大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

飛行と矢文

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竜種ドラゴン
亜竜、竜種、龍種、これら全てをドラゴンと読み、その中でも体躯が大きく、翼は一対、四つの脚に頑丈な鱗を全身に生やしたものを特に竜種ドラゴンと呼ぶ。
他の二種類と比べて耐久力があり、逆に亜竜や龍種よりやや動きが遅いものの、攻撃力という点においては圧倒的なまでの攻撃力を誇る。
また、口から放射される吐息ブレスは、個体によって様々であり、オーソドックスなものは超高温の炎、他には吐くと同時に着弾している最速の雷、珍しいものでは強力な酸など、多岐にわたる。
もちろん、魔獣などの格ではトップクラスである。
そんなものが。
今、俺達を背中に乗せて高速…と言うより超速で飛んでいる。
どんな作用か知らんが、吹くはずの風は一切なく、揺れなどはほとんどない。
「いやー、ホントにいいタイミングで来てくれたな」
合図に使った銀剣を片付け、その広い背中に腰を下ろす。
ずっと俺にしがみついていた彼女は俺の膝の上にちょこんと乗せる。
竜の背中と言ったが、ほとんど首の辺りで、視界が流れては消えていくのがよく見える。
「………」
「アーネ、出来たら俺の手、治してくれねぇ?今なら時間あるだろ?」
「………」
「…アーネ?」
なんで黙ってんだ?
振り返ってアーネを見ると、ポカンと口を開けて呆けている。
「おーい、どうした?」
「ど、どどど!どうしたじゃありませんわ!」
「ちょっ、首絞めんなっ」
浮いてる浮いてる!身長差の関係で浮いてるからぁぁぁ!
ついでに、膝に乗ってた彼女がぶら下がってるから余計ぐるじい…!
「馬で帰るつもりでしたのに、途中から大丈夫大丈夫なんて言ってたのはこの事でしたのね!?なんでこんな魔獣が貴女の一声で飛んで来たんですの!?」
「ガハッ!あー、死ぬかと思った…」
『何気に今回の旅で一番ピンチだったんじゃね?』
やかましい。
あぁ、そうそう。ちなみに来たとき乗っていた馬は竜の前足にガッチリホールドされてる。
「いいから!教えてくださいまし!!」
「わぁったよ。そんなぎゃいぎゃい騒ぐな。…あと、その前に訂正。この竜種ドラゴン、魔獣じゃねぇぞ」
「へっ?」
「ルト先輩。龍人種ドラゴニアンの。あの人に飛んできてもらった」
「はっ?」
「昨晩の矢文にな?日付の制限を延長出来ないことはないがそれには面倒な手続きが云々って書いてあったんだよ。送ったのが初日だったから、正直無理だろと思って延長お願いしてたんだが、西校の奴らを捕らえてたからもうほとんど延長必要なかったのよ。んで、そうなったら帰りはどうするかなーって話。どのぐらいかかるか分からなかったから、ルト先輩に来てもらえないかどうか試しに送ってみたら来てくれた訳」
「…文面はなんと書いたんですの?」
「んー、確か『帰りの足の関係で帰還が遅れるかもしれないが、帰還の目処は立った。空からの帰還ルートを確保してくれると非常に嬉しい。ただし鳥は羽毟っちゃいそうだから勘弁』みたいな事だった気がする」
「……それ、ほとんど特定されてますわよね」
まぁな。
それより、早く手ぇ治してくんね?
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