大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

勇者と戦闘2

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「ッ、ハァっ!」
銀の双剣が翻り、魔族の頭に振り下ろされる。
しかしそれは魔族の手が横からそっと力を合わせるように添えられ、そのまま軽く受け流される。
「チィッ!!」
『これだから魔族と正面からやるのは!!』
剣の重みを利用し、そのまま前に跳ぶように蹴りを繰り出すが、それを真正面から受け止められ、そのまま掴まれる。
『バカ!』
「不味った!」
「行け!」
後ろから魔族達が襲いかかってくる。
『反撃発動、《千剣》』
直後、全身を覆う鎧のほとんどが後ろに回される。
元々《千変》の本来の姿は形を持たない液体のような金属であり、それを鎚だとか鎧だとかに固定して使っている。
これはその応用。ほぼ全身の鎧をかき集め、背後からの攻撃に対してヤマアラシの如く剣を突き立てる。
しかし──
ベギッ、と。
剣がへし折れる音がした。
「なっ」
『相手損害軽微、防御に移ります』
咄嗟にマキナが変形。三角形の盾となり、攻撃を防いで俺の身体に戻る。
マキナ程度の剣じゃそもそも通らないか。そもそも鎧なので威力は大して無いが、折れるとは思っていなかった。
だが魔族の攻撃もそれだけでは終わらない。
俺の身体を掴んだ魔族が、俺を一気に引き寄せて貫手で身体を貫きにかかる。
空いた足でさらに蹴りを繰り出すも、生身の足では魔族の身体に弾かれる。
肉体強化──いや、障壁か結界か…シャルも言っていたが、そもそも衝撃すら打ち消すような物とは思ってもいなかった。
なんにせよ不味い。
咄嗟に右に握った銀剣を空へ放り投げた。
後先考えず、今この場を確実に抜けられるのはやはり《勇者》の力。
俺の足を掴む魔族の手を掴み返し、能力を選ぶ。
「第五血界──!!」
俺と相性が悪く、発動には相応の血を使うそれを発動する直前、魔族が手を離して悪態を吐きながら後ろに引いた。
「クソッ!」
直後、炎が目の前を横切った。
身体を捻って着地。今のは見りゃわかる。アーネの火炎球だ。
「サンキューアーネ」
聞こえはしないだろうが、それでも一言言ってから着地。
上から降ってくる銀剣をもう片方の銀剣の柄で受け止める。
『《双銀刃》の構築、完了しました』
体力の消耗が激しい。少しでも楽にしたい。
『おい、二人ぐらい後ろに攻撃仕掛けに行ったぞ!』
「チッ」
血もかなり使って足りないというのに。
迷わず俺は血界を発動。血瞬によって加速──
「させん!」 
する直前に、俺の手を掴んで魔族が拘束してくる。
こいつ、さっきから俺の行動を潰すように…!
血呪で増した俺の腕力でも振り解けず、逆に振り回そうにもこいつ自身が妙に重い。魔法で重量を弄っている可能性がある。
双刃の突きを脇腹に刺そうとするが、最小限の動きで回避され、それどころか拳を顔に受けた。
「ガッ…!」
異常に重い一撃…鼻は折れていないが、血は出たらしい。息がしにくい。
「お前は危険だ。ここで死ね」
「ッ!!」
さらに二方向から俺へ目掛けて魔族が押し寄せて来た。
三角形で囲むように。死角は無い。回避もできない。血界での攻撃は形成中にやられる──ダメだ、間に合わない。
このままでは死ぬ。俺だけではない。アーネも。
他の前衛や後衛と共に戦えば、一人ぐらいは行けるだろう。だが二人は間違いなく無理。
決断の時は待ってはくれない。
「第六血界起動──!!」
『レィアッ!?』
心臓に紋様が刻まれ、身体を加速させる。
この血界は長距離の移動にしか使われない。
何故か。危険すぎるからだ。
身体を加速させることが出来ても、思考は加速されない。「ちょっと」の気分が「ずっと」になる。十メートル進むつもりでも、その十倍以上の距離を進む。
だから移動用として使われるのだが、この血界の本質はそこにない。

つまり、本来は移動用の血界ではなく、高速戦闘を目的とした血界。
その血界が、今この瞬間においては本来の目的として働いた。
ただし──狙いは自分なのだが。
突いたばかりの双刃の位置を微調整、さらに双刃の峰を俺の膝裏あたりに合わせ、思い切り蹴り上げた。
血呪と血瞬が乗ったその蹴りは、狙いを外さず双刃の峰を蹴り上げ、勢いそのまま一回転。
俺の肘を切り落とした。
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