大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

空中と突破

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ニケがどうにか魔法使いを連れていくのを確認してから、急いで走り始める。
既に当たりはついている。というかもう見えている。
高壁の上、そいつは俺達を見下すように陣取っていた。
「跳ぶぞ」
『好きにしろ』
血界の強化にものを言わせた本日二度目の豪快な跳躍。今度は反動で地面が割れるが気にしない。
「ん?」
『どうした』
「いや、あいつただ見てるだけなんだが」
先程の魔法使いのように、魔法を撃つなりなんなりするのが普通の反の──
──!?
「がッ──!?」
突然、俺の顔から全身にかけてハンマーでぶん殴られたかのような強い衝撃。当然空中で勢いは減衰──どころかほぼ撃墜落下の形で地に落ちる。
『どうしたレィア!?』
かなりの高所から落ちたが、この程度なら受け身で受け流せる。もちろん、この強靭になった身体もそれなりに重要だが。
「くっそ、やられた」
鼻は折れてない?大丈夫か。流石は血呪。しかし鼻血ぐらいは出ても仕方ないか。
『何が起きた?』
「障壁。多分な」
喋ったら口もピリリと痛い。真正面からぶつかった時に噛んで切ってしまったらしい。
『なんだと…?全く見えないほど薄いと言うのに、あの勢いでぶつかっても壊れない障壁とは…!』
「よっぽどの力量だろうな。もしかしたら魔法部隊の隊長か大隊長クラスか?しかし参ったな…」
ただの障壁ならなんら問題はない。問題は無いのだが、貼ってある位置が問題だ。
高壁から術者本人が貼っているとして…そこまで範囲は広くない。だがそのせいで、俺の剣のリーチでは絶対に届かない位置に障壁が貼られてしまっている。
シャルから聞いた障壁の特性上、一箇所を切り崩せばそこが大きく崩れる。修復する前に内側へ飛び込むのは可能だろうが、そもそも近づくことが出来ないならどうしようも無い。
空中まで跳躍が出来ても、踏ん張ることが出来ない。斬ることはまず不可能──いや。
触れただけで斬る剣があるではないか。
即座に銀剣を抜き、さらに詠唱を済ませて指を剣腹に滑らせる。
すると銀剣が縦に真っ二つに割れ、つい先程まで持っていた尋常ではない重量は消え失せる。
「────ふッ!!」
それなりに全力の跳躍。先程ぶつかった時に障壁の範囲はどのぐらいか大体把握出来た。
──三、二、一、
「今ッ!!」
大きく×の形に振り抜いた剣が風諸共障壁を切り裂く。しかし若干横からの風圧を考慮できなかったか、黒剣が半ばから折れてしまう。
いや、それを差し引いても障壁は既に大きく切り崩した。
「くっ!」
勢いそのまま、俺は障壁の中へ、そして高壁の上へと着地した。
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