大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

ヒト種と半魔族

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轟音、そして熱。
撃ち抜かれたのは腹のド真ん中。咄嗟の事で正確な位置は分からないが、腹を中心に猛烈な熱のような痛みが発生し、汗が流れ落ちる。
「ははっ、やった、やったぞ!」
「テメェっ…!」
コルドーの顔に一撃膝を叩き込み、鼻っ柱を折った後に手を蹴り飛ばし、銃を手放させる。
髪で回収すると、どうも弾は一発しか込められていなかったようで、既にただの鉄塊に成り果てている。
血はほとんど流れないよう操作はしているが、激しい動きをすると溢れてきてしまうだろう。
「クソったれが…どこから手に入れやがったこんな隠し玉…」
「もしも私の魔法が効かない奴がいたら使えと渡されていたんだよ!協力者からね!」
「協力者…あぁ、例の魔族か………いや」
共通点と言うにはあまりに薄い、半ばヤケクソじみた直感に任せ、そのまま口を開く。
「おい半魔。お前にコルドーを連れて来いって言ったのは同じ半魔で目、肌、瞳が全て真っ白な男だな?」
「………。」
半魔は答えない。目も合わせない。
だが、男は答えた。
「あぁそうだ、そうだとも!私の研究に手を差し伸べ、道を示したあの方だ!ディエルト・マスクウェル様だ!」
「わお、ただの鎌掛けに名前までどーも。あいつディエルトとか言うのか」
言ってからコルドーはしまったと言う表情をするが、もう遅い。
「あー、なるほど、そうかそうか…もしかしたらお前ら半魔って、結界を抜けれるのか?」
思ったことを、ただつらつらと口から流し続ける。
「結界は力の強大な者ほど強く作用して通さないように働く。その点お前らは魔族程強い訳じゃないし、かと言って魔族の魔法やら技術を駆使したなら、ギリギリ抜けられない訳じゃないって感じか?」
やはり答えない。何も喋らないのが正解だとよく知っているのだろう。本当に面倒な事だ。
「まぁいいさ。答えなくても。とりあえず俺もあのディエルトとかいう野郎に一杯食わされたもんでね。お前らをここで殺せば逆に一杯食わせることも出来るだろうさ」
「ひっ!」
腰の黒剣を抜き、剣を横に一閃。
それに対し、コルドーは咄嗟に顔を手で覆った。
ごろりと落ちる両手首。溢れる血に反して、彼に痛みはほとんど無いだろう。実際、落ちた手首を見て何も反応はせず、自身の膝を濡らす血で初めて気づいたようだった。
「わ、私の手がっ…!?」
「なるほど、こうなるのか。切れ味が良すぎるってのも考えモンだな」
軽くコルドーの顔を蹴ろうと足をあげると、先程顔を蹴ったせいもあって再び顔を守ろうと手を挙げ、後ろに下がるコルドー。
その時、少し身体が後ろに傾いたのか、はたまた動いた時の衝撃のせいだろうか。
ごろり、と。
首が地面に落ちた。
コルドーは理解出来ていないのだろう。一瞬驚いたように辺りを見渡すように目を動かし、そしてそのまま永遠に動かなくなった。
「さてお前だ。半分魔族とは言え、半分はヒトだ。命令されてやったからどうしようもなかった、とかなら、ヒトの面に免じてさっきの腕一本で勘弁してやる」
『は!?ちょっ、お前!?』
普通に考えれば、嘘をついてでも生き残るであろうこの場面。
しかし女は、キッパリと首を横に振った。
「いや、私は私の意思で彼に従い、そしてここにいる。私を殺せ。勇者よ」
「…そうか」
彼女のまともな言葉を聞いたのは、多分、これが最初で最後だったろう。それでもこの半魔族が、どんな者だったかはよく分かった。
だからこそ、惨めな死は許されない。
「じゃあ死ね。お前を殺したのはただのヒトではなく、魔族を殺す勇者であったのだと、その身に刻んでから逝け」
両の腰にある剣を抜いた。そしてその瞬間、戦技アーツは発動していた。
「《終々》」
振り抜いた後に残るのはただの肉塊。
元は何者であったかは判別のできない、ただの肉塊だった。
俺は静かにマキナを動かし、ニケに連絡を取る。
「よぉ、ちょっと問題が…いやいや、俺は悪くないって。……はは、確かにそうだが…冗談はそれぐらにいしておこう。コルドーが殺された。あぁ、魔族にだ。…あぁ、あぁ。死体は壁の外にある。すぐに来てくれ。…三つ目の塔の外側辺り…だな」
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