大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

射撃と防衛反応

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ガヴン!と、およそ弓矢とは思えない音が辺りに響く。
矢の速度は俺が目視出来ない程の勢いで飛び出し、木々の隙間を縫って飛び立った。
「手応えは!?」
「わかりません!」
『だよな』
思わず興奮してセラに聞いたが、そもそもセラがは矢を使わないんだった。そもそも目標も見えておらず、ヤツキの指示で飛ばしていた。
位置的に俺も知ることは出来ない位置。だとすると、この場で矢がどうなったか知ることが出来るのはただ一人。
「どうだった?」
そう聞くと、ヤツキは静かに頭を振った。
「外した。と言うよりも…弾かれた」
「なっ…」
「嘘…」
今の攻撃を弾く?畜生、どんな反応してやがる。
「第二射…撃ちますか?」
セラに渡した矢は三本。弓の力に耐えられる矢がそれだけしか作れなかったのだ。
「…ヤツキ、どの辺で弾かれたか分かるか?」
「そうさな…ざっと、本体らしい何かの一メートル手前ぐらいか?」
「わかるのか…」
聞いておいてなんだが、まさか分かるとは思っていなかった。言っていたし理解もしていたが、改めて見ると感覚が鋭いどころの話ではない。
「賭けるか。セラ、準備しといてくれ。義手は耐えられそうか?」
「はい、なんとか。ただ、これもしかしたら三射目撃ったら壊れるかも…」
「何、壊れたら壊れただ。使う奴ももう居ないし、気にしなくていいぞ」
今セラがつけている左腕はナナキの腕。
それを少し弄って、セラでも付けられるようにした。ただ、本当に付けられるようにしただけなので、この腕で武器を握って戦闘と言った事は出来ない。あくまでこの矢を撃つためだけに左腕を換装したのだ。
「先輩がそう言うなら…わかりました」
「で、賭けと言っていたが。何をする気だ?」
「何、単純だ。俺が突っ込んで、同時にセラが矢を撃つ。どっちかが標的に届けば俺達の勝ち。わかりやすいだろう?」
流石に血界は使えないが、マキナと髪のサポートに金剣、そして滅多に使わない裏技の肉体制限リミッター解除を使えばそれなりの速度で走れるはず。
「でも先輩、それって私の矢が落とされたんならいいですけど、先輩が先にやられたら…」
「大丈夫大丈夫、ちゃんと避けるから」
そう言って走りやすいよう、金剣を逆手に持って出来るだけ腕にくっつける。
「レィア、今から全力で走る訳だが、平地直線百メートルを何秒で走れる」
「あ?あー…今ならそうさな、加速つけて入るから一秒あれば抜けるだろうな」
「一っ…!?」
「そうか。じゃあセラ、一秒ずらして撃つぞ。タイミングと方向は私に合わせろ。いいな」
「あっ、はい!先輩、無茶しないでくださいね?」
「はん、そもそも無茶をせにゃならん事なんかになるかよ」
敵の射程からさらに二十メートル程離れ、軽くト──ン、ト──ン、とジャンプしてリラックスしながらスイッチを入れる。
「ヤツキ、合図くれ」
「わかった。三、二、一──」
ぐっ、と地面を踏み締め。
「ゼロ!」
今持てる全力をもって、地を蹴った。
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