1,414 / 2,022
本編
穴と手
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「あぁー…いやマジかー…」
翌朝。というかメッセージがあってから数時間後。
以前シエルを助け出したあの屋敷に行ってみると、綺麗な更地になろうとしていた。
バラした家のパーツがまだあちこちに残っているため、本当につい最近だったのだろう。しくじったな…
『どうすんだ?』
「どうすっかなぁ」
せめて何か手がかりはと思い、立ち入り禁止の柵の中へ目を凝らしてみた。すると、家が建っていた場所に、地下への穴がぽっかりと空いていた。周りの様子からしてそこはまだ手がつけられていないらしい。
「不幸中の幸いって奴だな」
一番手間取る地下がそのまま残っていたのは良かった。
「おい、そこの君。こんなところで何をしている」
「…あ?あ、俺?」
ふと首を捻ると、大柄で縦も横も大きい巌のような男が立っていた。
「他に誰がいるんだい。危ないからここから離れてなさい」
「危ないって…どこが?」
周りは民家に囲まれ、正面には大きな柵。その中には既にあらかた潰され、残骸ばかりが残るただの空き地。何が危ないのかわからない。
「ん?知らない?最近どうも妙なことがこの辺りで起こっていてね。誰かが近づくと、あの穴から黒い大きな手が出てきて辺りを荒らしてしまうらしいんだ」
「はぁ?黒い手?なんだそりゃ」
魔獣でも住み着いたか?いや、そんなこと考えたらニケに怒られる。
だとしたら。
「誰かが中にいんのか?」
「かもしれないね。話だと、一度取り壊して、翌日地下も取り掛かろうとしたら黒い手が出てきたらしい。夜のうちに誰かが入ってイタズラしてる可能性もあるね」
「イタズラにしちゃ随分悪質だな。オッさん一人で大丈夫なのか?」
「はは、心配してくれてありがとう。でも、おじさんも偉い人から頼まれて調査しに来たんだ。『これじゃあ工事が進まないからどうにかしてくれ』ってね。それに、おじさんは結構強いんだぞ?」
それじゃあちょっと行ってくるよ。
と言って巌のようなおっさんが柵を開いて一歩踏み出した瞬間だった。
膨大な魔力が吹き上がり、真っ黒な手がぬぅ、と飛び出してきた。
それも一本や二本ではない。数は計六本。それら全てが一目見て「不味い」と俺の警鐘を鳴らす程の威力。
「!」
「オッさん!」
咄嗟に飛び出し、即座に金剣を抜刀。鋼でさえ簡単に斬る剣だが、実体のない魔法は切れない。
しかし、魔法で出された氷を斬ることは出来るように、魔力で出来た腕なら斬ることは容易い。
「ッ!」
だと言うのに。
一度金剣が弾かれた。
「硬ってぇ!?」
『適当にぶん回すな!ちゃんと狙え!』
「わぁってるよ!」
今度こそ。
集中して手を見ると、僅かに魔力が綻んでいるところが見える。底へめがけて剣を六回振る。
今度は刃がちゃんと通った。
手応えはあった。しかし、切り口が泡立ち、即座に生えようとしている様をみて、俺は急いでオッサンの首元を引っ掴んで逃げた。
「…驚いた。強いんだねぇ君。ありがとう」
「ちょいと腕に覚えがあるだけだ。大丈夫だったか?」
「あぁうん、大丈夫だが…さて、あれでは私が太刀打ちできるレベルを越えているな…どうしたもんかなぁ」
「…オッサン、せめて視線を俺から外して言え」
翌朝。というかメッセージがあってから数時間後。
以前シエルを助け出したあの屋敷に行ってみると、綺麗な更地になろうとしていた。
バラした家のパーツがまだあちこちに残っているため、本当につい最近だったのだろう。しくじったな…
『どうすんだ?』
「どうすっかなぁ」
せめて何か手がかりはと思い、立ち入り禁止の柵の中へ目を凝らしてみた。すると、家が建っていた場所に、地下への穴がぽっかりと空いていた。周りの様子からしてそこはまだ手がつけられていないらしい。
「不幸中の幸いって奴だな」
一番手間取る地下がそのまま残っていたのは良かった。
「おい、そこの君。こんなところで何をしている」
「…あ?あ、俺?」
ふと首を捻ると、大柄で縦も横も大きい巌のような男が立っていた。
「他に誰がいるんだい。危ないからここから離れてなさい」
「危ないって…どこが?」
周りは民家に囲まれ、正面には大きな柵。その中には既にあらかた潰され、残骸ばかりが残るただの空き地。何が危ないのかわからない。
「ん?知らない?最近どうも妙なことがこの辺りで起こっていてね。誰かが近づくと、あの穴から黒い大きな手が出てきて辺りを荒らしてしまうらしいんだ」
「はぁ?黒い手?なんだそりゃ」
魔獣でも住み着いたか?いや、そんなこと考えたらニケに怒られる。
だとしたら。
「誰かが中にいんのか?」
「かもしれないね。話だと、一度取り壊して、翌日地下も取り掛かろうとしたら黒い手が出てきたらしい。夜のうちに誰かが入ってイタズラしてる可能性もあるね」
「イタズラにしちゃ随分悪質だな。オッさん一人で大丈夫なのか?」
「はは、心配してくれてありがとう。でも、おじさんも偉い人から頼まれて調査しに来たんだ。『これじゃあ工事が進まないからどうにかしてくれ』ってね。それに、おじさんは結構強いんだぞ?」
それじゃあちょっと行ってくるよ。
と言って巌のようなおっさんが柵を開いて一歩踏み出した瞬間だった。
膨大な魔力が吹き上がり、真っ黒な手がぬぅ、と飛び出してきた。
それも一本や二本ではない。数は計六本。それら全てが一目見て「不味い」と俺の警鐘を鳴らす程の威力。
「!」
「オッさん!」
咄嗟に飛び出し、即座に金剣を抜刀。鋼でさえ簡単に斬る剣だが、実体のない魔法は切れない。
しかし、魔法で出された氷を斬ることは出来るように、魔力で出来た腕なら斬ることは容易い。
「ッ!」
だと言うのに。
一度金剣が弾かれた。
「硬ってぇ!?」
『適当にぶん回すな!ちゃんと狙え!』
「わぁってるよ!」
今度こそ。
集中して手を見ると、僅かに魔力が綻んでいるところが見える。底へめがけて剣を六回振る。
今度は刃がちゃんと通った。
手応えはあった。しかし、切り口が泡立ち、即座に生えようとしている様をみて、俺は急いでオッサンの首元を引っ掴んで逃げた。
「…驚いた。強いんだねぇ君。ありがとう」
「ちょいと腕に覚えがあるだけだ。大丈夫だったか?」
「あぁうん、大丈夫だが…さて、あれでは私が太刀打ちできるレベルを越えているな…どうしたもんかなぁ」
「…オッサン、せめて視線を俺から外して言え」
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