…!!」
全力で戦えないのがもどかしくなるような。
そんな猛者達がここにいる。
「《緋眼騎士》!!後ろだ!!」
「ハァッ!!」
後ろからの奇襲。
それに対して俺は。
「起きろ。《千変》」
握っていた鎚、それを軽く放っただけ。
ただし、柄には俺の血がついていたが。
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