大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

勇者と神格

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『違ぇ。そりゃグルーマルじゃねぇな』
朝起きてすぐ、俺が経験した事を話し、確認する。
『あいつならそんな話し合いにならねぇ。駄々っ子に権力持たせたような奴』
「はーん、よく分からんが取りあえず違うと?」
『約束したことをやっぱやめたつって突然破るクソ』
「そういう感じは…しなかったなぁ」
と言っても、俺は別にあの神と何か約束事なんかした訳じゃないが。
「ともかく確定か?」
『あぁ。少なくともグルーマルじゃねぇ。会ったこともない機人の双神、って訳じゃ無いだろうし、魔族の我神はお前と接触する意味も方法も無いだろうし、ヴェナム、システナは論外だし。確かにそう潰していくとそんな奇抜な発想に行くかもな』
「ちなみに世界神オルドって聞いたことは?」
『無ぇ。世界を管理してる神だっけか?初耳だ。一応、ヒトの聖書だと三神がそれぞれ天界とか地上界とかを管理してるはず…だよな?それでもヴェナムがとっくの昔に死んでる以上、その話も破綻してる訳だが』
だとしたらあの神の言う話に嘘は無いだろう。
…退屈、か。
「まぁ何にせよ、分かったことは多かった」
『本当か?聞いててわざわざ自分からチャンス棒に振ってたような気がするが』
「神がどこまでのものなのか確認してみたくってな。ついやっちまった。反省はしてるが後悔はしてない」
『ほざけ馬鹿。で、分かったことってのは?』
「やっぱり俺は《勇者》じゃないって事、作ったのはグルーマルじゃなくてオルドの方って事、とかな」
『…すまんが、それがどういう収穫なんだ?』
「まず、俺以外に本物の《勇者》が存在するのがほぼ確定した。ヤツキの読み通りだ。だが、立場が逆だ。俺がオルド側で《勇者》がグルーマル側」
『あー、なるほど。だとしたら《魔王》の出現で焦ったのはグルーマルか』
「そ。問題はどこから今の《勇者》分の力を出したか、だが」
あとは俺に混ざってる力も分からない。
《亡霊》達がグルーマルの《勇者》に持っていかれた以上、そうなる理由があるはずだ。
俺が《勇者》の力を持っているのはまだ理解出来る。
《勇者》を生み出すのは世界。つまりオルドが役割として担っていたと思われる。そのオルドが自力で《勇者》を作ったというのなら…
「…ん?」
『どうした』
「ちょっと待て…」
作れるのはいいが、素材となる神格が足りないだろう。
シャルは「俺の代で《勇者》の力はほぼ使い切った」と言っていた。だが俺の身体には勇者紋があり、その力が宿っている。
そもそもヴェナムの力がもうほとんど無かったのに、何故二人も《勇者》の力を持った存在がいるのか。
「世界が《勇者》を産む…ヴェナムの力を使って…?いや…」
そもそもの話、世界が神であるという前提が新しく出来た以上、世界が産むというシステムそのものを疑う方がいい。
何故グルーマルはオルドに《勇者》を作らせたのか。
グルーマル自身が《勇者》をこの世に送り出す形に何故しなかったのか。
「オルドでなければ《勇者》は産めないから?」
何故?
オルドは世界を管理していると言っていた。
ヒトの神でもなく、機人の神でもなく、魔族の神でもない、世界の神。
それはそもそも、この三種族の三竦みだったという話を根本からひっくり返すのではないか。
それが生み出す《勇者》という存在の意味は?
「《勇者》はそもそも、オルドが作った存在…?」
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