大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

魔法と縄

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壁の上に着地した次の瞬間、俺に襲いかかる無数の魔法。属性は…氷か。
「まぁ効かないんだけどな」
数はかなりあるが、こめられた魔力量はさほど大したものでは無い。
いや、燃費がいいと言うべきか。見ればどれも刃のように薄く鋭く、これなら魔獣の硬い皮膚でも容易く切り裂く事ができるだろう。
ただ、それもやはり俺には届かない。
刃が俺に触れる直前で反転し、自分で魔法を潰し合い、触れれば切れる魔法の氷刃は、跡形もなく消え去る。
が、それを見るや相手は即座に魔法を組み直した。
一瞬見えた魔法陣が数文字書きかわり、次いで射出された氷の刃は俺に当たる少し前でそれぞれが自分でぶつかり合い、大きな刃となって襲いかかる。
しかし。
「それでも弱い」
刃は皮膚を裂くことはおろか服に触れる事すら無く消えていく。
魔法返しを抜くには、尋常ではない魔力を込めて、魔法返しが返しきることの出来る魔力量を上回るぐらいしか方法はない。それだって出来た所で減衰は免れない。
しかし、だからこその驕りか。
その氷刃の中から出てきたロープに、一瞬反応が遅れた。
「んあっ」
『馬鹿っ!』
両端に重りの着いたそれは、即座に俺の身体をグルグルと絡め取り、動きを封じる。
直後、何かしらの魔導具なのだろうか。突然ギシギシと締まり始め、マキナを砕いて俺の身体を締め始める。
『千切れ!』
「無茶言うな!」
がっちりと絡まった太めのロープは思ったよりも頑丈。加えて腕が胴にぴったりと密着した状態では力を入れるのも難しい。
しかもよく見れば中に何か入っている。もしかするとこれ、鉄かなんか混ぜてあるのか…?
そう思ったところで突然締め付けが止まる。ほっとして前を見ると、何かが俺の顔目掛けて飛んできていた。
「って不味い!」
即座に横に跳ねると、顔の横を銀の何かが飛んで行った。
「なるほど、氷使いって言うより、氷も使えるってのが正しかったのか」
相手の周りに浮いているのは三センチ程の金属の刃。柄すらないそれの使用方法は、念力に特化している。
その数六本。いや、今飛んで行ったのも含めると七本。正直結構不味い。
「ちょっと待てっ!」
魔法は効かないが刃は通る。現在血呪のおかげで身体能力…というか身体性能が上がっているため、皮膚そのものの強度も上がっている。
しかし、皮膚は元々切断するような攻撃に弱い。その下の筋肉も、内臓も、勇者のベースとなっているヒトはそもそも斬撃に弱い。
そんなところにいくら血呪で強化をかけても大して上がりはしない。
つまり、あそこまで鋭利な刃だと問答無用で俺の身体に傷がつく。
というか、当たり前だが喉を切られれば普通に死ぬ。
加えて今は防御もロクに出来ないので避けるしかない。
クソ、時間が無いってのに。
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