大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

勇者と戦闘

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『おい、感知圏内に入ったぞ』
「…ん」
頭を緩く振って意識の覚醒を促す。半分ぐらい寝かかってた。
ヤバい、結構芯に来るような疲労が溜まってる。
とはいえ切り替えてやって行かねばなるまい。戦場の音はもう俺の耳に聞こえている。
「大丈夫ですの?」
「なぁに、ちょいと疲れただけだ。アーネは聖学に戻って」
「嫌ですわ。私もいきますわよ」
『お前なぁ…』
「あぁ知ってるよ。言っただけだ」
そう言って、先生に声をかける。
「どうした?」
「俺ァこのまま行く。アーネを後方の魔法部隊ン所まで連れてってくれ」
遠くから見た限り、前衛と後衛という形はまだ保たれている。後衛側に僅かながらも障壁があるらしいのは流石と言うべきか。
だが一方で前衛は既に崩れかかってる。いや、崩れかかってるという時点でもう崩れたも同然か。
「任せたっ!」
そう言って、恐ろしく早い速度で走るスレイプニルから飛び降りる。
「おまっ!?」
飛び降りた瞬間、腰元で叩いたマキナが反応し、足元から順に俺の身体を覆う。それに合わせて第二血界も発動。普通なら足がへし折れるだろうが、それを難なく耐えて──さらにそこから第六血界。
スレイプニルを追い抜き、一足で前線へ。
「はははっ、面白かった。じゃあ死ね」
銀剣を引き抜き、今まさに生徒へ魔法を放とうと手を伸ばした魔族の前に立ち塞がり、身体で魔法を受け止める。
「──は?」
「数」
「なんだお前!?」
『魔五の前二』
魔族五体のこちらの前衛二人。本来ならとっくのとうに死んでいただろう。
だがあまりにもあった力量の差、それ故の慢心、遊び心。こいつら程度なら、いつでも殺せるというその余裕が、俺の登場までの時間稼ぎとなった。
血瞬の加速からのブレーキ時、振り子のように振りあがった銀剣を両方合わせるように斜めから袈裟斬りに下ろす。
魔族は咄嗟に強化魔法がかかったであろう腕で防ごうとするが、その程度なら特に戦技アーツを使うまでもなく余裕で断ち切る。
肌に当たった瞬間、僅かに抵抗があったが、それもまるで意味を為さずに叩き潰され、左腕を鮮やかに斬り飛ばす。
「──なんっ?」
『障壁…か、結界纏ってんのか。しっかりぶち込んでけ』
「了解…おいお前、下がってろ」
一言だけそう言い、平時なら自由に扱えない二振りの銀剣を振り回す。血呪とマキナを同時に使用している今なら、強引に力で振り回せる。
「う、うおおおおおおおおおお!?」
次の攻撃を叩き込むより前に、他の魔族が俺に向かって魔術を放って来た。内容は…分からんが多分爆発系。なんで炎とか爆発系が多いのかと言うと、使用する魔力量に対する戦果がいい…まぁ端的に言ってしまえば、コスパが非常によろしいのだとか。
まぁそんなこと、どうでもいいのだが。
「効かないっ──!?」
既に第四血界は発動している。
『それ飛ばせ』
「あぁ」
右の剣にぶち込まれた魔力を流し込み、下から上へ斜めに切り上げるように斬撃を放つ。
光り輝く一撃は、魔族に当たった──かのように見えたが、ギリギリで回避されたらしい。
「おい!こいつ報告にあった!」
「あぁ、間違いない!魔法や魔術は使うな!」
「チッ」
やっぱり情報が流されてる。もしあいつを逃さなかったらこの時点で二人は殺れていただろうに。
「出し惜しみ無しで行こう」
『出来るだけバレんなよ』
「あぁ」
ここからが…苦しくなるな。
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