大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

続・場所取りと二つ名

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うーん、なんと言うか…。
いや、薄々勘づいてはいたのだが…まさかそれよりも悪化するとは思っていなかった。
え?何の話かって?
場所取りの話。
俺達が取った場所が、それなりにいい場所だったという話を覚えているだろうか。
六箇所の場所ポイント
王都のド真ん中に建つ王城を中心に置いて、北、北西、南西、南、南東、北東。
バランスよく置かれたこの場所の中で、俺達は北東の場所をとりあえず取ったのだが、一番いい場所は、実は南側だったりする。
で、当然客入りのいい南と東の間である南東が最も人気が高く、次いで南と南西が人気だった。
もちろん、上級生達はそこを狙うはずだから、俺達は奪われるぐらいならと、あえて避けたのだが…。
うん?あぁいや、俺達の場所が奪われた訳じゃないぞ。
問題…というか面倒が起きたのは、俺だけ。
つまり、二つ名持ち達の方で。
あの馬鹿共、南を占拠した後に南東のポイントへ行って、交渉をしたらしい。
噛み砕いて伝えると、「南の俺らの場所と南東のお前らの場所、交換しない?」って内容。
これが旧一年クラスだとか、新旧二年クラスだと、ハイワカリマシタになったのかもしれないが、そこを取ったのは新旧合同三年クラス。
ンなモン呑めるか馬鹿野郎!!という訳で、真っ向から対立したらしい。
さて、ここでルールをおさらい…する必要も無いな。
品格やら美しさより、力が一番に持ってこられる実はかなり野蛮ワイルドなこの学校、当然やるとなったらる訳で。
しかもご丁寧に、時刻を決めて総力戦をやるらしい。
それまでに、しっかり準備して来いよ、という事らしい。
喧嘩ぐらいはするかもな、とは思っていたし、奪うかもしれない、とも思っていたが。
まさか広場借りて大々的にやるとは露ほども思ってなかったぞ。
「俺だって喫茶店こっちの用意が大変なんだよ。分かる?それも、ようやく仕事にありつけたの。放置とか用心棒とかじゃなくてな。なのに残り三十分で用意して、すぐ南広場に来いだぁ?」
「それは私も同じだ」
俺に話を持ってきたのは《雷光》。
ようやく薔薇を片付け終わった店に入るなり、「《緋眼騎士》はどこにいたぁッ!!」と叫びながら、スキルまで使って俺の襟を捕まえやがった。
そしてそのまま「借りるぞ!」と一言。
周りの返事も聞かず、勝手に店の二階へとズカズカ入り、そのままそこを占拠しやがった。
ちなみに、二階を掃除をしていたクラスメイトは追い出された。
「てか、全員って全員?ウィルとルト先輩、手ぇ組むの?そもそもウィルってそんなに好戦的なの?」
「なぜウィル様を呼び捨てで、あの爬虫類モドキは敬称付けなのだ…今回のこれはな、一種の恒例行事なのだ。去年もやっていたし、一昨年もやっていたらしい」
「はーん、そりゃ学校から言われりゃ《アンタら》は逆らえないか。けど、ルト先輩が従う理由は…」
『今代の。ここは王都だろう?なら、大貴族の庭じゃないか』
「あー、親にいい所見せなきゃならんのか。なるほど納得…じゃあ俺が出る必要無ぇな。メリット無ぇし。出口はあっちだぜ」
『今代の。そっちは窓なんだが…』
飛び降りろって言ってんの。どうせ傷一つつかねぇだろ。
「…まぁそういったところだ。もちろんお前にも、メリットがない訳では無いぞ?」
「へぇ、言ってみな?」
「学校側に貸しが作れる。特にお前は注目されているんだ。僅か数ヶ月で二つ名持ちになり、既に魔族を何体か屠っている。その上見目麗しいと来れば、学校側はどうしても出したいんだ。言ってしまえばお披露目だ」
「…あぁ、だから《お前》が来たのか。ってか、見目麗しいの所、訂正しやがれ」
「どこに間違いがあるんだ?」
くそ、悪気なしで本気で言うんじゃねぇよ。
「さて、残り時間は少ないぞ。急いで支度してくれ」
…え?決定事項なの?これ。
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