大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

移動と隠し事

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そんな訳で翌日。
昨日に届いたベルのメッセージでひと騒動あったが、なんとか荷造りは終わった。
てか終わらせた。
で、今。
学校が用意した馬車の中で揺れているところだ。
いや、厳密には馬車ではないのだが。
というのもこの馬車、牽引しているのはクードラル先生のスキルで手懐けた魔獣だから。
しかも、前の時のようなスレイプニルとかそういう馬的なものどころじゃなくて、犬やらワニやらネズミやら。果ては蜘蛛や鳥の形をとった魔獣が引っ張っている。
クードラル先生曰く、「馬ってとっても良く食べるんですよ。そんな余裕、ありませんから」とのこと。
いや、じゃあこの魔獣はどうやって養ってるんだよ。
しかし一方で、馬車そのものの数はそれなりにあるらしく、一つの馬車には六人から七人程の生徒が乗っているようだ。
ちなみに、俺達の乗っている馬車は牛っぽい魔獣が引っ張っている模様。速度は笑えるぐらい早い。…あ。今、隣を走っていた犬型魔獣が牽引する馬車を追い抜いてった。
「…速いな」
思わずそんな一言が口から漏れるぐらいに。
その癖、震動も比較的少なく、快適と来ている。
昨晩は興奮したアーネに付き合っていたら、寝るのがそれなりに遅くなってしまったので、段々瞼が重くなってきた。
それは同じ部屋にいた彼女にも被害があったらしい。
「………おかあさん、ねむい…」
「ん?おう、まだまだかかるから、寝てていいぞ」
確か、王都までは馬で約二日程度だったはず…この速度なら、一日もかからない気がするが、それでも時間はかなりあるだろう。
「………ん」
シエルは小さくそう言うと、俺の髪とコートの間にくるまるようにして入り込み、そのまま丸くなって寝てしまった。
…俺の所で寝ていいって訳じゃなかったんだがな…まぁいいか。
「その子、レィアさんにすごく良く懐いてるよね」
「…ん?あぁ、まぁな」
向かいに座っていたラウクムくんが、もう寝息を立てているシエルを見ながらそう言った。
言うのが少し遅れたが、この馬車に乗っているのは、一班メンバー六人。
うち、シエルとアーネ、クアイちゃんが疲れていたのか既に寝ている。
用意、大変だったんだろうな。
「その子、シエルちゃんだっけ?明らかに十四よりも下だよね?」
「んー?あぁ、十一か十二だ」
かなり前、学校長の命令でプクナイムへ行き、シエルをこっちへ連れてきた時に。
学校長への二つのの内容。
一つは、プクナイムの正確な内情調査。
そしてもう一つは、シエルに関する情報を、出来るだけ多く集める事。
だから、シエルの年齢ぐらいなら大体分かる。
「それに、本来なら有り得ない三十一人目だし、レィアさんとアーネさんが何日か欠席した後に来たよね?その子に関して、何か隠してない?」
…あぁ、そういう事。
何か察してきてるな。
「別に?大したことじゃないさ」
「隠し事、あるんだ」
そうだな…妖精種フェアリーの子だとか、魔族のハーフだとか、誘拐スレスレの行動でかっさらって…もとい助け出して来た事とか?
「そりゃ勿論。逆に無いって言ったら嘘臭くなぁい?」
「話してはくれないの?」
「意味が無いからな」
そう言うと、俺は目を閉じた。
直前に、ラウクムくんが睨んでいたような気がしたが…気のせいだろう。
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