大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

宿泊所とお客さん

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「…………ん……て、…さん、レィアさん起きて!」
「…ん?おう、ラウクムか。ついた?」
長時間、馬車の硬い床の上で同じ体勢だったから身体のあちこちが痛い…。
「「………くぁ」……ん?おぉ、シエルおはよう」
そうか、ずっと同じ体勢だったのはシエルが俺にくっついて寝てたから、寝返りを打てなかったのか。
「………ん、おかあさん、おはよ」
「おー、…寝癖凄いことになってんぞ」
「………ん」
「そう言えばあなた、それだけ髪が長いのに、寝癖がついていたり跳ねたりしている所を見たことがありませんわね」
そう言ったのは、一緒に起きたアーネ。
…お前も寝癖ついてんぞ。
「多少跳ねてても、髪そのものを操れるからな。普通になるよう固定してたら、そのうち直る」
まぁ、そもそもあんまり寝癖つかねぇけど。
それはさておき。
外を見てみると、結構日が落ちてきてた。
が、王都にはついていないようだ。前来た時に、王都の町並みは何となく覚えている。
うーん、ここは…。
「南第一都市アークリーム…いや、第二都市イライスターか?」
「いや、アークリームで合ってるよ」
ラウクムくんが訂正してくれた。
その顔を見てみると、特に変わったところはない。
シエルのことを何か探っているようだが、本人には感づかれないようにするつもりか。
まぁ、個人的にもそちらの方が有難いが。
あんまり不安とかにさせたくないんでね。
「ここに泊まるんだってさ」
「…は?アークリームにそんなに宿屋あったっけ?」
前に言ったと思うが、ヒト種の領土は完全に円形で、外側の都市は広いが、内側の都市は狭くなっている。
第一都市にそんな余裕スペースがあるとは思えないのだが。
そう思ったことをそのままラウクムくんに伝えると、笑って返された。
「それは王都も一緒だよ。他の第一都市よりも広いけど、それでもこんな大人数を泊めることが出来るほど宿屋はない…というか、あるんだろうけど、全部に泊めたら他の一般のお客さんが泊まれないからね。だから、一、二年は第一都市に泊まって、三年だけが王都に泊まるんだよ」
なるほど、聞けば納得。
聞けば、聖学祭はかなり有名らしく、色んな都市から王都に人が集まるらしい。
そういった人達のための宿屋も必要な訳か。
「ついでに言うと、今年からは西の方のが増えそうだからね」
そこだけ、ラウクムくんの表情が一瞬、渋いものへと変わった。
本当に一瞬だったから、こっちも気のせいかと思った。
「西の…あぁ、すっかり忘れてた」
「…呑気なものですわね」
アーネが呆れたように…というか、実際呆れているのだろう。
「西学の奴らも来るんだっけか」
今年は特に騒がしくなりそうだな…。
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