大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

依頼とギルド

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どうやらあの手は柵より外側、つまり敷地の外には出て来れないらしい。するすると穴の中へと戻っていった。ちなみに、切った手はそのまま霧散した。
安全を確認した後におっさんは名前を名乗り、なぜここにいるのかを説明してくれた。
簡単に要約すると、プクナイムの新市長…あれ、都市長ってのが正しいんだっけ?まぁいいか。
ともかくそいつが、さっきおっさんが言ったように謎の黒い手のせいで工事が出来ないからどうにかしてくれと依頼を出し、その依頼を受けて来たのがこのおっさんらしい。
「いやぁ、報酬がうまかったんだこれが。しかし、まさかあんなバケモンがいるとはなぁ」
「うまい話にゃ裏があるって知らねぇのかよ。どこでンな依頼受けた?」
「そりゃあギルドだよ。仲介料は割高だが、あそこは比較的安心出来る依頼が多いからね」
ギルド、あるいは冒険者ギルド。
あぁ、そう言えばそんなものがあったな。聖学とは仲悪いからほとんど教えられねぇんだよな。
「まぁ?俺としてもあそこの中に用事があったのは確かだし?中にさえ入れれば問題はないっちゃないし?おっさんは多分許可もらってるんだろ?」
「そりゃあ入れないとどうしようもないからね。立ち入りの許可と、敷地内ならある程度騒いでも問題は無いってギルドの嬢ちゃんが言ってたよ」
「なるほどね…ちなみに、どうなりゃそっちの依頼って成功扱いになんの?」
おっさんが入らせてくれるというのなら、ありがたく使わせてもらう。ただ、そうなった時一つ気になるのは、このおっさんにどういうメリットがあるのか。
もっと言うなら、どうしたらこの依頼が成功と見なされるのか。
「うん?その辺はーまぁー適当に?」
いいのかそれで。
「そんな目で見ないでくれ…この手の依頼って達成条件が曖昧にならざるを得ないから仕方ないんだよ。今回の場合だと、あの手を倒せばいいのか、何らかの元凶を倒せばいいのか、それとも自分の手には負えないから別の救援が必要なのか、とかね。だから報酬を受け取るのに結構手間なんだけど…」
「それでもうまい報酬だった訳か?」
「それどころじゃないさ」
ニッカリといい笑顔をした後、おっさんはこう続けた。
「なんと前払いで報酬の三割をくれた上に行きの馬車はタダだって。そりゃもう受けるしかないでしょ」
「いや…まぁ…うん…」
それで不味い展開になったわけだ。
「ん?というか、見ず知らずの俺に頼るよりギルドの救援呼んだ方が良くない?」
と言ってみるが。
「救援も時間がかかる上に、他の同業者も『救援が必要なぐらい不味い』って警戒しちゃうから中々手が付けられないんだよ。あと、お金かかるんだよね」
と言う訳で諦めた。本当にいいのかおっさん。
「じゃあ、後でここの宿屋に連絡ちょうだい。もし今日中に連絡がなかったら救援呼ぶから、それまで頑張ってね!」
「あっ、ちょ!?」
すげぇ勢いでどっか行っちまった…つーか救援頼みな上に、それ俺助かる見込み無いよな…
「………。」
『おい、レィア…』
「わぁってる……とりあえず行くぞ」
銀剣を出し、俺は静かに柵を超えた。
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